青い海、青い空、白い…?・1



青く澄み渡った空、ふわりと浮かぶ白い雲
ほとんど人の手のはいっていない、白い天然の砂浜
澄んだ青い海中には珊瑚や色鮮やかな熱帯魚が泳ぎまわっている
まさに、自然が作り出した海中の楽園
それが、すぐ側にあるって言うのに…

「泳がないとか、人として間違ってる!そうだろスネーク?」

くるり、とそう言いながら振り返ると

「…で、何で急に海なんだ?」

濃いグレーのボクサータイプの水着を着たスネークが、訝しげに俺を見つめていた

「いや、常に海の側にいるのに泳いでないなと思ってさ」

「なら1人で来い、俺まで巻き込むな」

「つれないなぁスネーク…俺とアンタの仲じゃないかぁ」

肩に腕を回して笑いかければ、スネークは呆れたような表情でため息をついた

というか、あまりそんな表情をされるといくら俺でもさすがにへこむ
一応恋人なのに、俺達
まぁ、射撃場に行こうとしてたスネークを強引に連れてきた俺が悪いんだろうけどさ

「…悪かったよ、無理矢理つれてきて」

スネークの肩から腕を外し、くるりと背を向けてみせて拗ねたような声を出してみる
少しわざとらしいか?とも思ったが、少しくらいわざとらしくないと真意に気付いてもらえそうにない
少しへこんでるけど本気で拗ねてるわけじゃない
ただ少し、甘えたいだけ
恋人としてじゃれあいがしたいだけだ

「そう拗ねるなカズ、ちょっとからかっただけだ」

おそらく、スネークも俺がわざと拗ねた風を装ってるとわかってるんだろう
どこか楽しげに笑いながら、後ろから抱きしめられる

「…訓練するとこだったんだろ?いいよ気ぃ使わなくて」

背後の厚い胸板にかるく背を預け、その腕の心地よさにもう少しだけ拗ねたふりをしていようかと、少し上にあるスネークの目を軽く睨みつけてみる

「わるかった、からかいすぎたな…お前からのデートの誘いだ、訓練くらい明日にまわすさ」

だが耳元で甘い声で囁かれ、頬にキスをされ
心臓が一気に跳ね上がって体温が上がり、急に居心地が悪くなる
というか、この体勢が妙に恥ずかしくなってくる

「す、スネーク…離してくれないか?」

「そう照れるな」

「照れてない、だから離してくれ」

軽く睨みつければ、スネークはどこか楽しげに笑いながら俺から離れる
離れていく温もりに、少しだけ寂しさを感じたが
あのいたたまれないというか、妙な恥ずかしさよりはましだ

「で、どうする?ただ泳ぐだけか?」

「そうだな…とりあえず、あのブイまで競争というのはどうだ?」

スネークの言葉に少し考え
少し遠くの海面にポカリと浮かぶ、通信用のブイを指差してそう提案してみる

「遠泳か…訓練にもなりそうだな」

スネークは俺の指の先にあるブイを見て、顎に手をやりながらそう言った

「訓練とか言ってられるのも今のうちだぞ、スネーク」

「何だ、随分と自信たっぷりじゃないか」

「こう見えても海育ちなんでね、泳ぎにはすこーし自信があるんだ」

「そりゃ面白い…俺も泳ぎは苦手じゃない」

軽く体をほぐすようにストレッチをするスネークと同じように、俺も体をほぐす
日本にいた頃はよく海で泳いでいたし、潮の流れを読むのもそれなりにできる

勝負に負けるのは嫌いだ
特に、スネークには負けたくない

「よし…それじゃあ勝負といこうじゃないかスネーク」

「よぉし、望むところだ」

互いに視線を合わせて小さく笑い
同時に、海に向かって駆け出した






「はは、勝負は俺の勝ちだったなカズ」

「くそう…潮の流れを読み間違えた…」

俺達がもう一度砂浜に帰ってきたとき
スネークはどこか得意げに俺の顔を見やり、俺は悔しさを滲ませながらスネークの顔を見た

結局、あのブイに先に手をつけたのはスネークだった
俺はといえば、潮の流れを読み間違えて流され、ブイについたのはスネークより少しだとだった

あれだ、潮の流れさえ読み間違えなければ負けなかった
うん、俺は負けたわけじゃない
プールとかで泳いだら、俺だって…

「で、きたときからずっと気になっていたんだが…アレはなんだ?」

そんなことを考えていると、スネークの不思議そうな声が耳に届いた
その声にスネークのほうを見ると、スネークは日陰に置いていたクーラーボックスを指差していた

「あぁ、飲み物とか入れてきたんだ。なんか飲む?マウンテンデューとか」

それは、ここに来るとき俺が持ってきたものだ
中には飲み物とおやつなんかが入れてある

「そうだな、もらおうか」

「それじゃあついでに休憩にするか。おやつもあるぞ」

「そりゃあ楽しみだ」

2人でクーラーボックスの側に腰を下ろし、それを開けてスネークにマウンテンデューを渡す
ぷしゅり、と音を立ててプルタブを開け美味そうに飲むその姿に俺も欲しくなるが
先にアレを食べようと思い、クーラーボックスの中から容器を取り出す

