お仕置き?いいえ尋問です・1



「責務や精神に悪影響がないのが大前提だ。わかるか?」

目の前で居心地が悪そうに視線をさ迷わせる男…このマザーベースの副指令でもあり
今回の騒動の原因でもあるカズを見下ろしながら、俺はビヒタを握る手に力をこめる

任務から戻ってすぐ、ガゼルから相談があったのだ
カズが二股をかけている現場を見たのだと
ここにいるのがもったいないくらい美人で気立てのいい彼女が、深刻な顔で俺にそう告げたのだ

まぁ、俺はここの隊員の恋愛に口を出すつもりはない
カズが二股かけようが三股かけようが、それを自分できちんと管理ができるのなら好きにしたらいい
だが、どこか詰めの甘いところのあるカズは、ものの見事に管理し切れていない
その証拠に、ちょっと調べただけでボロボロと女性関係が出てきて、ため息がもらさずにはいられなかった

まぁ、それが全て体だけの関係だというのなら、俺も口を出さない
それでお互いが満足しているというのなら、それは2人の問題だ
だが問題は、ガゼルのように本気でカズに惚れて自分が恋人なのだと思ってる女が何人かいることだ
ガゼルはまだ、スワン以外の女性の影に気付いていない
そこは、カズがそれとなくうまくやっているのだろう
その手腕は見事だと褒めてやってもいいが
だが、それもいつばれるかわからない綱渡りのようなものだ

もしも、本気の女達が
自分こそがカズの本命で恋人なのだと思っている女達が、カズの所業に気付くようなことがあれば
それこそ、恐ろしい女の争いに発展しかねない
女の争いほど、恐ろしいものはない
最悪、MSF全体の問題に発展しかねん
それだけは、司令官として何としても避けなければならない

なので、シャワールームで問い詰めようとしたが
カズはのらりくらりと、どうにかして俺の話をそらそうとしている
おそらく、俺が何の話をしようとしてるのかわかってて、どうにか誤魔化そうと思っているのだろう

その精神が、気に食わない
素直に認めて謝るなら、厳重注意だけですませてやろうと思っていた
が、そうやってどうにかして誤魔化そうとしているのなら、それ相応の罰を与えなければならない

そして、気に入らないことがもう1つ
先ほどカズにタオルを取らせ、体を改めたときに気がついた
おかしな場所に傷があるのだ
内腿に傷
尻にも傷
普通のプレイではつかないような場所に、爪で引っかいたような傷がある
しかも、かなり多数

そのことが、俺にある疑念を抱かせる
そして、その疑念が俺の神経をさらに苛立たせる

「あ…熱くなってきたから、俺はそろそろ…」

さらに、どうにかして俺から逃げ出そうとするカズに
俺の堪忍袋の緒が切れる音がして

「ふんっ!」

手に持ったビヒタで、背中を思いっきり叩いてやった

「いったぁっ」

その瞬間、ばしぃっといい音がサウナに響き渡り
ビクリとカズが体をすくませる

「逃げようったってそうはいかないぞカズ…お前、ガゼルと出来てるんだってな?」

俺の言葉に、カズの顔がゲッとでも言いたげに歪む
だが、やはり謝るつもりも、正直に話すつもりもないらしい
素直に謝らないのなら、吐かせてしまえばいい
俺も手荒な真似はしたくなかったが、この場合仕方がない
素直に吐かない、カズが悪い

「任務から戻ってすぐ、ガゼルから相談があってな…お前が、スワンと石鹸プレイをしているところを見たと」

「あ〜…え〜っと…」

うろうろと視線をさ迷わせながら、どうにかして言い訳しようと考えているらしいカズの背中をもう一度ぶっ叩いてやる

「うぁっ」

「で、アルマジロがそれを見た…スワンとアルマジロは恋人同士なんだってなぁ?カズ」

「え〜…え〜っとぉ…熱いから、外で話聞きたいなぁ、なんて…」

だが、カズはやはり懲りてはいないらしい
あはは、と乾いた笑いを漏らしながら、なおも逃げ道を探す腐れた根性に
プチリと、さらに何かが切れる音がした

「もう我慢ならん…その根性叩き直してやる!!」

そろりそろりと、俺にばれないように扉に近づいているつもりのカズの腕を掴み
勢いよく、サウナの奥へと放り投げるように引き込む

「うわっ」

バランスを崩したらしいカズは、どうにか地面への激突を避けようととっさに腕を伸ばして、座るために一段高くなった場所へと手をついた
が、高さが足りなかったのか、支えきれずにガクリと勢いよく床に膝をついた

