恋する動詞111題 | ナノ

76.嘯く(ジロ跡)

「何で跡部は俺のこと好きなの?」

「好きだからだ」

「答えになってなーい」

「うっせえよ、黙ってこれでも食っとけ」

そう言われて渡されたポッキーを渋々口に咥える。

跡部は俺のこと好きだって言ってくれたけど、どこが好きなのかとか、具体的なことは教えてくれたことなかった。
もし俺が跡部に同じことを聞かれたなら、ちゃんと跡部のどこが好きなのか、言えるのになあ。


「………ポリッ」

「………」

「ポリ、ポリッ」

「……っ、こっち見ながら食うな」

「はーい」


ふいっと顔を背けられたけど、多分照れたから。だって耳まで真っ赤なのが見えちゃってるもん。


「あーとーべー」

こっち向いてよ、と言う代わりに抱きつく。今日もほんのりバラの香りが漂ってくる。

「んだよ…」

「俺はさ、跡部の何だかんだ言っても優しいところが好きだよ」

「な、何言ってんだよいきなり」

「ええー、本当のことだから良いじゃん!それにね、」


びっくりした拍子にこっちを向いてくれた彼の耳許で

「宇宙で一番跡部は可愛いしね」

そう囁いて、ニコッと笑ってから、呆気に取られている跡部の唇にチュッと、触れるだけのキスをする。

俺はまだ彼の口から俺の好きなところは聞いてないけど、俺が君のどんなところが好きなのかをわかってもらえたら、今はそれでいいカナ。


嘯く

(大げさだけど、本気なんだよ?)


120810


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