「…何だそれは?」

俺の取り出した容器を、スネークが興味深そうに見つめる

「アイスクリームだ、スネークも食べるか?」

ぱかり、と蓋を開ければ甘いバニラの香りと共に白いアイスクリームが姿を現す

実はこのクーラーボックス、中が2つに分かれているのだ
その両方に、違う温度のモノを入れられる仕組みになっている
片方に冷やしたいもの、もう片方に温かなものを入れることもできる
しかも、大きさの割りに軽く中も広い優れもの
もちろん、我が自慢の研究開発班の技術の賜物だ

ちなみに今取り出したアイスは、俺の手作りだったりする
昨日不意に思い立って作ってみたのだ

「そうだな、もらおうか」

「じゃあはい、スプーン」

スネークにスプーンを渡し、自分もそれを手にとって程よい柔らかさのそれを掬って口に入れる
程よい甘さとバニラの香りが口いっぱいに広がって、思わず頬が緩む

うん、初めて作ったがなかなか美味い
さすがは俺!
同じレシピで糧食班で増産して、食事のデザートにしてもいいかもしれない
年中暑いマザーベースでは、こんな冷たいデザートが喜ばれるだろうしな

「…美味そうだな」

アイスの冷たさと甘さを堪能し、さてもう一口…と掬ったところで、ポツリとスネークがそう呟いた

「美味いぞ?アンタも食えよ」

ほら、と容器を差し出すが、スネークはスプーンを付けようとはしない
なんなんだ?一体…

「いや、俺はこっちでいい」

不思議に思っていると、ふっとスネークが小さく笑い
顔を近づけられ、口の端をぺろりと舐められた

「うん、美味いな」

ぺろり、と自分の唇を舐めながらニヤニヤと笑うスネークに、かぁっと頬が熱くなる

「な、何だよ!?欲しいならこっち食えよっ」

「いや、お前の口の端についてるやつが美味そうだったんだ」

いい顔でそんなことを言われても、正直恥ずかしさしか沸いてこない

「こっち食えよ!ほらいくらでも食っていいいから!」

「そんなに照れるな…ほら、溶けるぞアイス」

スネークが俺のスプーンを指差した瞬間、溶けたアイスがとろりと俺の腕に落ちた

「わ、もったいなっ」

急いでスプーンの上のアイスを口に入れてから、腕に垂れた液をペロリと舐める
多少行儀が悪いが、頑張って作ったんだ
たとえ1滴でも落としたらもったいない

「ったく…大体アンタなぁ…」

腕のアイスを舐め終え文句の続きを言おうと口を開いた瞬間
腕を掴まれて引き寄せられ
そのまま、いきなり口付けられる

「んむっ…」

べろり、と唇を舐める舌は、明らかに性的な意味を持っている
…何かはわからないが、何かがスネークの中のスイッチを刺激したらしい

するり、と肌を撫でる手にゾワリとした感覚が全身を襲い、そのまま身を任せてしまいそうになるが

「ちょ、待てって…」

その衝動をどうにか抑えて、スネークの肩を全力で押す
が、がっしりとした体はびくとも動かない
…わかってはいるが、同じ男として妙に情けない気分になる

「待てってばスネーク!俺の話聞いてくれ!」

が、ここで落ち込んでいてはこのままスネークに美味しく頂かれてしまうのは目に見えているので、そんな気持ちを誤魔化すようにひたすらに大声を上げながら肩を全力で叩く

「…何だ、カズ」

そうまでしてようやく、渋々といった様子でスネークが俺から離れてくれた
その顔は、ものすごく不機嫌そうだ
その表情に一瞬気おされる
だが、これだけは言わなければならない

「アイス溶けるだろ!?」

そう、このまま行為に及べばせっかくのアイスが溶けてしまう
このアイスは昨日雑務の合間を縫って作り上げた自信作
ものっすごく手間隙かけて作ったアイスを、このまま溶かしてしまうなんてもったいない
というか、昨日の俺の努力が無駄になるからイヤだ

「だから…」

「ほぉ…アイスなぁ…」

言葉を続けようとした瞬間
ただでさえ低いスネークの声が、さらにワントーン下がった

「(あ、ヤバイ…スネークがキレた)」

その声に、一瞬でどでかい墓穴を掘ったことを理解した
俺としては、クーラーボックスにさえ戻してもらえれば続きをしてもかまわないというつもりだったが
スネークは、どうやらアイスが溶けるからシたくないという風にとったらしい

「ま、待てスネーク!別にアイスが溶けるからヤらないとかそんなんじゃ…」

「少し黙れカズ」

慌ててスネークの勘違いを訂正しようとすると、不機嫌な表情のままのスネークに口付けられる
そのまま強引に歯列を割られ咥内に舌が突っ込まれる
拒絶するまもなく舌が絡め取られ、ゾクゾクとした感覚か背筋を走り抜ける

「ん…ん、んぅ…」

まるで、呼吸すら奪われてしまいそうなほど激しくてねちっこいキス
いつもよりしつこくて長いそれに、酸素が足りなくなってきて頭がぼぉっとしてくる
息苦しさと、ほのかな快感が入り混じって思考が正常に働かない
快感より息苦しさが勝ち始める頃、ようやくスネークは俺を解放してくれた


- 32 -


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -