チョコレートの魔力?・1



日本では、バレンタインにチョコレートを贈るらしい

そう噂が広まっていることを知ったのは、バレンタイン当日
つまり、今日のことだ
誰が広めたかは知らないが、おそらく諜報班の誰かが、日本ではバレンタインにチョコレートは必須!みたいな若干間違った情報を掴んできたらしく
さらに時折日本の行事を計画する俺に、副指令のために祖国のバレンタインを!という話になっていたらしい

まぁ、つまり何が言いたいかというと

「…多すぎだろ」

俺の自室の机の上が、チョコレートで溢れかえっていた
カロリーが高く日持ちのするチョコレートは、レーションに入れられることも多い
もちろん、わがMSFのレーションにも採用している
つまり、材料には困らないわけだ
で、MSFの女性兵士はおろか男性兵士まで俺にチョコレートを渡してくる始末
チョコレートは嫌いじゃないが、さすがにこう大量に持ってこられるとどう消費したらいいのかわからない

「…ある程度食べちゃって、後はケーキにでもして配るかな」

適当に開けた包みの中のチョコレートを口にして、書類を書きながら机の上に溢れているチョコレートをぼんやりと眺める
さすがに、好意で貰った物をまたレーションに戻すという気にはならない
だが、コレだけの量は1人ではとても消費しきれないし、置ききれない
こうしてチョコレートの合間を縫って執務をするというのも、どうにも落ち着かない

書類後にして、先にチョコどこかに移動しとくかな?
そう考えて、食い終わった包みをゴミ箱に投げ捨てた時

「カズ、入ってもいいか?」

ノックの音と共に、スネークの声が部屋に響いた

珍しい
いつもはノックなんかしないくせに

「あぁ、開いてるから入ってこいよ」

あまりの珍しさに、明日は雨でも降るのか?とか思いながら、扉の向こうへと声をかけてから立ち上がる
俺の声に、スネークはゆっくりと扉を開け、どこか落ち着かない様子で部屋に入ってきた

「随分貰ったようだな」

スネークが、机の上のチョコと俺を交互に眺めながら、どこか不貞腐れたように眉を寄せる

「あぁ、ほら俺もてるから」

何となくその表情がおかしくて、茶化すように返せば
スネークが、ずいっと何かを差し出してきた

「日本では、バレンタインにチョコを贈ると聞いた」

照れているのか、少しぶっきらぼうに言って差し出されたのは、とてつもなく不恰好な包み
一応包装紙に包まれてはいるが、それもぐちゃぐちゃだしリボンもあちこち歪んで今にも取れそうだ

「これ、アンタが?」

受け取った包みとスネークを交互に見ると、スネークは恥ずかしいのか少し顔が赤くなっている

「開けていい?」

「好きにしろ」

がさがさと出来るだけ破らないように、慎重に包装紙をはがしていく
中から出てきた箱を開けると、その中にはスネークの宣言どおり、チョコレートが入っていた
包装と同じでところどころ歪んだ、小さなハートのチョコレート

「…パスが、チョコレートを作るといっていたから…」

それを眺めていると、どこか気まずそうな声でスネークが小さく呟いた
確かにパスからも、チョコレートを貰っている
その時、何故か疲れたような顔で

『ミラーさん、ちゃんと食べてあげてくださいね』

と、よくわからないことを言われた
その意味が、今ようやくわかった
つまり、コレを作ったのはスネークなのだろう
あの料理センス皆無のスネークが、これを作った
その事実に、胸が満たされていき、自然と口元に笑みが浮かんでいく
歪な形の、溶かして固めただけのチョコレート
今まで貰ったチョコと比べれば、確実に見劣りするはずのもの
けど、俺には世界一嬉しいチョコレート

「ちょうどよかった、俺からもアンタにプレゼントだ」

笑みを抑えないまま、机の上に置いておいた包みを手に取り、スネークにぽんっと放り投げる
スネークは無難にそれをキャッチすると、ぽかんと目を丸くしてさっきの俺と同じように手の中の包みと俺を交互に眺める

「開けてみろよ」

さっきは俺もこんな顔をしていたのかと思うと、少しおかしい気分になる
スネークは、がさがさと豪快に包みを破り
ぱぁっと顔を明るくした

「これ、お前が?」

「あぁ、アンタへのバレンタインプレゼントだ」

包みの中身は、昨夜こっそり作ったチョコレートトリュフ
菓子はあまり作らないから自信はないが、食えないものはできていないと思う

「一応手作りだ。味は保障しないけどな」

「お前が作ったんだ、美味いに決まってる」

「そりゃどうも。もうちょいで書類片付いちゃうから、そこで待ってて」

「あぁ、わかった」

ソファーに座ったスネークが嬉しそうにチョコレートを口に入れるのを眺め
俺も、スネークがくれたチョコを口にして、残りの執務を片付けに取り掛かった

体に異変が出始めたのは、スネークからのチョコを食って少したった頃だった

体が、凄く熱い
自然と息が荒くなり、何もしていないのにゾクゾクと背中を淡い快楽が走る
自分の意思とは関係なく上がる熱
風邪だとしても、この熱の上がり方は不自然すぎる
何より、体の奥が快楽を求めて、疼いている