「い、たぁ…」

心底痛そうにうめくカズに、少しだけ心配になる
が、カズも軍人だ
コレくらいでどうこうなるような柔な体はしてないはずだ

さて、どうしてくれようか…と考えながらカズを見たとき
ふと、露わになったなった白い尻に目がとまった

お仕置きといえば、尻だろう
カズの祖国日本にも、悪いことをした子どもへの罰として尻を叩くという習慣があると聞いた
しかも、いい年した大人が、一回り年上の上官に尻を全裸で叩かれるのだ
さぞかし、プライドが傷つくに違いない
プライドの高いカズには、うってつけの罰だろう

「そりゃ、アルマジロも驚くよなぁ…カズっ」

体を起こそうとしているカズの尻を、ビヒタで思いっきり叩いてやる
その瞬間カズの体がビクリと跳ね、息を詰めたのが伝わってきた

「なんたって、恋人の浮気現場を見たんだからなぁ!」

バシリ、と尻を叩く音が部屋中に響く
恥ずかしいのか、カズは体中を強張らせてぎりっと歯を噛み締めているようだ
プライドの高いカズのことだ、尻を叩かれて痛いというのが悔しいか恥ずかしいのだろう

いつもは、その強情さとプライドの高さは美徳になるが
時と場合にもよると、いい加減こいつは理解したほうがいい

「重戦車並みの安定感を持つアルマジロも、こけるわな!」

手加減なしに、何度もカズの尻を叩く
叩くたびに、色の白いそこが赤く染まっていき
カズの体が、ビクビクと跳ねる

その姿が妙な色気を放っていて、少しだけムラムラきながらも
これはカズへの罰なのだと、言い聞かせながら叩き続ける

「マザーベース中のウミネコが、飛び立つわ!!」

一際力を込めて叩き、もう一度叩こうと振り上げた瞬間

「わ、悪かった!俺が、俺が悪かった!だ、だからもうやめてくれっ」

ついに我慢しきれなくなったのか、カズは声を震わせながら懇願してきた
その言葉に満足して、振り上げていたビヒタを降ろす
そこで、ようやく気がついた
カズの様子がおかしい
フルフルと体を震わせて、まるで何かに耐えるように拳を握り締めている
痛みと羞恥に耐えているのかと思ったが…どうにも、違う気がする
ほっと息を吐き、体の緊張を解いている隙を狙って
不意打ちで、もう一度尻を思いっきり叩いてやった

「あっ」

その瞬間、カズの口から明らかに欲に濡れた声が上がり
ばっと、大慌てで口元を手で覆った

だが、その声は確かに俺の耳にも届いた

「カズ…お前、まさか感じたのか?俺に尻を叩かれて」

するりと、震える内股をビヒタの先端で撫でてやれば、ビクビクと体が震える

元から、Mの気があるやつだとは思っていたが
まさか、尻を叩かれて感じる性癖があるとは

「ち、違う!」

けれどカズは俺の言葉にガバリと振り返り、慌てたような声を上げて俺を見上げてくる
だが、その目で言われても説得力がない
本人は気付いていないのだろうが、俺を見上げる瞳は明らかに欲情を湛えている
その誘い込むような、吸い込まれてしまいそうな妖しい魅力を放つ瞳に
ズクリと、俺の中の欲情に火が灯る

