愛しき君、懐かしい想い出



初めて彼を抱いたとき、こんなにも軽いのかと愕然とした
小さくて柔らかくて、少しでも扱いを間違えたら簡単に消えてしまいそうな小さな命

『…こんな小さくて、育つのか?』

そのあまりにもか弱い存在に、彼の父親に本気でそう言ったのを今でも覚えている

『双子だからな。平均からしたら少々小さいが、こんなもんだ』

『…こんなに小さくて、ぐにゃぐにゃなのに?』

『赤ん坊なんざ、こんなものさ』

優しい苦笑を浮かべ、彼の片割れを抱いている父親…スネークを見つめた後
再び、腕の中の赤ん坊…ソリッドに視線を戻す
小さくて柔らかくて弱くて…でも温かくてどこか懐かしい匂いのする、俺の腕の中に確かに存在する命
すやすやと眠るその小さな命に、どうしようもない愛しさを覚えた…



「…マスター、何を考えている?」

ぼんやりと遠い過去に思いを馳せていると、不意に不満げな声が耳に届く
それで意識を今へと戻せば、不満げな顔をした男…ソリッドが俺を見ていた
その不満げな瞳と、その奥に揺れる劣情に、そういえば行為の最中だったということを思い出す

「俺に抱かれているときに、他の事を考えるな」

どこか切羽詰った様子で、彼は私の唇に噛み付いた

君の事を、君の始めて抱いた日のことを思い出していた
そう言いたかったが、唇を塞がれていては、漏れるのは吐息混じりの声だけ
それに、そう言えば彼の機嫌を損ねてしまうのは火を見るよりも明らかだ
彼は、あまり私が昔の話をするのを好まない
恥ずかしいというより、もどかしいといった表情をするのだ
埋まらない年齢差がいやだと、一度だけ聞いたことがある

彼のキスに答えながら、またぼんやりと思考を遠くへ飛ばしていると

「んっ…」

太ももをゆるりと撫でられ、ぞわぞわとした快感がそこから下肢全体へと広がっていく

先ほどの観覧車での余裕はどこへやら
部屋に入るなり

『もう、待てない』

そう呟いて、私をベットへと押し倒し
抵抗するまもなく、まるでプレゼントと取り出す子どものように、私の服を剥ぎ取っていったのはつい先ほどのことだ

『ソリッドっ…しゃ、シャワー…』

『後で行けばいい、どうせ後で浴びるんだ』

やんわりと彼を制してみたものの、きっぱりとそう言って露わになった肌に指先を這わせだした…

「あ…あ、ぁ…」

緩やかに太ももを指が這い回り、獣のように首筋に噛み付かれる
じわじわとしたもどかしい快感と、痛みまじりのゾクゾクする快感が同時に襲ってきて、自然と腰が揺れてしまう
それに気をよくしたのか、ソリッドは首筋から胸元へと舌を這わせていく
舌が触れるたびじわりと快感が肌を焼き、じわじわと全身へと広がっていく

「ん…ぁ、ソリッド…」

「マスター…っ」

その感覚にたまらず彼の名を呼べば、ソリッドは余裕のない顔で私を見上げた

恥ずかしいが、観覧車で私のほうの準備はある程度できてしまっている
余裕がないのなら、さっさと行為に及べばいいものを…と思ってしまうが
律儀に私に愛撫を施す彼が何だか可愛らしくて、愛おしく感じる

するりと彼の下肢に手をやれば、ズボン越しに硬く張り詰めた性器が指先に触れる

「やめろマスター」

その瞬間、慌てたような声を上げてソリッドが私の手を掴む

「どうしてだ?君も気持ちよくなりたいだろ」

「そうだが…触られると、もたなくなる」

「いいじゃないか、私がしてやる」

小さく笑ってやりながら、掴まれた手を指先だけ動かしソコを緩く撫でれば、彼が小さく息を詰めて眉を寄せた

「ほら、座れ」

小さな頃のように、あやすようにそう言えばソリッドは少しだけ不服そうな顔をしながらも、大人しく私の上からどいて座った

「いい子だな君は」

「…茶化すな、マスター」

まるで幼い子どものように唇を尖らせる彼が可愛くて、つい昔のように頭を撫でてしまう
彼は目を細めて私を睨みながらも、大人しくその手を受け入れている
不貞腐れながらも子ども扱いする手を止めない彼が、可愛くて愛おしい

ゆっくりとベルトを外し、下着を少しだけずらしてソレを露出させる
すでに熱く滾っているソコは、触れるとピクリと脈打ち刺激を求めて涎を垂らす
どこか気まずそうに視線をそらす彼に小さく笑いかけ、裏筋へと舌を這わせる

「ぅっ…」

小さなうめき声を上げ肩を震わせる彼に、気分がよくなる
そのまま先端までゆっくりと舌を滑らせ、ちゅっと唇を落としてから咥え込む

「んふ…ん、ん…」

口の中でビクビクと震えるソレを頬で締め付け、舌を絡めて舐る
そのまま根元を手で擦りながら、先端をちゅうっと吸い上げる

「やめっ…」

ぐっと奥までくわえ込むと、ソリッドは小さく体を震わせながら、掠れた声をあげ
とぷりと、咥内に熱い粘液が迸った

「んむっ」

反射的にソレを飲み込んでしまう

…いつもより、早くないか?

