「もし街中の角で、パンをくわえて慌てて走ってきた女の子とぶつかったらどうする?」 「それはまた唐突な質問だな」 「果たして、そんなことが本当にあり得るのか…?」 「真田はもうちょっと少女漫画読みなって。あれ縦書きなんだし何となくは読めると思うから」 「うむ、幸村がそういうのならば少女漫画なるものを読んでみるとしよう」 「止めてくれないか弦一郎。 お前のイメージが崩れてしまう――いや、すでに崩れてしまっているイメージに上乗せして気持ち悪さが搭載される」 「何堅いこと言ってんの柳?ここは真田にも新しい世界を見せてあげなきゃ!」 「だからと言って精市、こっそり3787のBL本を渡すのは良くないな…非常に良くない」 「3787?それは一体どういった物なのだ」 「やっぱり気になっちゃうよね?ね? よし、俺がじっくり教えてあげよう」 「頼むから黙ってくれ弦一郎…」 「どうしたのだ柳。顔色が優れない様だが」 「お前のせいだぞ」 「なに…!? 俺が一体、何をしたと言うのだ!」 「ねぇねぇ、イチャついてるとこ悪いんだけど俺の最初の質問に答えてくれる?」 「あ、あぁ…そうだったな。 俺は相手が悪くてもぶつかったことを詫びる。 もしパンを落としてしまったのならば……ん?パンだと? 米を食わんか、米を!!」 「遅い。遅すぎるぞ弦一郎…!」 「なるほどね」 「お前も何に対して納得をしているんだ」 「じゃあ次は柳」 「…勢いよくぶつかるのであれば、その女子が転ぶ確率は85%だ。 手を差しのべながら謝罪する」 「ふーん………」 「幸村、そろそろこれは何のための質問なのか教えてはくれぬか」 「そうだ。 お前の行動はいつもデータで分析ができなくて困る」 「今朝、俺の身にさっき言ったアクシデントが発生したんだよね…」 「ほう…」 「でね、ぶつかってその子が転んじゃってさー パンも地面に落ちてるし、まあ彼女も慌ててたからだろうけど、あろうことか俺に八つ当たりしてきたんだよ」 「まさか精市…」 「そのまさか。 俺も痛かったのにキレてきたからついつい…」 「ついつい、何なのだ? 幸村、ついつい何をしたのだ!?」 「だからさぁ、あの時本当はどうするべきだったのかずっと考えてて…参考になったよ。ありがとう」 「あぁ、それなら良いが…次からは気を付けるんだぞ?」 「うん。わかってるよ……あ、もうじきチャイム鳴っちゃうや。 じゃあね、二人とも」 「あぁ。また後程」 「その女子はどうなったと言うんだ、幸村! 気になるではないかあああ!」 120122 二人の世界に入れない真田 |