気まぐれな午後の話



俺は今、無性にイライラしている
元々気性が穏やかな方ではないと自覚しているが、ここまでイラつくのは随分と久しぶりのことだ
今なら手に握っているマグカップすら握り潰せそうな気がする

ここまでイラつく原因はわかりきっている

「それでな、その時マスターが…」

俺がこの家を訪れて30分
その間飽きもせずに延々と、わざわざ俺の隣でマスター・ミラーの話をする、この家の家主
俺のいけ好かない双子の兄弟だ

何故俺がこのいけ好かない兄弟の元にいるかと言えば
特に目的もなくふらふらと大通りを歩いていたとき、ふと目に入った和菓子屋が原因だ

その和菓子屋の軒先に並んでいた豆大福
それをこの兄弟がいたく気に入っていたのを、何となく思い出し
特に用事もなくヒマだったのと、何となくその時は機嫌がよかったのが合わさり
たまには兄弟の顔でも見に行ってやるかとふと思い付いたのだ

今思えば、どうしてそんなことを思い付いてしまったのかという後悔しか沸いてこない

この俺が!わざわざ!兄弟の好物を手土産に訪ねてやったというのに!!

『何だ、リキッドか…どうした、何か用事か?』

扉を開けた兄弟は、とてつもなくめんどくさそうな顔で俺を出迎え

『お、その箱はあの店のか…中身は?』

『…豆大福だ』

『よし、ならそれ置いて帰れ』

と、非常にいい笑顔でいいやがった揚句、茶くらいだせと苛立ちを抑えて言ってやれば

『そうだ、聞いてくれ!この間マスターが…』

と聞いてもいないことを話しだし、その瞬間踵を帰した俺を帰れと言ったくせに引きずり込んでこの仕打ち

「でな、マスターが…」

30分間数えきれないほど聞いた名前を幸せそうに口にする兄弟に

元々長くない堪忍袋の尾が、ブチリと切れる音を聞いた

「あぁぁぁ!!貴様いい加減にしろ!!この俺がわざわざ訪ねてやったというのに、マスター・ミラーの話ばかりしやがってソリッドアイボリーが!!!」

怒りのままにマグを机にたたき付けて立ち上がり、兄弟に感情のまま怒鳴り付けてやれば
兄弟はポカンとした表情で俺を見上げた
その表情がさらに神経を逆なでし、よし殴ろうと拳を握った瞬間

「なんだリキッド…ヤキモチか?」

にやりと、兄弟の口元が楽しげに歪んだ
その言葉に、今度は俺がぽかんとマヌケに口を開けてしまう

この男は何を言っている?
この俺がヤキモチだと?
誰に?マスター・ミラーにか?それともこのいけ好かない兄弟にか?
どちらもありえないだろ、ただ俺を無視する兄弟が気に食わないだけだ

半ば混乱する頭でそう整理をつけ、口を開こうとした瞬間

「かまって欲しいならそう素直に言え」

呆れたような兄弟の言葉が、さらに混乱に追い撃ちをかけた

「だ、誰が貴様なんかにかまって欲しがるか!」

反射的に声をあげ、いけ好かない兄弟を睨みつける

この兄弟にかまわれたいなんて、断じて思っていない!思うはずがない!
だが、顔が妙に熱い
あれだ、部屋が暑いだけだ、そうに違いない!

「顔真っ赤だぞリキッド」

「うるさい!部屋が暑いんだ!!断じて貴様の言葉に動揺したとかじゃないからな!!」

「あぁ、そうだな暑いなこの部屋」

ニヤニヤとからかうように笑う兄弟に、どうしようもない苛立ちを覚える
その上居心地もものすごく悪い
もう帰ろう、気まぐれで兄弟の顔なんか見に来たのが間違いだった!

「もう俺は帰る!!邪魔したなソリッドアイボリーが!!」

「もう帰るのか?もう少しいたらどうだ?」

だが、俺が立ち去るより早く兄弟が俺の服の裾を掴んだ

「来た時に帰れと言ったのは貴様だろう!離せ!」

「軽いジョークだ、なんだ気にしたのか?」

服の裾を掴む手を軽く叩きながら睨みつけてやるが、兄弟はニヤニヤと笑いながらも離すつもりはないらしい

「えぇい離せ!俺は帰るからな!!」

「つれないこと言うなリキッド…そうだ、いい酒が手に入ったんだ。少し飲んでいかないか?」

「貴様の大好きなマスター・ミラーでも誘えばいいだろう!」

「いや、今日はリキッドと飲みたいんだ」

今まで散々マスターマスター言い散らかしておきながら、いまさら酒を飲もうなどと言い出した兄弟に軽くイラっときたが

「…フン、ならいてやらんでもない」

まぁ、兄弟がどうしてもというのなら、一緒に飲んでやらんでもない
仕方なく付き合ってやろうじゃないか

「もちろんいい酒なんだろうな?」

「あぁ、とっておきのやつだ」

ソファーに座りなおした俺を、やたらと楽しげな目で見る兄弟に軽くムカっときたが
酒が出てくるまでは我慢しておいてやろうと、寛大な俺は思うのだった














原稿も企画も終わらなくてむしゃくしゃした
だからアホの子書いてみた
なんか間違ってる気がするが気にしない
ソリリキにしたかったけどカプっぽくならなかったから+で

リキッドはかまわれたがりなアホの子だと信じて疑いません

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