17.自惚れる(幸仁) | |
「もうすぐ夏だね」 「そうじゃな…」 「みんなは海とか、行くのかな」 「どうかのー」 「仁王は行く?」 「俺は…日焼けするの嫌だから行かん」 「えー、じゃあ夏はテニス以外遊びに行かないの?」 「別に行きたいとか、思わんぜよ」 …それは、俺が行けないからそう言ってるの? つい、口から出かけたその言葉を押し込めた。危ない危ない。 俺が入院してからというもの、仁王はずっとお見舞いに来てくれる。 最初は、ただ単にサボりに来てるだけかと思ったけど…そうじゃなかったらしい。 彼はいつもこの病室に来ては、俺が心配なんだって顔をする。 その顔は多分本心から出てる。 仁王のペテンなんて俺にかかればどうってことない。それに、飽き性の仁王が通い続けるなんて、ちょっとした奇跡だ。 「ねぇ、もしこの病気が夏の間に治ったら…」 デートでもしよっか。 そう言ってから少し驚いた彼の唇に、触れるだけのキスを落とした。 自惚れる (君が俺を好きだって確信がある) 111125 |