▽三強





「もし街中の角で、パンをくわえて慌てて走ってきた女の子とぶつかったらどうする?」


「それはまた唐突な質問だな」


「果たして、そんなことが本当にあり得るのか…?」


「真田はもうちょっと少女漫画読みなって。あれ縦書きなんだし何となくは読めると思うから」


「うむ、幸村がそういうのならば少女漫画なるものを読んでみるとしよう」


「止めてくれないか弦一郎。
お前のイメージが崩れてしまう――いや、すでに崩れてしまっているイメージに上乗せして気持ち悪さが搭載される」


「何堅いこと言ってんの柳?ここは真田にも新しい世界を見せてあげなきゃ!」


「だからと言って精市、こっそり3787のBL本を渡すのは良くないな…非常に良くない」


「3787?それは一体どういった物なのだ」


「やっぱり気になっちゃうよね?ね?
よし、俺がじっくり教えてあげよう」


「頼むから黙ってくれ弦一郎…」


「どうしたのだ柳。顔色が優れない様だが」


「お前のせいだぞ」


「なに…!?
俺が一体、何をしたと言うのだ!」


「ねぇねぇ、イチャついてるとこ悪いんだけど俺の最初の質問に答えてくれる?」


「あ、あぁ…そうだったな。

俺は相手が悪くてもぶつかったことを詫びる。
もしパンを落としてしまったのならば……ん?パンだと?

米を食わんか、米を!!」


「遅い。遅すぎるぞ弦一郎…!」


「なるほどね」


「お前も何に対して納得をしているんだ」


「じゃあ次は柳」


「…勢いよくぶつかるのであれば、その女子が転ぶ確率は85%だ。
手を差しのべながら謝罪する」


「ふーん………」


「幸村、そろそろこれは何のための質問なのか教えてはくれぬか」

「そうだ。
お前の行動はいつもデータで分析ができなくて困る」


「今朝、俺の身にさっき言ったアクシデントが発生したんだよね…」


「ほう…」


「でね、ぶつかってその子が転んじゃってさー
パンも地面に落ちてるし、まあ彼女も慌ててたからだろうけど、あろうことか俺に八つ当たりしてきたんだよ」


「まさか精市…」


「そのまさか。
俺も痛かったのにキレてきたからついつい…」


「ついつい、何なのだ?
幸村、ついつい何をしたのだ!?」


「だからさぁ、あの時本当はどうするべきだったのかずっと考えてて…参考になったよ。ありがとう」


「あぁ、それなら良いが…次からは気を付けるんだぞ?」


「うん。わかってるよ……あ、もうじきチャイム鳴っちゃうや。

じゃあね、二人とも」


「あぁ。また後程」


「その女子はどうなったと言うんだ、幸村!

気になるではないかあああ!」









120122



二人の世界に入れない真田







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