揺れる部屋の中で…1



「…という流れだ、わかったか?」

「あぁ、大丈夫だ…多分」

「おいおい、多分じゃ困るぞボス…」

「…すまん、こういうのは慣れてなくてな」

俺の言葉に、カズは呆れたようなため息をついて、じゃあもう一度説明するな…と書類をまくった
いつもの、ミッション前の打ち合わせにも似たやり取り
普段と違うのは

「ほんと頼むぞボスゥ…こいつ太いんだからヘマしないでくれよ」

やり取りの内容が、俺の超がつくほど苦手なパーティーの打ち合わせというもの
ここが知らない部屋であることと、下から僅かに聞こえるエンジン音
そして、時折がたりと部屋そのものが揺れること

「…意外に揺れるな、これ」

「しょうがないだろ、これでも大分マシになってるんだぞ?元は物資運搬用のトラックだからな」

ここが、トラックの荷台を改造したものだということ

ことの始まりは、カズがMSFへ資金提供しているとある富豪のパーティーに誘われたことにある
その富豪は大層カズを気に入ってるらしく、何かにつけて招待状がマザーベースにも届いていたのは俺も知っている

『あの爺さんしつこいんだよね…スキンシップ激しいしさぁ…』

そうカズがぼやいているのも、何度か耳にしたことがある
…どうも、相当カズにほれ込んでいて愛人にしたいと考えているらしい
とマングースを尋も…げふん、マングースから聞いた

俺からすれば、そんな変態スケベ爺さっさと切ってしまえと言ってやりたい
だが大口の契約相手だから無碍にも出来ないらしい
運営のことはカズにまかせっきりだから、そう言われてしまえば俺も口出しが出来ない
が、そいつのところに行くたびにあまりに不機嫌になる俺を見て

『…そんなに心配なら、スネークも来い』

と、半ば呆れたようにカズから言われたのが昨日のこと

『いいのか?爺さんの機嫌損ねたりしないか?』

『アンタが大人しくしてたら平気だ。組織のボスが直々に会いたい、って言えばあの爺さんもイヤとは言えんだろ』

正直、爺さんしつこいからアンタがいてくれた方が助かる、とどこか困ったように笑うカズに
カズには指一本触れさせないと、密かに誓った

だが、その爺さんの別荘は山の中にあるらしく、ヘリが使えない
途中まではヘリで行くことは可能だが、隠しておく場所がない
だから、こうして車で移動しているのだ

このトラックは荷台を改造し、そこがまるで部屋のようになっている
もちろん、研究開発班のお手製だ
部屋の中には簡易式ベットやトイレ、シャワーまでついている

普段はマングースとホーネットとカズが交互に運転をし、誰か1人がここで休むらしいのだが
今日は俺がついてきているからか

『副指令はボスと後ろで休んでてください』

『そうですよ、運転は俺達に任せてください』

と、やや引きつった笑みと共に2人とも後ろに押し込められた

『…何で?』

とカズは不思議そうだったが、俺としては万々歳だ
仕事とはいえ、前の座席でカズがどちらかと2人きりなんて、俺がイヤだ

『まぁ、せっかくだから打ち合わせしとくか…アンタパーティーとか縁なさそうだし』

俺としては、2人でのんびりとしたかったが、基本仕事人間のカズは俺にからかうような笑みを向け
大量の書類をどこからともなく取り出した

そしてパーティーのマナーやら言葉遣いやら
普段まったくといっていいほど縁のないことを頭に叩き込まれた

…もちろん、右から左へと流れていっているが

「…ということだ、今度こそわかったか?」

カズが、じぃっと俺を見つめながらそう問いかけてくる
ここでわからないといえば、いつまでたっても終わらない

「…わかった、大丈夫だ」

カズの後ろにいて、適当に挨拶だけしてれば問題はないだろう
そう判断し、こくこくと頷いておく

そんな俺を、カズは訝しげにじぃっと見つめていたが

「…ほんと、ヘマだけはしないでくれよ」

諦めたのか、ため息と共に書類を纏め始めた

「大丈夫だ、俺を信用しろ」

「立食形式だから食い物とか出るけど、汚い食い方するなよ?絶対がっつくなよ、食い物は俺が取ってきたやつをゆっくり食べるんだぞ!?それに飽きたからってふてくされるなよ?常ににこやかに笑ってなきゃダメだぞ?後タメ語は禁止!常に丁寧な言葉遣いを心がけろよ!」

「俺は子どもか…そんなに信用がないか?」

「パーティーに関してはな」

きっぱりはっきりと言われ、何を言ってるんだ見たいな目で見られさすがに少し落ち込む

「…そう落ち込むなよスネーク、普段は誰よりも信用してるさ」

それが伝わったのか、カズはどこか優しい顔でそう言った

「さて、慣れない事してアンタも疲れたろ?何か食べるか」

カズは小さく笑って椅子から立ち上がり、背後にある小さな棚を探り出した
うつむいたせいで見える白い首筋に、強い欲情を覚えた

エンジン音が聞こえ時折僅かに揺れるが、こうしていると部屋そのものだ
マングースとホーネットが前にいるとはいえ、向こうから俺達の様子も見えないし俺達も向こうの様子は見えない
つまりは、部屋でカズと2人きりだといっても過言ではない
しかも、3日前までミッションでマザーベースを離れていて
帰ってきたらパーティーの話を聞き
今日までその準備でカズは忙しくしていた
だから、こうして2人でゆっくりするのは久々だ

夜に、久しぶりに恋人と部屋で2人きり
欲情するなというほうが無理だ

「カズ…」

背後から抱きすくめて、その体をしっかりと抱きしめる
そのまま形のいい耳にねっとりと舌を這わせれば
「ぁっ…」

耳が弱いカズは、小さく声を上げて体を震わせる

「ス、スネーク、前にマングースとホーネットが…」

「大丈夫だ、見えやしない」

戸惑ったような声を上げるカズに構わず、じっくりと形を確かめるように赤く染まり始めたソコをねぶり甘噛みしてやる
そのままズボンの上から内股を撫でれば、カズの体がぴくんっと跳ねる

「やっ、ダメだって」

「いいじゃないか…何がダメだ?」

カプリと耳朶を甘噛みしながら、ふっと吐息を耳に流し込む
すると面白いくらい肩が跳ね頬が欲情に赤く染まっていく

「よ、汚れるしっ…」

「シャワーを浴びればいい」

「ダメ…ダメだって…」

ふるふると力なく首を振り、どうにか俺から逃れようと体を捩る

「なぁカズ…お前を抱きたい、今すぐに」

その体をしっかりと抱きしめて、耳元で欲情しきった声を流し込む
小さくカズの体が跳ね、チラリと俺の方へと潤んだ瞳をむけ

こくりと、小さく頷いた


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