トリックオアトリート!



『トリックオアトリート!』

扉の向こうから、とても楽しそうな野郎の野太い声が聞こえ
同時に、盛大な笑い声やら悲鳴に近い声も聞こえてくる

「楽しそうだな…」

そんな中、俺は廊下から聞こえる楽しげな声に耳を傾けつつ
1人自室に篭って書類整理をしていた

我がMSFの今月のイベントは、ハロウィンだ
本来は、子どもが仮装して菓子をねだって練り歩く行事だが

『たまには健康的な行事をしようじゃないか!』

という、イベント大好きな副指令であるカズの一言で
今月は、朝から大の男たちが仮装をして練り歩くということになったらしい

まぁ、どうせ夜にはいつものバカ騒ぎな飲み会と化すことは目に見えている

しかし、セシールやアマンダ、意外なことにストレンジラブ博士も大いに乗り気になり
彼女達を中心とした女性陣により、衣装もかなり本格的なものに仕上がっている

『ボスの衣装も作ったのに…狼男とか似合うわよ?』

と残念そうなセシールを振り切り、処理しなければならない書類が溜まっていると言い訳して俺は何とか参加を免れた

だって、あれだ
ハロウィンといえば、絶対にいる

吸血鬼の仮装をするやつが
1人とは言わず、10人…いや、30人くらいは

決して、吸血鬼が嫌いとか苦手なわけじゃない
ただ、その姿を見れば、その晩悪夢にうなされそうだからできる限り見たくないのだ

この日のために、カズの鋭い視線とお説教に耐えて書類を溜めた
そのおかげで、近日中に仕上げなければならない書類が今日一日で処理できるかどうかといえる量まで溜まった

『まったく…アンタはどうしてこう計画性がないんだ?これじゃあ、昼間の仮装に参加させるわけにはいかないな』

ちょっとしたお仕置きのつもりなのか、ため息をつきながらカズにそう言われ
むしろそれを狙ってたんだとは言わずに、残念そうな返事をしておいて部屋に篭った

「ボ〜ス〜、開けて〜」

そんなことを考えて、ちょうど半分くらいになった書類の束に手を出した時
コンコンと扉がノックされる音と同時に、聞きなれた声が聞こえてきた

「カズか?どうした?」

「トリックオアトリートー、というわけで開けて?」

どうやら、このみょうちきりんな行事の言いだしっぺが菓子をねだりに来たらしい

…もし、カズが吸血鬼の格好してたらどうしよう
一瞬そんなことを考えて、ゆっくりと扉を開けた

「ようスネーク、書類はかどってるか?」

けれど、扉を開けた先にいたカズは
予想をはるかに超えた格好をしていた

「…何だカズ、その格好は?」

満面の笑みで部屋に入ってきたカズの後姿を眺めながら、呆然としながら扉を閉めた

「ん?セシールが作ってくれたんだ。女装したらうけるんじゃないかって」

なかなかのモンだろ?とくるりと俺の目の前で回ってみせるカズ

その格好は、下手したら下着が見えてしまいそうなほどに白い短いスカートを、黒のレースが覆っていて
上は黒を基調とした、女性ならば胸を強調するであろうピタリとした衣装で、中央に白いラインが入っていてそこを黒いリボンが彩っている
さらに、その背中には黒い羽根がついていて、頭には黒いわっかが乗っかっている
何より、スカートから伸びる白い足が、黒い網タイツで覆われていて
膝付近まである黒いブーツを履いている

いわゆる、ゴシック系の天使の衣装だった
しかも、その手には黒いバスケットを装備している

目の前のカズの格好に、クラリと眩暈がした
いろんな意味で

「お前…副指令がそんな格好…」

「え〜?結構うけいいんだぞ?みんな笑ってくれるし」

そりゃ、いい年した野郎がそんな衣装着てニコニコしてたら微笑ましくもなるわ
何より
ちょいとごついが、妙にその姿が似合っているのもきっと笑いを誘う要因だ

あれか、金髪碧眼の顔立ちが整ってる奴は何着ても似合うのか?
世の中そういう風に出来ているのか?
俺なんかがその衣装着たって、きっと失笑を通り越してドン引かれるぞ

そしてカズ、その笑いの中に不純なものもあると気づけ
そんなに足を晒すな、腕を晒すな、ぴっちりした衣装を着るんじゃない
というか俺以外にそんな姿晒すな。襲われたいのか?俺に

カズの主に腰から下をガン見しながら、混乱しきった頭でまとまりのないことを考える
カズはそんな俺の視線に気づいていないのか、机の上に乗っている書類をそこに両手を置いて眺めている

えぇい、そんな格好をするんじゃない
見えるだろう、色々と

「ちゃんと真面目にやってるみたいだな」

やっぱり俺の視線に気づいていないらしい今日は黒のビキニらしいカズが、俺のほうを振り返ってどこか満足げに笑った

「あ、当たり前だ…溜め込んでしまったからな」

どうにかそう返せば、カズはうんうんと頷いて、いつものように俺のベットに座った
いつも俺の部屋に来れば、カズはその場所に座る
たぶん、癖みたいなものなんだろう

今は、その姿が色々と刺激するわけだが

主に、俺の理性とか

「まったく…どうしてアンタはこういうイベント前に書類溜め込むかな〜?1ヶ月前から告知してあったろ?10月はハロウィンするって」

「いや…つい、な…」

ふらふらと、吸い寄せられるようにカズの隣に腰を下ろせば、さっそくカズは盛大に悪態と文句を言い始めた
俺はそれを話半分に聴きながら
カズの綺麗な鎖骨をちらちらと見ていた

「俺、アンタの仮装楽しみにしてたのに」

「ほう、カズはどんな仮装して欲しかったんだ?」

「そうだな…ミイラ男とか」

「それは、俺じゃなくてもよくないか?」

「冗談だよ…まぁ、アンタならどんな格好しても似合うと思うけど」

ふいっと、少しだけ照れたように笑ってカズは俺から視線を外した
その耳が、僅かに赤くなっていて

これはもう、食ってもいいという合図か?

