初調教は物置部屋で・2



「入れ」

部屋の扉を開け、カズに入るよう顎で促す
けれど、カズはどこか微妙な表情をしながら俺をチラリと見るだけで足を進めようとはしない

「入れといっている」

まるで俺を拒絶するようなその仕草に苛立ち
カズの腕を取って力任せに引っ張り込み
その勢いのまま、ベットに放り投げる

「わっ…」

とっさに受身をとったカズを逃がさないようにその体に覆いかぶさる
カズの目が、怯えたように俺を見上げてくる

その目に、ゾクゾクと暗い愉悦が背筋を走りぬけた

「お前は本当にどうしようもないな、カズ」

小さく笑いながらカズの目を覗き込めば、怯えと混乱を含んだ蒼い瞳が見返してくる

あぁ、その眼をもっと歪ませたい

「女だけじゃ飽き足らず、男にまで手を出すなんて」

その欲求のままに優しく、けれど侮蔑を含んだ声で笑ってやれば
カズは泣き出しそうな顔で唇をかみ締めた

あぁ、いい表情になってきたじゃないか
もっとその表情を見せて、歪ませてくれ

「本当に、カズは節操なしだな」

けど、予想に反してその言葉に
カズの怯えた目が力を取り戻し

「俺がどこで誰と何をしようと、アンタには関係ないだろ!」

かみ締めていた唇が、まるで俺を拒絶するように、そう叫んだ

「ほぅ…?」

まだ、そんな口がきけるほど余裕があるようだな…

なら、もっと酷くしても大丈夫だよな?カズ

顔を真っ青にしたカズが何かを言おうと唇を開く
その言葉すら奪うように、強引に口付ける

「んんー!」

熱い舌を突っ込み、先ほどのオポッサムの痕跡を消すように口中を強引に掻き回してやれば、スカーフに覆われたカズの白い喉から驚いたような声が上がる

あぁ、そのスカーフは邪魔だ

そう思い、結び目に指を突っ込んで力任せに引っ張れば多少の抵抗と共にそれが外れ
白い喉と首が露になる

ここにも、あの男は触れたのか?
俺以外の男に、この白い喉を晒したのか?

ズグズグと腹の中から黒くて熱いものがこみ上げてきて
その白い喉に、加減なしに噛み付いた

「い、たっ」

その瞬間、カズの口から声が漏れ噛み付いた場所から僅かに血が滲む
幾度もその白に噛み付いて赤を残し、その場所を舌でたどる

他の男の痕跡なんか、消してやる
忘れてしまえばいい、俺以外の男のことなど

「邪魔だ」

喉と同じくらい白い体を隠す野戦服の合わせ目を、両手でしっかりと握る

愛情と快楽だけでは、お前が俺から逃げるというのなら
痛みと恐怖で、縛り付け支配してやる

そのまま、力いっぱい引き裂いた

布が裂けるような不快な音と、糸が千切れる音
そして、弾けとんだ釦が床に散らばる音が部屋に響く

それと同時に、カズの顔が恐怖で歪む

その顔が、酷く暗い欲情をそそる
シャツを捲り上げて胸の飾りに噛み付けば、怯えた眼をしたカズが俺を制止しようと頭を必死で押してくる

「ちょ、やだ!スネーク!!」

だが…笑えるぞカズ
そんな力の入ってない腕で
そんなに震えている手で
俺から、逃げられると思っているのか

「何だ、カズ…ここじゃ物足りないのか?」

「ち、違っ…スネーク、今日おかしいって!」

「俺は普通だ…」

「普通じゃない!おかしい…怖い!」

完全に怯えきり、今にも泣き出しそうな表情のカズに笑い出したい気持ちになる

そうだ、もっと怯えろ
その怯えた目で俺を見ろ
俺だけを見ていろ

俺だけを、その心に映していろ

「黙れカズ」

軽く睨みつけてやりながら、ベルトを抜き去り下着ごとズボンを強引に剥ぎ取る
震える体は抵抗らしい抵抗もせずに俺の行為を受け入れ
酷く怯えた瞳が、俺の一挙手一投足を眺めている

いいぞ、その眼でもっと俺を見ろ

そのまま腰を抱え上げ
何の準備も出来ていない後ろに、強引に指を突っ込んだ

「い、たっ!」

その瞬間、カズの声から綺麗な悲鳴が漏れ
全身が、痛みと恐怖に緊張する

指先を飲み込んだだけのソコも、俺を拒絶しようと必死で俺を締め付ける
それを無視して力任せに指を突っ込めば、面白いほどに体が強張る
何も付けずに突っ込まれればそりゃ痛かろうと、どこか他人事のように思いながら指をぐにぐにと動かした

「イヤだ!痛い、痛いスネーク!!」

その瞬間、カズの口から絶叫とも言える叫び声が漏れ
恐怖に怯えきった瞳から、まるで決壊したかのように涙が溢れ出した

ボロボロと零れだした涙に
初めて聞いた、カズの怯えたような泣き声に
すぅっと、頭の奥が冷静になっていく

…今、俺は何をしようとした?
俺は、カズに何をした?
カズに、何をしようとした?
プライドが高くて意地っ張りで、負けず嫌いなカズが泣き出すほどの恐怖と痛みを与えて
俺は…何をしようとした…!?

