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「幸村が、好き?」 座っている俺に跨がり、シャツを掴んでいるのは仁王。 訳がわからない。 何故こいつはこんなに泣きそうな顔をしているんだ。 「仁王…どかんか」 「嫌じゃ。質問に答えんしゃい」 断固としてどこうとしない仁王を払い除けようとすれば、シャツを掴んでいた手を俺の首に回してあろうことか抱きついてきた。 「なあ、幸村のこと好いとるん?」 「俺は幸村のことは好敵手としか思っておらんぞ」 「ホンマに?ホンマに、そうなん?」 「あぁ、だからそこを…っ」 「ん…」 言い終わる前に口を塞がれた。口で。 とにかくこの行為を止めようと口を少し開けたら、そのちょっとの隙間から仁王の舌が入ってきた。 こんなキスは、知らない。 ぬるっとする仁王の舌が口内を堪能するかの様に舐め回す。 気持ち良いなんて、そんな。 息が苦しくなり仁王の肩を掴み、無理矢理自分の身体から離す。 二人の間にはどちらのものか分からない唾液が糸を引き、キラキラと光る。 「なぁ、俺は?幸村と同じか? 俺はお前さんのこと、好きじゃ…っ」 泣きながら襟を持って訴える仁王に、俺は身体のどこも動かなくなった。 泣くな、泣かないでくれ。 キスされたことよりも、そのことだけが頭の中を支配していた。 「だから、誰にも優しくせんで…苦しい、辛い…っ」 「仁王…」 ポロポロと零れる涙に指で掬うと、目を見開いてまた仁王がキスをしてきた。 俺も今度はそのキスに応える。 シャツのボタンにかけられた手を、もう拒みはしなかった。 絆される (流されてしまえばもう戻れない) 120718 |