そう思い、咥えたまま彼を見上げれば
私の視線を受けた彼はかぁっと頬を染め、口元を覆ってふいっと視線をそらした
珍しく恥ずかしそうな彼に、ちょっとしたイタズラ心が沸きあがる
快楽の余韻に震える咥内のモノに再び舌を這わせ、ちゅうっと残滓を吸い取ってやる
ビクリ、と彼の腰が振るえ、驚いたような目が私を映す

「ソリッド…」

たっぷりと嘗め回し綺麗にし終えたソコから顔を離し、ちろりと舌を出してキスをねだる
そうすれば、ソリッドは誘われるままに私に口付ける
薄く唇を開いて、深い口付けを促し自分からも舌を伸ばして絡める
たっぷりと舌を絡ませあい、とんっと肩を押せば素直にソリッドは私から唇を離す

「…マスター」

顔を離したソリッドは、とても渋い顔をしていて
予想通りのその表情に、クスクスと笑みを零せば呆れたようなため息が聞こえてきた

「わざとだろ」

「いいじゃないか、君の味だろう?」

「自分のは美味くない。マスターのは甘くて美味いが」

「お互い様だ。私も君の味は嫌いじゃない」

「それは、煽っているのか?」

呆れたように私を見ていた彼の目が、一瞬で獣のソレへと変わる
飢えてぎらついた、雄の瞳

「…好きに取ればいい」

その瞳に、背筋にゾクリと愉悦に近い感覚が走り
その疼きに逆らわず、若くしなやかな体に腕を回して己の欲情を隠さずに彼を見つめる

「あぁ、好きに取らせてもらう」

すぅっと雄の瞳がどこか楽しげに細まり
まるで噛み付くような口付けが降ってくる
荒々しくて乱暴な口付けに必死で答えていると、そのままベットへと押し倒され、彼が逃がさないといわんばかりに私の体を押さえつける
するりと指先が、彼を受け入れるための場所へと触れる

「んぅっ…んん…」

観覧車で散々嬲られたソコは求めるように彼の指先へと吸い付き、疼きにも似た快楽が沸きあがる
ずぶずぶと何の抵抗もなく指を飲み込み、もっともっとと締め付ける

「ソリッド…も、いいから…」

指では物足りないと、彼の太くて逞しいソレでかき回して欲しいと、体が酷く疼く
首を振って口付けを解き、衝動に動かされるまま腰に太ももを絡ませて撫でる
こんな風にねだるなんて恥ずかしいが、彼が早く欲しくてたまらない

「マスター、今日は大胆だな」

すりっと背中を足で撫でる私に、彼は目を細めてどこか嬉しそうにそう言い
私の腰を抱えて、持ち上げる

ぴとり、と押し当てられる性器は、すでに十分熱を持っている
この短時間で回復するとは…さすが、まだ若いだけはある

「マスター、力抜いててくれ」

それかけた私の思考を、彼の声が
待ち望んだものが入れられる感覚が、引き戻す

「はぁぁ…はぁ、ぁ…」

感じる痛みと違和感を、息を吐くことでゆっくりと逃がしていく
どれだけ慣らしても、回数をこなしても、この瞬間だけは少々辛い

「はぁ…ぁー…」

「大丈夫か、マスター」

ゆっくりと深呼吸をしながら力を抜こうとしていると、心配そうな声と共に彼の手が髪を撫でる
その優しくて柔らかな手つきに、ゆっくりと力が抜けていく

まだ若いんだから、さっさと突き上げたいだろうに
いつも、私の体が彼に馴染むのを律儀に待ってくれる
時々意地が悪いこともあるが、とても優しい子だ
今も昔も、変わらずに

「も、大丈夫だから…」

ゆっくりと痛みと違和感が甘い疼きへと変わり、たまらなくなって彼に縋りつく
彼は優しく笑って軽いキスを落とし、ゆっくりと腰を使い出す
待ち望んでいた快楽に、体が歓喜の声をあげる

「あぁっ…や、ぁ…そり、どっ」

「マスター、マスター可愛い」

欲情に掠れた低い彼の声が耳を擽り、そこからもぞわぞわとした痺れが生まれ体を這い回る
彼から与えられる快感に、体中が溶けてしまいそうな錯覚を覚える

「ひぁっ…あ、やぁ、んっ…そりっどぉっ」

快楽に溶けた頭に、不意に幼かった頃の彼の姿がフラッシュバグする
あんなに小さかった彼に、今こうして抱かれているなんて
ほんの僅かな罪悪感が芽生えるが

「マスター…」

「あぁ、ひぅっ」

彼に奥を突き上げられれば、そんなものは一瞬で霧散していく
どこかに流されていきそうな強烈な快感に、必死で彼の体にしがみ付く
そんな私に喉の奥で笑いながら、彼は顔中に唇を落としていく
そこから、とろりと溶けていくような感覚を覚える

