君の知る美しい世界の片鱗を



土煙に霞む視界、銃声と悲鳴、火薬と硝煙と血の匂い
一瞬の油断も許されない、常に死と隣り合わせの場所
殺さなければ、殺される
そんなことが、当然のようにまかり通る戦場
それが、俺の知っている世界
俺にとっての、当たり前の風景
そこでしか生きられないと自覚していたし、そこ以外で生きるという気もしなかった
だからせめて、自分の意思で戦うことが出来るように
誰の思惑にも振り回されず、自分のためだけに戦うことが出来るようにと
ただ、それだけを考えてこの10年を過ごしてきた
それだけで精一杯で、世界が美しいなどと思ったことはなかった
いや、世界が美しいかどうかなんて、考えたこともなかった
いままでもずっとそうだったし、それはこれからも変わらないと思っていた

けれど、カズと出会ってから少しだけ、本当に少しだが俺の世界が変わった

「見ろスネーク、天の川だ!綺麗だな〜」

今まで方角を知るためにしか見ることのなかった星空を見上げれば、まるで宝石のような星が輝いていた

「男所帯で無駄にむさっくるしいからな。たまには花なんてのもいいだろう?」

数え切れないほど踏み潰してきた花は、思ったよりずっと愛らしい色と形をしているのだと気が付いた

「スネーク…夕日が綺麗だ」

いままで気にした事のなかった夕日は、まるで燃えるように赤いのだと知った

「おぉ、雲一つないな。今日もいい天気になりそうだ」

カズが見上げた空を同じように見上げれば、透き通るような青色をしていて
あぁ、空はこんなにも青いのだと
そんな簡単なことに、生まれて初めて気が付いた

星も、花も、夕日も、空も
今まで数え切れないくらい見ていたのに、こんなにも美しかったのかと密かに驚いた
そして世界は、俺が思っていた以上に美しいものなのだと、この年になって気がついた

「カズ」

「ん?何だスネーク」

俺はその美しい世界の中では生きられそうにないが
時折こうして、カズと共にその片鱗を覗くのは悪くない

「いや…今日も晴れそうだな」

「ん?あぁ、そうだな。空が青い」

美しい世界を知るカズと、こうして同じ世界を眺めるのは
中々いいものだと、綺麗な空を見上げながら思った
















醜くも美しいこの世界で、というタイトルでなんか書きたいと思った名残
いつかきちんと形にしたいタイトル

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