蝶のように、花のように・2



「…そこのベットサイドの引き出しに、ローションが入っている」

俺の言葉に、ふっと表情を緩めた彼は、体を起こしてすぐ脇のベットサイドを指差した
その指が指し示す引き出しを開けて、遠慮がちに中を探ってみると、それらしきものが手に触れた

「これですか?」

それを取り出して、彼に見せると

「あぁ、それだ」

彼は、にまりと妖艶に微笑んで、するりと俺の手の中からそれを奪い取った

「ミラー?」

「お前は礼儀正しい男だから、特別だ」

まるで艶やかな花のように笑いながら、彼は俺の前に屈み
カチャカチャと音を立てて、俺のベルトを外して下着を下げ
彼の痴態に煽られて完全に勃ちあがった性器を露出させた
そのあまりの美しい所作に、俺はただ呆然と魅入っていた

「若いな…もうこんなにするなんて」

はぁ、とどこかうっとりとそう呟く彼の吐息が性器に触れて
それすら気持ちよくて、ビクリと腰が跳ねてしまう

「特別だぞ?だから、誰にも言うなよ」

まるで、念を押すように俺を見上げた彼はそうどこか楽しげに言って
ペロリと、俺の性器の先端を舐めた

「うぁっ…ミラー…」

そのまま、ちゅるちゅると音を立てて性器が彼の口に収まる
ぬるぬると舌がまるで生き物のように絡まり、喉の奥できゅうっと締め付けられる
極上の快感に、思わず声が漏れてしまう

「ふぅ、ん…」

そんな俺を彼は満足そうに目を細めて見上げ
ゆっくりと、手を後ろに回していく
その手には、おそらくさっき俺の手から取ったローションが絡んでいて

「んっ…ふ、ぅ…」

そのまま綺麗な指先が、ゆっくりと彼の体内へ消えていく
根元まで埋まったかと思えば、またギリギリまで抜き出される
そのたび、鼻から抜けるような甘い吐息が俺の耳に届き
その間も、舌が俺の性器に絡まっていて

あまりに扇情的な光景に、頭がクラクラとした

「綺麗、です…」

くしゃりと、その柔らかな光を反射する髪に手を入れて緩く撫ぜれば
すっと目が細まって、その姿がまるで血統書のついた美しい猫のように見えた

「うぁ…ぁ…」

「んふぅ…ふん、ん…」

性器に伝わる直接的な快楽と、視覚や聴覚から伝わるそれに煽られて
今にも爆発しそうなのを、どうにか堪えていると

「はぁ…」

彼が、吐息を吐きながらゆっくりと口を離した
同時に、後ろに埋まっていた指が抜かれる

そのことに、ほんの少し名残惜しく思っていると
まるで、俺の思考が伝わったかのように、彼が笑った

「お楽しみはこれからだ…そうだろう?」

すっと、指先が俺の唇に触れて
ゆっくりと、彼が俺の太ももの上に乗り
彼の唾液と先走りで濡れた俺の性器にそっと手を沿え

「そのまま、動くなよ?」

ぐっと、そのまま腰を下ろした

「あ…あ、ぁ…」

ずぶずぶと、白い喉をのけぞらせながら、彼は俺を飲み込んでいく
奥へ進むたび、彼の中がきゅうっと俺を締め付けて、脳天を突き上げるような快楽が俺を襲う
弾けてしまわないように、大きく息を吐きながら目を閉じて必死で堪えていれば

「全部、入ったぞ?」

そう、甘い声が聞こえ
ゆっくりと目を開けると、酷く妖艶な笑みを浮かべた彼が俺を見下ろしていた

「み、ミラー…」

「動く、からな…?」

上がる息で、どうにか彼の名前を口にすれば
満足げに微笑む彼は、俺に軽いキスを落とし
ゆっくりと、腰を使い始めた

「はぁ…あ、あぁ…」

ぬちゃぬちゃと、彼が動くたび結合部から濡れた音が響く
動きに合わせてきゅうきゅうと締まるソコは、まさに極上といっても過言ではない
何より、目を伏せたまま俺を受け入れて快楽を貪る彼の姿は、あまりに色っぽくて美しい

