Obstinate, dear person


アラスカ、フォックス諸島シャドーモセス島
新型兵器、メタルギアの最終実験の護衛のため…という名目で真の目的は別にある…この島に来て、早数日
明日にもメタルギアの準備が整い、最終実験が行われるという
おそらく、その直前に俺たちは蜂起するのだろう
俺たちの目的…我らがボスの悲願のために

まぁ…それは、いい

俺、デコイ・オクトパスには気になって仕方のないことが1つだけある
それは、野心に満ちた目でメタルギアを見下ろしている我らがボスの格好
俺以外の奴も気になってるんだろう
ここにいる全員がチラチラとボスを見ている

「…ボス」

「何だ、オセロット」

この数日、誰1人聞きたくても聴けなかった疑問
痺れを切らしたのか、オセロットがためらいがちに口を開いた

「その格好…寒くないのですか?」

そう、数日前から俺たち全員がずっと気になっているボスの格好
このくそ寒い中、何故か上裸だということ

「…寒くなどない」

絶対嘘だ
俺にマンティスのようなリーディング能力はないが、この瞬間全員の心が1つになったのを感じた

「ですがボス、唇が青いですよ?」

「生まれつきだ、オセロット」

「ボス、無理しないで…震えてるじゃない」

「武者震いだ、ウルフ」

「だがボス、冬のアラスカで上裸はどうかと思うのですが…」

「貴様も上裸だろうレイブン」

「寒くないというならボスの…」

「俺の心を読んだら殺すぞ、マンティス」

一体何にこだわっているのか、ボスは頑なに服を着ようとはしない
まぁ、もともと服を嫌うというか裸でいるほうが好きな人ではあるが

さすがに、この真冬のアラスカで上裸はどうなんだろう
同じ上裸のレイブンは普段カラスで暖を取っているし、薄着のマンティスなどは最初から寒い場所には行きたがらない

ボスはボスなりにこだわりがあるのかもしれないが
隣に立つオセロットが完全防備なだけ、余計に寒々しく見える
ボスのこだわりがあるならそれを尊重してしてやりたいが
さすがに、風邪でもひかれたら困るのだ

「…くしっ」

「やっぱり寒いんじゃないの!オセロット、貴方のコート貸して!」

「…何か温かい飲み物でも用意しましょう」

「…ボス、体を冷やすのはよくない」

「ボ、ボス!熱はないですか!?寒気とか!」

「えぇいうるさい!俺は寒くないといっている!」

ウルフが怒ったようにオセロットのコートを剥ぎ取ってボスに差し出し
オセロットはため息を吐きながらも扉へ早足で向かい
オクトパスは何かを考え込むように顎に手を当てながら浮いている
レイブンなど、あからさまにオロオロしている

みんなボスが心配なのだ

何だかんだで、俺たちはボスが好きなのだから

「ボス」

「どうした、オクトパス」

声をかければ、眉間に皺を寄せ顔色が青を通り越して白くなり始めてるボスが振り向いた
やはり、寒いのだろうな

「ウルフの持っているコート…オセロットよりボスに似合うと思う」

突然の言葉に、全員が俺のほうに視線を向け…オセロットは、少しだけ俺を睨んでいた

「いきなりどうした」

「いや、少し思っただけだ。ボスは何でも似合うが、そのコートは特に似合うだろうと」

「そうか?」

少しだけ、眉間の皺が緩む
よし、食いついた

「あぁ。少し着たところが見てみたいのだけれど…」

「…仕方ないな」

あからさまなため息を吐きながら
ボスはあれほど嫌がっていたコートにするりと腕を通し、ボタンを留めて襟を正す

「どうだ?」

「さすがボス、よく似合ってます」

にこりと笑って褒めると、ボスの口に笑みが浮かぶ
そこで、他の奴らも俺の作戦に気づいたらしい

「あら、似合うじゃない」

「悔しいですが、私より似合ってますね」

「ふむ…中々だ」

「ボス、すっごく似合ってますよ!」

口々に、ボスの姿を見て褒め始めた
まぁ、実際そのコートはボスによく似合っているのだけど

「悪くないコートだ」

ボスも満足そうに、コートの裾を2、3度眺めた後その形を整える
そしてガラスに映るコート姿を眺めてる
さっきとは違い、とても満足そうな表情だ

「ボス、そのコートは差し上げます。ボスが着た後では、私なんぞが着ても惨めなだけですから」

「ボス、見回りにはその姿で行ったらどうだ」

「そうよボス、凄く似合っているんだもの」

「お前たちがそこまで言うならそうするか」

「ボス、俺もお供します!」

コートを着たせいか、それとも褒めちぎられてまんざらでもないのか、先ほどよりは幾分か頬に赤みが差したボスは、レイブンを引き連れて足取り軽く部屋を出て行った

「…気に入っていたのだがな、あのコート」

ボスの出て行った扉を眺めながら、ポツリとオセロットが苦々しげに呟いた

「…ボスが風邪を引くよりましだろう?」

苦汁を舐めたような表情のオセロットに苦笑を返せば、はぁとため息を吐いた後髪を掻き揚げた

「ずいぶんと高い風邪の予防代だ」

「仕方がない、アレくらい言わないとボスは意見を変えない」

「それにしても、オクトパスはボスのあしらいがうまいわね」

どこかからかうように笑うウルフに、俺はやはり苦笑しか返すことができなかった

「…ボスは、わかりやすいからな」



Obstinate, dear person



頑固で、でもどこか単純な親愛なる我らのボス
願わくば、我らのボスの悲願が達成されますように











アラスカでコートに半裸な理由を本気出して考えてみた
オクトパスが完全にオリキャラ化した
管理人の中での液蛇はこんなイメージ

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