「ソリッド…もう、だめっ…」

どんどんと体の奥から快楽が沸きあがり、苦しさすら覚える
たまらなくなって、熱を開放して欲しいと目の前の体に縋る

「可愛い」

私の訴えに、彼は小さく笑いながら突き上げをより遠慮のないものへと変えていく
それと同時に、腹の間で刺激を求めて震える性器に手が伸ばされる

「あぁぁっ…だめ、だめだ、そりっどっ」

「可愛い、マスター…ほら、イけよ」

欲に濡れた声が鼓膜を擽り、熱い舌が耳を舐る
グリグリと奥を突き上げられながら先端を弄られれば

「あぁ、も、やぁっ…そり、んあぁぁっ」

堪えきれずに絶頂を迎え、彼の手を濡らしてしまう

「マスター、マスター…!」

そのままくったりと力の抜けた私を数度揺さぶり
彼も、私の奥へと欲情をたたきつけた





ふと目を覚ませば、夜が明ける前なのか柔らかな光が窓から入ってきていた
見慣れない場所に、一瞬ここが何処だったかと考え
昨夜のことを思い出して、自然と顔が熱くなった
まだ若い彼は、当然一度で満足することなく
結局、許しを請うまで散々体を好きにされた

「…まぁ、煽ったのは私なんだがな」

そのことに少しだけ後悔しつつも、隣で眠る彼へと視線を移す
ぐっすりと眠っている彼の顔は、子どもの頃から…いや、赤ん坊の頃から変わっていない様に見える
その意外に柔らかな髪を撫でると、胸の中にわが子を前にしたような愛しさがこみ上げてくる

正直、彼の想いと私の想いが同じものかと聞かれれば、答えに困ってしまう
こうして肌を合わせ共に暮らしておきながら何を、といわれるかもしれないが…私は未だに、彼との関係が何かと言われれば、こうだとは言えない
そのことが時折ソリッドを不安にしていることを知っているし、それでも私といたいといってくれる彼に申し訳ないとも思う

だが、消せないのだ
あの日、彼を初めて抱いたときに感じた愛しさを
私の後ろをついて歩く、幼い彼に感じた庇護欲を

彼が私に想いを告げるまで、あの日抱きしめられるまで
私の中で彼は、ずっと守るべき愛しい子どもだったのだ
彼が私を抱きしめた時、初めて彼の体がもう私より大きくなっていることに気がついた
ずっと庇護してきた幼い子どもが、いつの間にか大人になっていたのだと思い知らされた

初めて、彼が男なのだと理解した

彼とこういう関係になるのに、戸惑いがなかったわけではない
むしろ、最初は戸惑いしかなかった
男だと頭では理解していても、ずっと子どもだと思っていた彼の求愛を受け入れられなかった

それに、かつて淡い想いを抱いていた男に、彼を重ねてしまいそうで怖かった
男だと認識した彼は、その男にとてもよく似ていたから
遠い昔に埋葬したはずの亡霊が、彼の姿を借りて蘇りそうで

けれど、彼はその男に似て非常に粘り強かった、というかしつこかった
何度突き放してもめげず、ひたすらに私に求愛してきた
それはもう、最終的にこうしてほだされてしまうほどに

彼に対する愛情が、どんな愛情かはもう色々混ざってしまって一言では言えない
だが、愛しているということだけは、はっきりとわかる

「愛している、ソリッド」

彼が望むように、彼を愛する男という目でだけは見れないだろう
愛しい子どもとして、可愛い弟としてみることを、きっと死ぬまでやめることはできないだろう
それでも、彼を愛している

愛しい子どもとして、可愛い弟として、愛する男として
私の全てが詰まった、特別な存在として

「君を、愛している」

初めて出会った頃から変わらない表情で眠り続ける、何よりも愛しい存在にそう囁きかけ
せめて夜が明けるまではと、愛しい彼の髪を撫で続けた



















挙手されたので、ホテル編を書いてみた
うん、たまには余裕のあるマスターを書きたかったんだ
年上設定生かして、余裕で大人なエロスが書きたかったんだ
撃沈していますがな!!

先日日記でのソリマス妄想がさすがに酷かったので、反動で甘めになった
色々趣味を詰め込みすぎた気がするが気にしない!…ごめんなさい、色々と

初めてマスターを本気で書いてみたけど…うん、何か違う気がしないでもない
MG2…まだ途中なんで許してくださいっ(土下座)

挙手してくださった方、本当にありがとうございます!
そして5000hit本当にありがとうございました(*´∀`)

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