恋する動詞111題 | ナノ

90.突き放す(28)

(※社会人設定)



『サヨナラじゃ、柳生』



若く幼かったあの日の俺は、今でもお前を苦しめているだろうか。

泣きもせずに別れを受け入れたお前は、本当に俺のことを忘れて生きてくれているだろうか。




あれから長い時間が過ぎたのに、まだあの日の夢を何度も見る。

まるで俺が、どれだけ傷つけたのかを忘れはさせないとでも言うかのように。

いや、俺が忘れたくないだけかもしれない。

悲しい別れを選択したあの日が、柳生を見た最後の日だった。

だからこの瞳に焼き付けた最後の愛しい彼の姿を、ただ忘れたくないだけなのかもしれない。


(今でも変わらず、おまんのこと好いとうよ…柳生)


将来のことを、ない頭でたくさん考えて、俺が下した決断が正しかったかも、今柳生が幸せかも分からない。


でも確かにあの頃も今も柳生が好きで、好きで、堪らなく愛しいことは変わらない事実だ。



胸の辺りがきゅうっと苦しくなって、シャツを握りしめる。

この心臓が鼓動を止めない内に、もう一度だけでいい。

どんなに辛い結果になったとしても、


「それでも会いたい、なんて無責任かのう…」



結局どんな道を選んだって、彼を幸せにできる保証なんてなかった。



突き放す
(きみがとっても、大好きだったから。)


120203



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