「カズ…」

切れそうな理性のまま、カズに口付けようとその髪に手を差し入れようとした瞬間

「で、スネーク…トリックオアトリート!」

くるりと、狙ったかのようにカズは俺に顔を向け満面の笑みでそう言った

狙ってたならこいつは小悪魔だし、狙ってないなら天然だ
普段俺のことを天然だと何だというが、こいつも結構な天然だと思う

「何だスネーク?お菓子持ってないのか?」

黙り込んでしまった俺に、カズは俺が菓子を持ってないと勘違いしたらしく
ニヤリと、いたずらっ子のような笑みを浮かべた

「ないなら、いたずらしちゃうぞ〜?」

わきわきと指を動かし、実に楽しそうな顔をするカズはどこか得意げだ
どんなイタズラをしてやろうかと、頭の中で考えているに違いない

そのイタズラが性的なものなら大歓迎だが
こいつの場合、きっとそんなことは考えないだろうな

ニヤニヤと笑うカズに、ニヤリと笑い返してやり
その手に、カズの好物であるドリトスのナチョ・チーズ味を握らせてやる

「ほら、お菓子だ」

手に握らされたものと、俺の顔をポカンとした表情で見比べた後
カズは、残念そうにため息を吐いた

「なんだ…お菓子持ってたのか…」

せっかく、イタズラしてやろうと思ったのに…と心底残念そうに呟きながらも
ちゃっかりと、持っていたバスケットにドリトスを入れた

「なんだカズ、そんなに俺にイタズラしたかったのか?」

「正直、アンタがお菓子持ってるとは思わなかったしな」

「俺だって、ドリトスくらい食うさ」

「だよな〜…まぁいいや、サンキュースネーク」

「何だ、もう行くのか?」

そういって立ち上がろうとするカズの腕を取って、もう一度ベットに座らせる
カズは不思議そうな顔をしながらも、大人しくベットに座りなおした

「何だよスネーク…他にもまわりたいんだよ、衣装着てアンタのとこ最初に来たからまだ他の奴のとこ行ってないし」

そういわれてみれば、カズの持っているバスケットの中には、俺がやったドリトス以外入ってない

これは、チャンスかもしれない
それに、恋人としてはこんな格好をしているカズを他人に見せたくはない

「カズ、トリックオアトリート?」

ニッコリと笑ってそう言ってやれば、カズはポカンとした様子で俺を見た

「何だ?俺もハロウィンを楽しんだらいけないのか?」

「いや…そうじゃないが…じゃあ、はい」

そうは言っているものの、不満げな表情を隠そうともせずにカズはさっき俺がやったドリトスを差し出した

甘いな、カズは
俺が、たかがドリトス1個を取り返すためにそんなことを言うと思うか?

「そりゃ俺がやったやつだろ?お前からの菓子が欲しい」

「え〜…俺コレしか持ってないんだけど…」

「なら、イタズラだな」

ニヤリと笑ってやり
油断しきっているカズの背中に腕を回し、今度こそ口付ける

「んむっ…んー!」

ポカポカと背中を叩くカズを無視して深く口付けながら、背中に付けられた羽と頭のわっかを取り外す

さすがに、みんなが一生懸命作った衣装を壊すわけにはいかないからな

その2つを外して床に放り投げてから、可愛らしい天使をベットに押し倒す

今日は、聖なる祭典だ
そんな日に、とびきり美人な天使と楽しむのも悪くない
幸いなことに、今日は書類整理に集中するといってあるので、イベントに夢中な他のやつは入ってこないだろう

いつの間にか、天使も俺にすがってきていることだし

ぬるりと舌を絡めながら、網タイツに覆われた太ももを軽く撫で、爪先で軽くひっかいてやる
あっさりと破れたタイツの隙間から、すべすべとした肌が覗き、指先でその感触を楽しんでいると、首を振ってどうにかキスから逃れたカズに睨まれた
そんなに睨んでも、俺には可愛くしか見えないんだがな

「は、ぁ…ちょ、タイツ破るな、って!」

「網タイツは破るものだろう?」

「それは、アンタだけ…ぁ、やっ…そんなとこ、触るなっ」

「どうしてだ?ここが気持ちいいんだろう?」

「や、ぁっ…も、やめっ…」

「何を言う、コレからが本番だろ?」

「も、変態っ、んやぁっ」

「そんな格好して俺のとこ来るお前が悪い」

「だ、て…ぁ、ん…」

それから夜までの時間、とびきり美人で可愛い愛する天使との甘い時間を楽しんだ



トリックオアトリート!



すっかり日も落ちた頃、ようやく俺から解放された天使によって
次の日、盛大な仕返しをされることを、その時俺は知る由もなかった
















リクエスト【女装カズでネイカズ】でした!

さて、普通に女装させようとすると以前書いたみたいな話になるし
どうやってカズに女装させようと考えていたところ
ちょうどハロウィン近いし、カズに女装の仮装をさせよう!と思い至り
何かこう、間違ったものが出来上がりました…
ハロウィンコスサイトで見た、魔女系天使の衣装をどうしても着せたかったんです

しかも、女装カズにスネークが手を出さないわけはない!
という精神で、最後がシモくなりました、マジすみません(土下座)

リクしてくださった方のみお持ち帰り可能です
こ、こんなんでよろしいでしょうか!?
返品とか、苦情とか、お気軽にお申し付けくださいませ!!
リクエスト、ありがとうございました!

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