75.妬む(蓮華) | |
俺たちは昨日で二年目に突入した。 何がって……察してくれ。 まぁ二年も続いたので、俺もここはデートにでも誘って上手くいけばそのまま…と、あらぬ想像もしながら弦一郎を誘うことに成功した。 かなり念入りに計画を練り、服も仁王に協力してもらいながら何とか良い具合に決まった。 すべての準備が整ったことで、完璧に浮かれモードに突入していた俺は、何も考えずにただただ、楽しみにしていた。 そして当日。 俺は浮かれていた自分を激しく後悔することになる。 ――予定していた待ち合わせの時間になっても弦一郎が来ない。 時間にルーズな奴が嫌いな俺は相手が彼だから待つものの、他人ならとっくに帰っているところだ。 (全く、あいつは何をしているんだ) もう何度目かも分からなぬほど確認した腕時計。何回見ても長針が進むだけ。 弦一郎からの連絡はない。 こうなってしまえばもう、予定していたデートプランもすべて水の泡だ。 そしてついに短針が進んだ。 …………覚えていろよ、弦一郎。 そんなドス黒い念を残しその場から去った俺は、真っ先に帰宅した。 次の日、学校へ行けば俺を見つけた弦一郎が足早にこちらにやってくる。 「…柳、すまなかった!」 「………そのことはもういい。しかし、何故来なかったかくらいは教えてくれ」 心底、申し訳なさそうに謝る彼に、俺もそこまで腹を立てることでもないか…と改めて心を落ち着かせようとしたのに。 弦一郎の口から出てきた言葉に、俺は頭のてっぺんから足の先まで、凍ったように動けなくなった。 「実はな、幸村から具合が悪いと電話が来てだな…」 「…………は?」 それでこいつは、幸村の元へ行ったというのか…? 「…弦一郎」 「な、なんだ」 沸々と静かに沸き上がる俺の怒りが彼にも伝わっているらしい。 俺は待たせておいて、精市のところへ行っただなんて、この野郎。 さしずめ、その電話に慌てて携帯を忘れたんだろうが、それにしては酷すぎる。 普通に考えたら分かるだろう。 (…調子が悪いなら、医者に行くと!) 精市の悪戯も何故昨日でなければならなかったんだ。 別に今日でも良かっただろうが。 とにかく今、俺はとてつもなく自分より精市を優先されたことに腹を立てている。 きっとしばらく、弦一郎を顔を合わせれば辱しめる生活が続くだろうな。 妬む (好きだからこんな風に怒るんだ) 120806 |