愛する人と愛しき人・1



「ん…ボス…」

「カズ…」

くちゅりと、唾液が絡み合う音が司令室に響く
その音が耳に響いて、頬が熱くなるのを感じた

ただ、新兵たちの訓練内容についての書類を届けにきただけなのに
ボスは、部屋に俺が入ったとたんに濃厚なキスを仕掛けてきた

どうやら、盛りたい気分だったところに俺がきてしまったらしい

「ボス…俺は、こういうことをしにきたんじゃないんだが…」

「俺はしたい」

かぷり、と首筋に軽く噛みつかれ、そう囁かれては思わず流されそうになってしまう
けれど、ここは司令室だ
いくら俺たちが恋人同士とはいえ、さすがにここで事に及ぶのはまずい
いつ、誰がこの部屋の主であるボスを訪ねてくるともわからない

「なぁ…後じゃダメか?部屋でゆっくりと…」

「俺は今欲しいんだ」

けれど、こうなったボスが決して行為をやめてくれないというのも、長年の付き合いで嫌というほど把握している

再びねっとりと絡みつく舌に、腰がずんっと重くなる
こうなってしまえば、俺に抗うことはできない

「いい子だ、カズ」

身体からくったりと力を抜いた俺に、ボスはにやりと妖艶に微笑むとソファーに俺の身体を横たえた

「ん…」

ちゅっと音を立てながら首筋にキスを落とし、ぬるりとした舌がこそを這う
その動きに気をとられているうちに、ボスは鮮やかな手つきでシャツのボタンをはずし、その下のタンクトップをたくし上げた

「ぁ…」

するりと、優しく…でもこれからの行為を連想させるように腹筋を撫でる無骨な手に、この先の快感を想像して身を震わせた

―コンコン

その時、部屋の重厚な扉をノックする音が響いた

「いいところなのに…」

その音に、ボスは首筋から顔を上げて忌々しげに呟いた
俺も、ここまで高められた熱を中途半端に終わらせるのは惜しいが、来客ならば仕方ない

「ボス、来客だ…離してくれ」

ボスの肩を押し、どくように促すが何故かボスは動こうとしない

「ボス?来客だぞ?」

不思議に思って、ボスの顔を覗き込むと
ボスは、厭らしい笑みを浮かべて俺を見ていた

嫌な予感がして、ボスの下から這い出ようとした瞬間
絶妙な力加減で胸の飾りを摘まれた

「ぁっ」

「誰だ」

急に襲い掛かった快楽に思わず声を上げてしまったが、ボスはいつもの威厳たっぷりの声で扉の向こうに話しかけた

な、なに考えてんだボス!

そう怒鳴ってやりたいけど、憎らしいくらい余裕名この男は、くにくにと一番気持ちのいい力加減でそこを弄繰りまわす
きっと、口を開けば文句より先に喘ぎ声がでてしまう

こいつ…わかっててやってるな!

ボスをチラリと見ると、余裕たっぷりの表情で笑っている
ちくしょう…余裕ぶりやがって

ボスを睨みつけていると、扉の向こうから返事が返ってきた

「ボス、ソリッド・スネークです」

「ソリッド?」

扉の向こうにいたのは、HOXHOWNDの新兵であり、俺を組み敷くこの男の遺伝子的な意味での息子
そして、俺の愛する教え子であるソリッドだった

「ボ…ボス、頼む…離して、くれ…見られたく、ない…」

ボスの胸を軽く叩いて、離せと欲求する
可愛い教え子であるソリッドに、万が一でもこの姿を見られてしまったら
考えただけでも、羞恥と罪悪感が胸に押し寄せる

ソリッドをそういった意味で愛してるわけではないが、愛しい人間であることには変わりない

だが、ボスはその言葉がお気に召さなかったらしい
さっきまでの笑みを引っ込め、眉間に盛大に皺を寄せた

「入れ、ソリッド」

「ボス!?」

「見せ付けてやればいい…お前のその、厭らしい顔を」

文句を言おうと開いた唇に、ボスのそれが重なる
文句も吐息も、全てボスの舌に絡め取られてしまう

「失礼します、ボス…書類を…」

入ってきたソリッドは、俺たちを見て表情を凍らせた

それはそうだろう
自分の組織の司令官が、教官を組み敷いて
なおかつ、濃厚に口付けているのだから

「書類なら、そこにおいて置け…見てのとおり、私は忙しい」

「ふぁ…い、やぁ…」

唇を離したボスは、ソリッドを軽く睨みながら、俺の身体を弄り続ける
こんなみっともない姿を見られたくなくて、いやいやと首を振るも
ボスは俺の身体を弄るのをやめてくれない

「いや、ぁ…みる、な…ぁ、ソリ…ドォ…」

その瞬間、ボスが首筋に噛み付いた

「あぁっ」

「聞こえなかったのか、ソリッド?私は忙しい、書類を置いてさっさと出て行け」

どうやらボスは、俺がソリッドを気にしているのが気に入らないらしい
20年近く共にいるが、この男の独占欲の強さには本当に困る

けれど、ソリッドは動こうとはしない
予想外の光景に、固まっているのか
それとも、何か意図があって動かないのか

俺としては、早くこの場から立ち去って欲しい
こんなみっともない姿を、あまり見て欲しくない

「それとも…お前も混ざるか?ソリッド」

いつまでたっても動かないソリッドに焦れたのか、ボスはにやりと笑いながら手招きをした

その瞬間
ソリッドの瞳が、肉食獣のそれに変わった
その瞳は、出会ったばかりの頃
まだ若かった頃のボスと同じだった


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