柚子と日本と風習と
−冬至の日、カズの私室にて
「なぁカズ、ちょっと聞きたいことがあるんだが…」
「何だスネーク」
「あの風呂に浮いてる、独特の味がする黄色い物はなんだ?柑橘類だというのはわかるんだが…」
「味って…アンタ、まさか食ったのか」
「香りはいいが、食うには少し酸っぱすぎるな。後少し苦い」
「…何で風呂に浮いてる物を食う気になるのか、俺は凄く気になるんだが」
「で、あれは何だ?何であんな物が風呂に浮いてるんだ?」
「聞けよこの野郎。あれは柚子だ」
「ユズ?」
「アジアでよく食用なんかに使われる柑橘類だ。寒さに強く極東と呼ばれる日本でも自生できる数少ない柑橘類で、生産も消費も日本が世界最大だ」
「ほう?だが食うには向いていないと思うんだが」
「オレンジみたいに直接食うわけじゃない。果汁を料理の味付けや風味付けに使うんだ。皮も香りが強いから、香辛料や薬味によく使われる」
「なるほどな。確かに独特の香りがした」
「そのまま食べるなら、薄く切って砂糖付けにすると菓子みたいになって美味い。韓国ではマーマレード状に煮込んだものを水や湯で薄めて柚子茶と呼び、韓国伝統茶の一つとして扱っている」
「なるほどな…で、その柚子が何で風呂に浮いてたんだ?」
「あぁ、日本の風習だ。冬至の日にはカボチャを食べ、風呂に柚子を浮かべて入ると風邪を引かないと言われている」
「トージ?何だそれは」
「日本や中国の暦の一つさ。詳しく話すと長くなるからなぁ…そうだな、簡単に言えば北半球で一番昼が短い日のことだ」
「ほう?で、なぜトージにはカボチャを食ってユズ湯に入るんだ?」
「いや、俺もあまり詳しくはないが…冬至は一年で一番昼間の時間が短いんだ。それを昔の人は、太陽の力が一年で一番弱まる日と感じていたんだ」
「ほぉ…」
「だから北半球では、冬至やその前後に何かしらを食べたり、冬至が無事過ぎた祭をする風習がある国や地域が沢山あるんだ。クリスマスも起源はこの冬至祭にあるという話がある」
「それが日本では、カボチャとユズというわけか」
「日本じゃ、この季節は風邪を引きやすいからな。栄養価の高いカボチャを食べ、柚子湯で体を温めて風邪を予防しようということだろう」
「だから今日の夕食はカボチャ尽くしだったのか」
「あぁ、あれだけの量のカボチャを仕入れるのは意外と大変だったんだぞ」
「まさか、シャワールームにもユズ浮かべてあるのか?」
「え?あぁ、浴槽付きの方と、サウナの水風呂に浮かべといたけど…」
「誰かが食っても知らんぞ?」
「安心しろ、風呂に浮いてる物を食うなんて意地汚いやつはここにはアンタしかいない」
「そういや、何でお前の部屋の風呂にもユズが浮かべてあるんだ?浴槽付きのシャワールームに浮かべたならそれでいいじゃないか」
「スルーかよ。いや…俺の部屋の風呂に浮かべてあるやつ、ちょ〜っといいやつなんだよねぇ〜」
「カズ…お前また職権乱用したな?」
「いいじゃないか、俺頑張ってるんだしご褒美だよ。ちょぉ〜っといいやつなだけだし」
「お前のちょっとは信用ならん」
「スネークのケチ」
「この前ちょっととか言って、馬鹿高い私物を職権乱用して手に入れたのはどこの副指令殿だったかな?」
「あれはあれ、これはこれ」
「はぁ〜…お前なぁ…」
「さてと、それじゃあ俺も柚子湯であったまるとしますか」
「…カズ、俺も入る」
「え?アンタさっき入ってきたんじゃ…」
「実はシャワーしか浴びてない。風呂に不思議な物が、ユズが浮いていたからな」
「いや、入るの警戒するなら食うなよ。普通逆だろ」
「2個しか食ってないぞ?」
「しかも2個も食ったのかよ…美味くないなら一口でやめとけ」
「いや、個体差かと思ってな」
「…アンタは飢え死にだけはしない気がする」
「そうか?そう褒められると照れるじゃないか」
「嫌味だ嫌味。というか一緒には入らないからな」
「どうして?トージにはユズ湯に入るんだろう?」
「別に一緒じゃなくても…浴槽、狭くなるし」
「俺は気にしないぞ」
「俺が気にするの!」
「俺は一緒に入りたいんだが」
「………」
「なぁカズ、一緒にユズ湯に入らないか?」
「…今日だけ、特別だからな」
「そうか!」
「冬至には、柚子湯に入るものだからな」
「日本には、いい風習があるものだな」
いつものことですが、オチを見失いました
冬至なので、カボチャと柚子湯ネタを書こうとしたのですが
集会所のジンオウガさんと戯れている間に時間がなくなりました(コラ)
なので、せめて小話をば
このあと2人は風呂場でイチャイチャにゃんにゃんしながら冬至を満喫すると思います(冬至関係ない)
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