「ほぉ…それなら前を向け」

ほら、とビヒタで軽く促してやると、ぐっとカズが答えに詰まる
男の体は、快楽を隠せない
感じてしまえば、いやおうなく性器が勃ちあがる
タオルは、先ほど体を改めたときに取り払ってしまっている
隠すものは、何もない

「ほらどうした、今更何を恥ずかしがる?感じていないなら前を向け」

ぱしぱしと軽く尻を叩いてやると、カズは反抗的な目で俺を睨みつけてくる

ほぉ…まだそんな顔が、俺に出来るのか

ニヤリと、抑えきれない感情のままにカズに向けて笑い
もう一度、手加減ナシに叩く

「ひっ…」

「ほら、叩かれるのが嫌なら前を向け」

「っ…」

「さぁ、どうしたっ、さっさと前を、向けっ」

「む…向けないんだっ」

幾度か尻を叩くと、カズがまるで叫ぶようにそう声を漏らした
その言葉にビヒタを振り上げた手を下ろしてやれば、カズの顔があからさまに明るくなった

「向けない、とはどういうことだ?」

「き、気持ち悪いんだ…ほら、長くサウナにいたからっ。脱水症状かな!?」

まるで早口言葉のように言葉を吐き出すカズに、なるほどと思う
確かに、結構長い時間このサウナにいる
サウナに長いこと入っていれば、脱水症状を引き起こしてしまうことも珍しくない

さすがは、頭の回転が早いカズだ
なかなかいい言い訳を見つけたもんだ

「大丈夫か?立てるか?」

「あ、あぁ…だ、大丈夫だ」

心配そうな表情を作ってカズの目を覗き込めば
カズはほっとしたような表情になりながらも少しだけ視線をそらした

甘いなカズ
気付いていないかもしれないが…お前は都合の悪いことを誤魔化そうとするとき、絶対に俺と目を合わせようとしない
しかも、気が動転しているのかいつものポーカーフェイスも見事に崩れている
それで、誤魔化せると思っているのか?

「なら早く出ないとな…どれ、俺が支えてやろう」
笑い出したい気持ちを抑えて、力の抜けている手を軽く掴んで引っ張り上げようとすれば
カズの顔があからさまに慌てたものになる

「い、いやいい!一人で歩けるから!」

「だが前を向けないくらい気持ち悪いんだろう?無理して転んで頭でも打って気絶したら、それこそ死ぬぞ?」

だが正論で詰めてやれば、うっとカズが言葉に詰まり視線がさ迷いだす
おそらく、次の言い訳を考えているんだろう
もう少しどう反抗するか楽しみたいところだが、これだけサウナにいればさすがに俺も暑い
今はカズも考えることに必死になっているが、そろそろ本気で脱水症状を起こすかもしれない

残念だが、続きは外ですることにしよう

腕を引っつかんで半ば強引に引き寄せると、どうやって逃げるかに集中していた体は突然のことに反応できずに力のかかる方向に引き上げられる

「うわっ!」

とっさに前を隠そうとしたらしく、随分とマヌケな格好だがカズは立ち上がった
その手には、いつの間にかしっかりとタオルを握っている

よし、これなら兵士達の間を歩いても大丈夫だろ
そう判断して、そのまま兵士達でごった返しているであろう水風呂部屋ではなく、先ほどまでいたシャワールームへと歩き出す
兵士達は出来たばかりのサウナが物珍しいのか、最近はあまりシャワールームへは入ってこない
普段ならサウナも常時人でごった返しているらしいのだが、ここに入るとき俺の顔があまりにも怖かったのか
中にいた何人かの兵士達が俺の顔を見てあからさまに怯えたような表情をして、慌てて出て行った
今の今まで兵士達が入ってこなかったのはそのせいだろう
今も、サウナから出てきた俺とカズを兵士達は遠巻きに心配そうに眺めている
おそらく、シャワールームにも誰も入ってこないだろう

それなら、好都合だ

抵抗もせず大人しく俺に引かれるカズの手を逃げられないようにしっかりと掴んだまま
俺は、シャワールームへと続く扉を開けた


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