76.嘯く(ジロ跡) | |
「何で跡部は俺のこと好きなの?」 「好きだからだ」 「答えになってなーい」 「うっせえよ、黙ってこれでも食っとけ」 そう言われて渡されたポッキーを渋々口に咥える。 跡部は俺のこと好きだって言ってくれたけど、どこが好きなのかとか、具体的なことは教えてくれたことなかった。 もし俺が跡部に同じことを聞かれたなら、ちゃんと跡部のどこが好きなのか、言えるのになあ。 「………ポリッ」 「………」 「ポリ、ポリッ」 「……っ、こっち見ながら食うな」 「はーい」 ふいっと顔を背けられたけど、多分照れたから。だって耳まで真っ赤なのが見えちゃってるもん。 「あーとーべー」 こっち向いてよ、と言う代わりに抱きつく。今日もほんのりバラの香りが漂ってくる。 「んだよ…」 「俺はさ、跡部の何だかんだ言っても優しいところが好きだよ」 「な、何言ってんだよいきなり」 「ええー、本当のことだから良いじゃん!それにね、」 びっくりした拍子にこっちを向いてくれた彼の耳許で 「宇宙で一番跡部は可愛いしね」 そう囁いて、ニコッと笑ってから、呆気に取られている跡部の唇にチュッと、触れるだけのキスをする。 俺はまだ彼の口から俺の好きなところは聞いてないけど、俺が君のどんなところが好きなのかをわかってもらえたら、今はそれでいいカナ。 嘯く (大げさだけど、本気なんだよ?) 120810 |