何故に俺が花嫁様!?



「最悪だ…」

俺は今まで着たことない服に身を包みながら、ある男を待っていた

事の起こりは数ヶ月前
今まで顔も名前も知らなかった、父親と名乗る男が俺の前に現れたことから始まる

2年ほど前に、長い闘病生活の末死んだ母親が、どこぞの貴族の愛人だったということは知っていた
結構な額の治療費が毎月振り込まれていたから、きっと相当な金持ちなのだろうとは思っていたが

けれど、まさかそれがこの国では名前を知らないものはいないというくらい有名な一族の人間だとは、露ほども思っていなかった

今更父親面して何の様だ
母さんが生きていた頃は、金しか出さなかったくせに

そういってやりたかったが
俺の立ち上げた会社に、何かしら利益になるかもしれない

そう思い、食事に行ったことが間違いだった

生まれて初めて会った父親は、俺にあることを要求してきた

それは、あまりにも非常識で、考えられない要求だった

『ふざけるな!そんなこといきなり言われて、はいそうですか、なんて言えるか!!』

その場で父親に水をぶっ掛けて、俺は急ぎ足でその場を去った

後で話を聞いたところによると、どうやら俺は本来その役目を背負っていた顔も知らない兄が急死したことによる代役だということらしかった
それを聞いて、ますます腹が立った
今更俺に関心を向けた理由はそれか、と、ほんの少しだけ虚しくなった
会社のためになるかもしれない、とホイホイ会ったのが間違いだった

それを、強く実感させられたのはそれから1月もたたない頃
俺の会社が、乗っ取りにあった
まさに、あっという間だった
それほど経験を積んでいなかった俺は、何もすることができず、ただされるがままだった

誰の差し金かは、想像がついた
あんな無茶な欲求をしてきた、俺の父親と名乗る男だ

案の定、それからすぐそいつがやってきて
俺に、交渉という名の脅迫をしてきた

俺の会社にいたスタッフを、乗っ取り主の会社のスタッフとして雇うこと
望むなら、別の会社への転職を援助すること

それを条件に、俺は親父の欲求を飲んだ

「最悪だ」

俺はもう一度呟き、己の格好を見た
真っ白な衣装…女物の婚礼衣装に身を包み、ある男の到着を待っている

「…待たせたな」

そして、ようやく到着した会いたくなかった待ち人を
俺は思い切り睨んでやった

親父が俺にした欲求
それは、親父の一族の本家直系のこの男
黒い婚礼衣装に身を包み、眼帯で右目を覆い
左の蒼眼で、真っ直ぐに俺を見据える男

一族のしきたりに従い
この男の妻となることだった














何にハマってもやりたくなる、結婚パロディ
設定的には、星/野リリ/ィ様の花/嫁/さ/んに近いです
というか、この話が大好きでパロりたくてしょうがないのです

別名・威嚇する子猫のようなカズを懐かせるスネークの話(笑)


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