…スネークめ、何か盛りやがったな

軽く深呼吸しながら、今の体の状況を整理したが、スネークからのチョコ以外原因が見当たらない
おそらく、あのチョコに媚薬か何か盛られていたのだろう

おかしいと思った
あの料理なんて全くできないスネークが
飯がなければ蛇でも食えばいいじゃないか
とどこかの王妃様のようなことを素で言い放つような男が、手作りチョコなんて

あんにゃろう、これが目的か!
くそ、感動なんかするんじゃなかった!
じわり、と背中に滲む汗に舌打ちしたい気持ちになりながら、俺の部屋に居座り続けるスネークを軽く睨む

そして、スネークの様子もどこかおかしいことに気が付いた
何となく息が荒いし、俺に向けられる目が、どこか獣じみている
そう、まるで最中のような…

「カズ」

がたり、とスネークが大きな音を立てて立ち上がり、俺の方へと早足に歩み寄る
その飢えた獣のような瞳に、ぞわりと肌が粟立つ
反射的に逃げようとしたが、スネークは俺の腕を取ると強引に立ち上がらせ、荒々しく口付けてきた

「んーっ」

もう片方の手で顎をつかまれ、強引に口を開かされる
開いた隙間から、スネークの舌が入り込み、貪るように咥内を荒らしまわる
その舌の動きに、太ももに擦り付けられる硬い感触に
ざわりと下肢に甘い痺れが走り、一気に足の力が抜ける
がくり、と崩れ落ちそうになる体を、顎を開かせていたスネークの腕が支える
その間も無遠慮に咥内を弄る舌に、酸欠と快感で頭がくらくらする
そのまま机に押し付けられ、衝撃でばらばらといくつかチョコレートが落ちた

「ぁ…ま、待ってスネーク…」

快感に溺れそうになる意識をどうにか繋ぎとめ、どうにか口付けを解いて震える手でスネークの体を押し返す

「何だ、カズ」

「ここじゃ…なぁ、ベットに…」

「もう待てない」

俺の抗議に、スネークは不服そうにぴしゃりとそう返し、首筋へと顔を埋める
弱い場所にぬるりと舌が触れて、ぞわぞわとした感覚が全身を駆け巡る

「ひぅっ…ね、おねが…たのむ、からっ」

今にも切れそうになる糸をどうにか繋ぎとめ、スネークの髪を引っぱって全力で訴える
さすがにスネークも諦めたのか

「…わかった、ベットならいいんだな」

そう、ため息を吐きながら俺を見た
その言葉に、ホッと息を吐いたのもつかの間

「暴れるなよ」

いきなりスネークが俺の体を抱え
まるで丸太か何かのように肩に担ぎ上げると、大股でベットへと歩き出した

「ちょ、スネーク!?」

「お前がベットがいいと言ったんだ、我慢しろ」

慌ててしがみ付いて、スネークの顔を見ようとするが、後ろ向きに抱えられていて俺から見えるのは、スネークの後ろ頭だけ
だがスネークの声が、どこか切羽詰っているのはわかる

ベットへとたどり着くと、俺をまるで放り投げるようにベットへと落とし、抗議をする間もなく覆いかぶさってきてまた口付けられる
俺も薬のせいでだいぶ熱に浮かされているが、スネークも明らかにいつもより余裕がない

どうしてだろうと考え、ふと思いつく
もしかして、スネークも薬飲んだのか?
でも、何のために?
俺に盛っておいて、自分も飲む意味は?

余裕の欠片も感じられないほど荒々しい口付けにどうにか応えながら、頭の隅でそんなことを考える

「ひ、ぁっ!」

けどシャツ越しに乳首を摘まれて、そんな考えは一瞬でどこかへ消えてしまう
いつの間にか野戦服のチャックが全開まで下ろされていたらしく、シャツ越しにくりくりと指先でソコを弄られる
そのたび、ビリビリと電流にも似た快感が駆け巡り、覚えのある感覚が競りあがってくる

「ひっ…だ、だめっ…おねが、待って!」

その感覚に、慌ててスネークの背を精一杯叩く
もうほとんど力など入らないけど、スネークはどこか不服そうに俺を見る
けど、ソコを弄る手は止めてくれなくて、俺は必死にあの感覚を堪えた

「どうした」

全く余裕のないギラつく瞳が、俺を覗き込む
その目にすら、クラクラとするような快感を覚え、我慢が効かなくなりそうになる

「だめ…も、出る…」

ふるふると小さく首を振って、やめてくれと懇願する
いくら薬を盛られたからって、胸だけでイくのはイヤだ

俺のいいたいことがわかったのか、スネークはにやりと笑い
張り詰めたソコを、ぐっと握り込んだ

「あぁぁぁっ!」

その瞬間、強烈な快感が全身を駆け巡り
堪えきれずに、悲鳴と欲を放った

「コレならいいんだろう?」

荒い息を整える間もなく、スネークが意地悪げに笑い
俺は、まだ快感に痺れる頭で、どうにか睨み返した





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