4.懐かしむ(三強) | |
※10年後三強 「そういえば俺たち、三角関係だったよね」 久しぶりに三人で飲もうという話しになり、少し酔った精市がふざけてか、本気でか、ふいにそんなことを口にした。 「俺たちにも若い頃があったという事だ」 「真田に若い頃があったなんて、それは驚きだな〜」 「弦一郎もやっと見た目と年齢が近づいてきたんだ。そう言ってやるな」 「柳…それはふぉろーというものになっていないのではないか?」 「やっぱりコイツ何にも変わってなかったよ。フォローくらいカタカナで言えよ弦ちゃんが」 「ゆ、幸村…その弦ちゃんと言うのは、やめてほしいと…言ったはずだ」 俺が思うに、誰一人変わってはいない。 何も変わらないまま時間だけが過ぎていった気がする。 だからきっと、いまでも三角関係は続いている。 「確か、弦一郎は幸村で幸村は俺だったな」 「そうそう!コイツ本当に俺のこと好きだったよ」 「た、たるんどったのだ!」 「過去形…ということは、今はもう好きではないのか?」 「あぁ、俺はあの時のたるんどった自分と決別した」 「弦一郎、大人になったな…」 「柳、因みに俺もたるんどった自分にバイバイしたぜよ」 「精市、飲みすぎてはいないか?」 「問題ないったい!」 「重症だ…弦一郎、酒と水を変えてやってくれ」 「わかった」 二十歳を越えてから、立海のメンバーで飲むことは多々あった。 その度に精市は飲みすぎて、暴れるだけ暴れてから眠りにつくというパターンに限定されているので、タイミングさえ謀れば後はこちらのものだ。 こう、イップスを乱用されると困る。 味がしなくなるし、見えなくなるしなんかもう最悪だ。 「今回ばかりは未遂で終わってほしいものだな…」 「これで精市が暴れる確率は35%になった」 「もっと飲む!飲みたい!」 「あ、あぁ。これを飲むといいぞ幸村」 そう言って真田は水を差し出した。 「珍しく気が利くじゃん! 柳くん、座布団一枚持ってきて!〜」 「それは山田くんだ。 あと酔っぱらいの言葉に一々気を落とすな弦一郎」 「うーん、やっぱりこの酒はみんなで味わいたいなあ!」 「俺の嫌な予感が当たる確率100%」 俺がそう呟いてから、精市が行動に移すまでとても早かった。 奴は持っていた水を口に含み、あろうことか弦一郎に口移しをした。 まぁつまり、今俺の目の前では同級生のキスシーンが繰り広げられているのだ。 うっかり開眼なう。 「っはあ!…どう、真田?美味しい?」 「ななななななな////////」 「なじゃ分からないぞ〜もう一回やっちゃうぞ〜」 それ以上は止めてくれ。弦一郎がいたたまれない。 「精市、そこら辺にしておけ。果ては泣いてしまうぞ、弦ちゃんが」 「あはっそうだった!ごめんね、弦ちゃん。 …ファーストキス奪っちゃって(^ω^)」 全く悪びれもしない酔っぱらいを俺は今最高にどつきたいが、ずっと片想いしている者からの突然の口づけに、戸惑いまくっている弦ちゃんを介抱するのが先だ。 全く、それでは今でも好きなのがバレバレだ。 まあ俺だって弦一郎への気持ちは…… 「ふ…また新たにデータを取るとしよう」 ───本当に俺たちは、何一つ変わっちゃいない。 そう思うと、自然と顔が綻んだ。 懐かしむ (いつまでも変わらない気持ち) 111014 柳生がコンタクトになっても、仁王が真面目に働いても、ブンちゃんがダイエットしても、赤也がストレートになっても、ジャコーが色白になっても、三強だけは変わらないと信じているぞよ。 |