思考が冷静になると
俺がさっきまでしようとしていた行為に
恐怖を与えてしまったという事実に
すっと肝が冷え、手が震えだす

これは…これじゃあ、ただのレイプだ
カズの意思を無視した独りよがりな、自慰行為でしかない最低の行為だ
傷つけたくなかったのに…優しく、愛してやりたいのに
快楽と愛情だけを与え、ぐずぐずになるまで溶かしてやりたかったのに

俺がカズとしたいのは、セックスだというのに

これは、カズの心を手に入れるためには
一番してはいけない行為だ

「イヤだ…いやだぁ…」

「カズ…」

徐々に弱弱しくなっていく泣き声に、慌てて指を後ろから抜いて
震える声を誤魔化して、出来る限り優しい声で名前を呼んでやる

カズの怯えた瞳が、ゆっくりと俺を映す
その恐怖に支配された、拒絶するような瞳に映る俺はずいぶんと情けない顔をしている

「すまない…カズ…」

その恐怖を少しでも和らげてやりたくて
少しでも、その眼から怯えを取り去りたくて

震える唇に、触れるだけのキスをした

とろりと、恐怖に怯える瞳が溶けて
安堵感がゆっくりと満たしていく

「バカスネークっ、バカスネークっ」

先ほどとは違う涙を流しながら、ボカボカと俺の胸を殴るカズの髪をゆるりと撫でる

本当なら、行為を中断してやるのが一番いいんだろう
詫びて許しを乞い、たっぷりと甘やかして抱きしめるだけにとどめておいたほうがいいに決まってる

けど、どうにか頭は冷静になったけど
腹の中で暴れまわる、黒い感情は消えてはくれない

他の男の痕跡を消したいという欲求には、逆らえそうにない

「悪かった…ちゃんと、気持ちよくしてやるから」

それならば、出来るだけ気持ちよくしてやろう
痛みと恐怖で縛り付けるんじゃなくて
愛情と快楽で、上書きしてやればいい

泣いたせいで赤く染まった目元をちゅうっと吸ってやり
指にローションをたっぷりと絡め、ゆっくりと擦り付けるようにしてから後ろに入れる

「っ…」

その瞬間、カズの体がかわいそうなほど強張った

「大丈夫だ、もう痛くない…だから、力を抜け」

そうは言ってみるものの
一度酷い痛みを経験した体は、どうにか指を押し戻そうとぎゅうぎゅうと締め付けてくる

「カズ…大丈夫だ、大丈夫」

「やっ…むりっ」

「痛くないだろう?」

「でも、無理だっ」

カズ自身も、痛みを完全に警戒しきっていて、とても快感を感じられる状況じゃなさそうだ
ぎろりと睨みつけてくるその瞳に苦笑を返し、ゆっくりと体の位置をずらす

「スネーク…?」

「言っただろ?ちゃんと気持ちよくしてやると」

後ろが痛みに警戒しているというのなら
男なら誰でも気持ちいい場所から快感を与えてやるだけだ

「やぁぁっ…」

まだ何の反応もしていない性器の先端を舌でぬるりと舐めると、内股がふるりと震え
口から可愛らしい喘ぎ声が漏れる
そのままぬるぬると舌を這わせ、ちゅうっと先端に吸い付けば、ふるふると震えながら勃ち上がっていく

それを口に含めば、たまらないといった声と共に腰がビクリと跳ねた

「や、やっ」

「は…気持ちいいか?カズ?」

一度口を離し、敏感な裏筋を舌で辿りながらカズを見上げれば
さっきまで恐怖に染まっていた瞳が、快感と羞恥心に染まっていて
震えていた唇からは甘い吐息が漏れている

その表情に、満足感と安堵感が胸の奥に広がって溶けていく
やはり、痛みに歪んだ顔よりこちらのほうがずっといい
恐怖に染まった瞳より、快感に溺れる瞳のほうが、ずっと綺麗で気持ちいい

見られるのが恥ずかしいのか、カズは腕を交差させて顔を隠してしまう
その仕草すら、どうしようもなく俺を煽る

「…気持ちよさそうだな」

少しだけ笑って、もう一度快感に震える性器を口に含む
舌を絡め、吸い付いてやりながら
前から与えられる快感に夢中になり、すっかり警戒心を解いた後ろの中に埋めていた指を動かす
指先が覚えている気持ちいい場所を撫でてやれば、頭の上から甘い声が漏れて
ソコがきゅうっと、先ほどとは違い誘うように締まる

「あ、あぅっ…ふ、ん…」

トロトロと漏れる先走りを舐め取って飲み込みながら
指を増やして気持ちいい場所を刺激してやれば、ふるふると内股が震えだす

「も、放し…イく、からっ」

顔を覆い隠していた手が、俺の髪をくしゃりと掴んでそこから引き剥がそうとする
けれど、あまり力の入っていない腕では、まるで誘っているようにしかとれない
チラリとカズの顔を見上げれば、快感と羞恥心に潤んだ瞳が俺を見ていて

「あぁっ」

たまらなくなって、先端を吸い上げながら中を強く刺激してやれば
可愛らしい声を上げて、カズは俺の口でイってしまった

「うぅ〜…」

ソレを飲み下して見せれば、カズの顔が一気に羞恥心に染まり
泣き出しそうな顔で、俺を睨みつけてきた

「あまり恥ずかしがるな…コレからが本番なのに」

そんな煽るような表情をしないで欲しい
我慢が、きかなくなる
そんな感情を抱えながら、その白い額に唇を落とした



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