君に会いに行こう



もしも俺が先に死んだら、あの世へいく前に会いに行くよ

まだ若かった頃、戯れにした約束
互いにそう言って、小指を絡めあって笑った
行為を終えた後の、睦言の延長
本来ならすぐ忘れてしまうはずの、小さな言葉

あれから随分時がたった
俺達は互いに道を別ち、そしてアンタは死んだ
あの頃とは別の人間をサポートしていた俺の、無線の向こう側で炎に焼かれて死んだ
俺よりも先に、アンタが死んだ

「…嘘つき」

けれど、アンタは来なかった
夢なら、数え切れないほど見た
けど、目が覚めれば自然とわかってしまう
夢の中のアンタは、俺の記憶が作り出した幻
アンタの魂は、俺の側にはいない

そのことが、悲しかった

誰にも、アンタにすら言えなかったけれど
その小さな約束を、俺はずっと信じていた
そんな戯れでしかなかった言葉が、俺の心の支えだった

だって
これほどの時間がたっても、互いに道を違えても
俺はまだ、アンタを愛している

「…嘘つき」

だから、俺は待つよ
死ぬまで、アンタを待つよ
幸福な幻想にしがみ付きながら、ずっとずっと待ち続ける
幻想が続く限り、俺はアンタを愛し続ける

ただ、夢に溺れながらアンタを待ち続ける







「いい天気だな」

「あぁ、そうだな」

風もほとんどなく、穏やかな日
カズと2人、マザーベースの甲板に寝転んで、空を眺める
真っ青な空の中、ぽっかりと浮かぶ白い雲
その雲を眺めながら、あの雲はあの形だ、いやあれだろうと互いに笑いあう
そんなどうでもいい事に、どうしようもない幸せを感じる

そんな穏やかな空間に、ざわりと風が吹く
それと同時に、心の中にどうしてかほんの少しの不安が生まれる
何かを忘れている気がする
何か、とても大切なことを

「カズ…愛している」

その僅かな不安を吹き飛ばすように、投げ出した手を絡めてそう告げる
けど、カズからの返事がない
不思議に思ってカズのほうへと視線をやれば、カズは上半身を起こしてどこか遠くを見ていた
その目は、どこか安心したような、それでいて悲しそうな
そんな、不思議な色をしていた

「カズ?」

「…時間だ、スネーク」

カズは俺を見ないまま、そういって立ち上がった
手を離したくなくて、カズと一緒に立ち上がると
ようやくカズは、不思議な色を湛えた瞳で俺を見た
それと同時に、穏やかだった風が強いものへと変わっていく

「時間?どういうことだ?」

「夢は終わりだ。アンタは行かなきゃいけない」

「カズ、意味が…」

「俺はちゃんと約束守ったからな、それだけ言っとく」

いつの間にか
目の前に立つカズが、随分と年を取ったような姿へと変わっている
その姿に、忘れかけていた何かが浮かび上がってくる

けど、それを思い出せば終わってしまう
何が終わるのかわからない、けどこの大切な空間が終わってしまう
それだけは、はっきりとわかった

「カズ、意味がわからない!」

終わらせたくなくて、そう叫んだ俺を、カズはその蒼い瞳をどこか愛しげに細め

「…目を覚ませば、わかるさ」

そう穏やかな声で言って、俺の襟元を強く引き寄せてキスをしてきた
触れたカズの唇は、温かくも冷たくもなかった

「愛していたよ、スネーク…死ぬまで、ずっと」

カズはそう言いながら、泣いているのにも関わらず満面の笑みを浮かべ
俺の体を、強く押した
その瞬間、世界が白く染まり思わず目を瞑った

―…さよなら、スネーク

その白い世界の中、遠くでカズの声が聞こえた

次に目を開けたとき
カズの言葉の意味も、俺が忘れていたことも、カズの言っていた約束も
何もかも、思い出した

穏やかで幸福な、夢と引き換えに

















というネタを考えてたけど、長くならなかったから小ネタ扱いで

ちなみにスネークに夢を見せていたのは、カズという設定
カズの作り出した夢の中で2人は一緒にいた、みたいな…
最後は、4でスネークが目を覚ました、みたいな感じで

何て言うか、死んだら会いに行くよ見たいなネタが書きたかっただけ

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