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「あーあーあー」 「ついに白石もこの暑さにやられたか…」 「ちゃうわ。悩みや、悩み」 夏本番の一歩手前な今の時期。 座っているだけでも汗がじんわりと出てきてちょっとだけ嫌な気分になるこの時期。 毎年決まってやって来るが、今年は少し違う。 「あーあれか、告られたヤツ」 「…俺も好きなんやけどなぁ」 好きだけど、付き合えない。 だって相手は正真正銘の男だから。 「男だからって気にすることないやろ。俺は別に気にならんし」 「謙也ってたまにええ奴やなぁって思わせるようなこと言うよな」 「え、俺そんなこと言うたらアカンの!?」 こんなに暑いのによくもまあ大きな声を出せるものだ、と謙也に感心しながらもそんな彼の前向きな明るさに俺は、いつだって助けられているのだと改めて自覚した。 俺がもし、アイツと付き合い始めたら…きっと悲しい顔を一度や二度はさせるんだろうと思えば、やはり男同士という事実から目を背けたくなる。 そんな、悲しい思いをさせるくらいなら、いっそ付き合わないでまた新しい恋を始めてほしい。 「…なあ、白石」 「ん?」 「自分の幸せは、自分で選らばなアカンで」 やっぱりいつだって、謙也はそうなんだ。 俺が言ってほしい言葉をこうも簡単に与えてくれる。 「………おおきに」 謙也にそれだけ言い残し、俺はアイツを探すために走り出した。 この暑さになんて負けないくらいの熱い恋をしてやろう。 選ぶ (俺の幸せと君の幸せを) 120730 |