可愛い人と愛する人・2



「…いつまでそうしているつもりだ?ソリッド・スネーク」

マスターの気配がなくなった部屋
先ほどまでの甘い声とはまるで違う、冷たい声で名前を呼ばれ
俺は、ため息を吐きながら体を起こした

「残念だったな、クソガキ…もう少しでカズを抱けるところだったのに」

挑発的に、でも殺気の篭った笑みを浮かべる男…ビッグ・ボスを思い切り睨んでやる

「あぁ、アンタが来なけりゃ完璧だった」

あの日
愛するマスターを、この男と一緒とはいえ初めて抱いたあの日
あの日以来、マスターはすっかり俺を警戒してしまっていた
本人は普通を装っていたつもりなんだろうが、触れようとすると過剰に反応されたりしていた

そのマスターを、言葉巧みに誘い出し
マスターのツボを刺激し、怒っていない、嫌ってもいないという言葉を引き出し
話を弾ませてマスターに大量に酒を飲ませ、自分は酔いつぶれたふりをし
ようやく、事までこぎつけたというのに

あまりにもタイミングの良すぎる登場に、ずっと見ていたのではないかと疑いたくなる
もう少し後なら、浮気の現場として成立したのに

「それにしても、趣味が悪いなあんた」

「何がだ?クソガキ」

「俺が酔ったふりをしていると知っていて、マスターとの睦言を聞かせるなんて」

いくら、2人が恋人同士とは知っていても
目の前で、あんなふうに愛を語らると酷くイラつく

恨みの篭ったその言葉に、ボスはふっと鼻を鳴らして笑った

「忘れちゃいないか?クソガキが…カズは、俺のものだ」

自信たっぷりに笑うその姿に、唇をかみ締める
この男の言うことは間違ってはいない
マスターは、この男の恋人なのだ
今の俺は、ただマスターに想いを寄せる教え子に過ぎないのだから

「いい加減諦めろ…さて、部屋でカズが待っている。お前にこれ以上付き合う義理はない」

ふ、と余裕たっぷりに笑って、ボスは俺の部屋の扉を閉めた

それと同時に、俺はベットへ倒れこむ

「くそ…あと少しだったのに」

マスターの、あの柔らかな首筋
先ほどまで触れていた、キメの細かい肌
それを思い出すたび、悔しさで暴れだしたくなる

本当に、あと少しだったのに

「けど…」

何も、悪いことばかりじゃなかった
自分に、そう言い聞かす

マスターは、あの時確かに流されそうになっていた
酒が入っていたのもあるが…
あの状況で、流されてくれるくらいは俺に好意を持っているということだ

「明日、謝っておくか」

途中から記憶がない
そう言って謝れば、マスターもあれは酔っ払いのたわごとのようなものだと思うだろし
そして、今までのようにやたらと警戒することもなくなるだろう

流されそうになってしまった記憶は、残ったままで

「焦るな…慎重に…」

焦ってはいけない
もともと、限りなくゼロに近い可能性への挑戦なのだ
長年の恋人同士である、マスターとボスの間に割って入るなんて

マスターの心が俺に傾く可能性なんて、限りなくゼロに近いのだ

けど
ゼロじゃない限り、可能性はある
例えほんの僅かでも可能性があるなら
それをゼロにするか、100にするかは俺次第

それに、思っていたよりは可能性は低くないのかもしれない
現に、マスターは案外あっさり流されてくれそうになったし
余裕たっぷりに見えるあの男も、ずいぶんと俺を警戒している

警戒されるのは、意識されている証拠だ
あの男に
そして、マスターに

触れられて、警戒するほどに

もともと、持久戦は覚悟していた
ならば、じっくりとマスターの心を侵食していけばいい

どれだけ邪魔されても
どれだけ失敗しても

最後にマスターの心が手に入れば、俺の勝ちだ

「さて…次はどうするかな…」

俺はマスターの可愛い顔を思い出しながら
次の計画を、ゆっくりと考え始めた
















榊様リク【ボス+ソリッド×カズ続編】でした

やったよママン!殺伐としてないのが書けたよ!!
よかった…本当によかった…

揺れ動くミラーさんを!!でもやっぱりボスには勝てないソリッドさんを!
とのことでしたので、頑張って計画立てたのにボスにぶち壊されるソリッドさんになりました(笑)
しかしカズ…あっさり流されすぎだ…

愛する人と〜で、ソリッドはピチピチの10代でマスターには敬語、なんて設定つけたもんだから、このソリッド誰だコイツ状態になってます
さらにマスターの前では年下フル活用ぶりっ子設定とかつけちゃったもんだから、完全に偽物な匂いがします…ごめんなさい…

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榊様、リクエストありがとうございました!!



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