もっと見ていたいと思う
けど、同時に彼を思うがままに蹂躙したいという欲求が沸きあがってくる
欲望のままに突き上げて、彼を貪りたいという凶暴な欲望が

「物足りなさそうだな」

俺の心が読めるのか、彼は動きを止めて俺の顔を覗き込んできた

「い…いえ…そんなことは…」

そのとろりと溶けた、深い色をした瞳から目をそらしてそう言えば
彼は笑いながら俺の頬を手のひらで覆い、視線を合わせてくる

「…今夜は無礼講だといった…好きにしろ」

欲に溶けた、深く蒼い瞳
甘い吐息を吐き出す、赤い唇
そして、俺を誘う蜜のように甘い言葉

それらに俺の理性は
いともたやすく切れた

「ミラーっ!」

その体を抱きしめ、ベットに勢いよく押し倒して腰を抱え上げ、本能のままに突き上げる

「あぁっ…ぁ、それ、いいっ…」

「ミラー…ミラー…!」

しなる背を強く抱きしめて噛み付くように口付ければ
彼のしなやかな腕が俺の背に回り、足が腰に絡みつく

「も、とっ…もっと、奥っ…ぁ、そこいいっ…ひぁっ」

「くぅっ…ミラーっ」

こんな淫猥な姿になっても、彼はとても美しい
快楽に溺れながらも、彼は彼のまま崩れない
抱いているのは俺だというのに、まるで彼に食われているような気すらする
けど、それがどうしようもなく気持ちいい
彼という美しい存在に飲み込まれ、翻弄されるのがどうしようもないほど幸福で

「あぁっ…も、イくっ…っあぁぁぁっ!」

「くっ…ミラーっ!」

彼の美しさと快感に溺れ、飲み込まれながら
俺は、彼の中に欲望を放った






「…用事はすんだ、帰れ」

甘く濃厚な行為の後
軽く身支度を整えた副指令は、先ほどまでの行為を感じさせない顔で、扉を指差した

「わかりました」

俺は軽く副指令に頭を下げてから、示されるままに扉を開け

「ミラー副指令…」

一度だけ、彼を振り返った
ほんの少しだけ、何かを期待しながら

「何か、まだ用事があるのか?」

けど、副指令はそんな俺に拒絶を含んだ笑みを向けた

「…いえ、失礼します」

その笑みに、どうしようもない寂しさと虚しさを感じながら
俺は、部屋の扉を閉めた

「…ミラー…」

閉じられた扉に寄りかかり、行為の間だけ呼ぶことを許された名を口にすれば
先ほどまでの彼の姿が思い出されて、そっと、指先で唇に触れてみる

副指令が、他の男とも寝ていることを知っている
その場の気まぐれで、彼は寝る相手を部屋へ誘う

決して、俺だけが特別なわけではないのだ

けど…
俺が彼と寝たのは、実はこれで4度目だ
このMSFには、200以上の男達がいる
彼にも男の好みがあるだろうから、実際に選ぶ人数はもう少し少ないのだろうけど

けれど
偶然というには、あまりにも多い回数

俺の容姿がよほど彼の好みなのか
それとも、本当にただの偶然なのか

あるいは
俺という人間を認識して誘っているのだろうか

まさかなと思いつつ、淡い期待にも似た疑惑を捨てきれない
もしも、彼が俺という人間を少しでも気に入ってくれているなら
ほんの少しでも、俺という存在を特別視していてくれるなら

きっと、喜びで死ねるかもしれない

初めて、彼の部屋を訪れたときからずっと
俺は、彼に魅せられ続けている
蝶のような、花のような
あまりに美しい、それでいて儚さを持ったあの人に
昼と夜で、全く別の顔を持つあの人に

甘く魅せられ、焦がれ続けている
まるで恋のように
花に惹かれる、蝶のように

「ミラー…」

もしも、次に彼の部屋に呼ばれることがあるならば
これで5回目なんですよ、と話しかけてみるのもいいかもしれない

それで、ほんの少しでも彼の瞳に俺として映れるなら
この閉じられたドアのように、拒絶された心にほんの少しでも入り込めるなら
ほんの一滴でも、彼の中に何かを残せるなら

それは、酷く幸福なことだと思った



蝶のように、花のように



貴方に愛されたいなんて、過ぎたことは願いません
だから、ほんの少しでいいから俺という人間を見て欲しい
一瞬でもいいから、貴方に俺という男を知って欲しいと
願うことくらいは、許されるでしょうか?

まるで、艶やかな花のように美しい貴方に
どうしようもなく魅せられた、無数の蝶の1匹である俺の願いが
貴方に届くことはないと知りながらも
それでも、もしもまた貴方に触れられるならと
望むことくらいは、許されるでしょうか?

許されるなら
命すら惜しくないと
そう思ってしまう俺は
愚かな生き物でしょうか

何ひとつ答えは出ないまま
俺はただ、誰よりも美しくて儚い花を想い続ける


















リクエスト【カズ受でカズがビッチ】でした

お待たせしてすみませんでしたっ!
カズがビッチとのことでしたので、誰でも誘って寝ちゃうカズを書こうとしたのですが
どうにも、ビッチというか、名もなき兵士の話になってしまいました…
いえ、自分の中では彼の設定ガッツリ決まってますが(オイ)
せめてカズを色っぽくビッチっぽく書こうとしましたが
ごめんなさい、何をもってビッチが何かよくわかりませんでした(土下座)

リクエストくださった方のみお持ち帰り可能です!
こんな出来で本当にすみません!
苦情も返品もお気軽におっしゃってくださいませ!
リクエストありがとうございました!!

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