Tentacle・1



「…スネーク、チコ、何だそれ」

俺は、嬉しそうなチコとスネークが抱えて帰ってきたものに、思わずそう突っ込んでしまった

ジャングルでUMA探してくる!と、チコが嬉しそうにスネークを引っ張って船に乗ったのが、ちょうど今朝のこと
チコは、UMAなんかの不思議な生き物が好きだ
将来は、ハンターになりたいと思うほどに

姉であるアマンダや俺なんかは、最初はハイハイと笑って流していたが…世界は、俺達が思っていた以上に広かった
最近、スネークが喋る猫やら恐竜っぽい生き物を見つけたのだ
初めて見たときは、夢でも見てるんじゃないかと思ったが、まごうことなき現実だった

それ以来、チコは俺もUMAを探すんだ!と意気込んでいる
こんな近くにUMAがいたんだから、探したらもっといるはずだと

最近では、買出しの物資の船に乗っては買出し班が帰ってくるまでジャングルでUMAを探すのを楽しみにしている
ジャングルといっても近くにMSFの支援施設はあるし、近くに基地もないので敵に出くわす確立も低く安全だ
それに、万が一に備えて一応兵士…まぁ、大抵はスネークだ…が付き添いをしている

チコは、まだ12だ
本人は大人だ!と言い張っているが、俺達から見ればまだまだ子どもだ
まだ遊びたい年頃だろうし、大人達の中で気を張っているのあるだろう
だから、たまにはこうやって、思いっきり遊ばせてやりたい

それに、何だかんだでスネークも、付き添う兵士も楽しそうだ
やはり、男というものはいくつになっても恐竜とかUFOが好きなもんなんだなぁと、俺も男だがどこか他人事のように思った

まもなく日も暮れるという頃、2人を乗せた船が帰ってきた
嬉しそうな2人と、どこか困ったような兵士達を乗せて

「なぁなぁミラー!UMAらしきものを見つけたんだ!」

船から降りてきたチコは、どこか嬉しそうに
そう、信じられない事を言った

「見つけたって…ホントに?」

「あぁ!スネークと一緒に見つけたんだ!」

「UMAかどうかはわからんが…面白い形をしていたのでな、持って帰ってきた」

「そうか、持って…て、え?持って帰った?」

「ほら、これだ」

どこか楽しげなスネークは、船から運び出してきた

一抱えはありそうな、何だかよくわからない植物の塊を

「…何だ、それ?」

「ジャングルで見つけたんだ!こんなの見たことないよ、絶対UMAだよ!」

興奮気味なチコのが指差す、植物の塊らしき物体を観察してみる
親指くらいの太さのつる草が複雑に絡み合って、一抱えくらいの丸い塊を作っているが、葉っぱらしきものは見当たらない
一応根っこはあるのか、おそらく兵士達が用意したであろうデカイ植木鉢に植えられている

確かに、こんなわけわからん植物は見たことがなかった

「確かに、見たことないな…」

「だろ!で、ミラー…ものは相談なんだけど…」

「どうした、チコ?」

「これさ…ミラーの部屋で預かってもらえない?俺の部屋に置いたら、絶対姉ちゃんに何か言われるし」

唇を尖らせて、チコはつまらなそうにそう言った
チコの姉であるアマンダは、弟に対してはひどく心配性だ
きっと、チコが可愛くて仕方ないんだろう
チコはそんなアマンダをうっとおしがっているが…俺から見たら、微笑ましいことこの上ない

「なぁミラ〜、頼むよ。絶対姉ちゃん『こんな怪しいもの捨ててきなさい』って言うしさぁ〜」

甘えるように俺を見上げるチコに、つい苦笑が漏れる

確かにこの不思議な植物は、チコがUMAだと主張するだけあって、何だか妙な迫力がある
少なくとも、女性の部屋に置く観葉植物には不向きだろう
チコに対して、過保護になりがちなアマンダなら、確実に捨ててこいと言うだろう

「俺の部屋に置いてもいいんだが…俺が世話したら、うっかり枯らしてしまいそうでな」

拾ってきた張本人その2のスネークも、どこか困ったようにそう言った

確かに、戦場を駆け回り銃を握るこの男が、植物の世話をしている所なんか想像できない
というか、戦闘関係以外本気でできない男だ
以前、腹が減ったからとうっかり厨房に立ち入り、えらいことになったのは記憶に新しい

うん、間違いなくこいつは枯らす

「仕方ないな…しばらく預かってやろう」

まぁ、俺も植物の世話なんか詳しくはないけど
少なくとも、スネークよりはマシだろう

「ホント!?ありがとうミラー!」

「ちょうど部屋に緑が欲しかったところだし…まぁ、これはちょっとアレだけど」

「すまんなカズ…部屋に運んでおけばいいか?」

「あぁ、どっか適当な場所に置いといてくれ」

「わかった」

未知の植物入りの植木鉢を抱え上げたスネークと

「なぁミラー、これ絶対UMAだよなっ?」

やたら楽しそうなチコと共に、マザーベースの中へと足を進めた




「…本当、一体なんなんだろうなコレ」

仕事を終え、食堂で兵士達と飯を食い
部屋に戻ると、夕方運びこまれた未知の植物が異様な存在感を放っていて、ついため息が漏れてしまった

一応、成り行き上預かってしまったが…そもそも俺は植物についてそんなに詳しくない
鳥とかならセシールの専門なんだろうが…さすがに、植物は専門外だろうし

とりあえず、水をたっぷり与えて観察してみる
植物の癖して、つるの表面はつるりとしている
触った感じ植物の表皮というより、動物の皮膚みたいな感じがする
それに、植物にしては何だか柔らかい
意外に触り心地のいいそれをぷにぷにと摘んでみたりするが、当然のように未知の植物は反応を返してきたりはしない

「まさか、本当にUMAだったりしてな」

まぁ、そんなことはないだろう
UMAがそんなに簡単に見つかるはずないし

明日あたりにでも、研究開発班のやつに渡そう
そうすれば、何かしらチコが納得するような結論を出してくれるだろう

人に丸投げする気満々で、俺はしばらくそのつるで遊んでからベットに入った


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