Happy Life


まだ幼かった頃
俺には小さな夢…願いがあった

それは、幸せな家庭を、愛する家族を作ること

お世辞にも暖かいとは言いがたい家庭で育った俺には、それは憧れであり幸せの象徴だった
愛する妻、愛しい子ども達、暖かな家族、安らげる我が家
大きくなったら、自分はそんな家庭を築くのだとひそかに夢見ていた

その夢は、子どもと呼べる年でなくなっても、平和とは程遠い職についても
ずっと持ち続けていた




「ただいま」

珍しく仕事も早く終わり、足早に帰ってきた我が家
玄関の扉を開ければ、おかえりの声の代わりに子どもの怒鳴りあう声と泣き声交じりの声が聞こえてきた

「またやってるのか、あいつらは…」

もはや日常と化しつつあるその声を聞きながら、声のするリビングに足を向けた

「あ、お帰り父さん」

リビングに入った俺に最初に気づいたのは、ソファーに座っていた長男のソリダス
読んでいた本から顔を上げると、とことこと嬉しそうに近寄ってきた

すぐ側で、弟達が取っ組み合いの喧嘩をしているというのに

どうやら、下の双子…リキッドとソリッドは殴りあいに夢中で俺が帰ってきたことにも気づいていないらしい

「あー…あいつら今日は何が原因で喧嘩してるんだ?」

わしわしと銀色の髪を撫でながら、嬉しそうに目を細めるソリダスに問いかける

「あぁ、どちらが先にテレビのリモコンを取ったか…だったか?」

あぁ…それはまぁ見事に…

「くだらないな」

「あぁ、非常にくだらない」

なら止めろよ、と思わないでもないが
この兄が弟達の喧嘩を止めようとしていることを、一緒に暮らし始めてから一度たりとも見たことがないのを思い出し、ため息を吐いた
そもそも、この双子はとてもくだらないことで喧嘩を始めるので止めても無駄だと思ってるのかもしれない

「そういえば、カズとフランクは?」

双子がこれほどド派手に喧嘩をしていれば、普段はどちらかが止めに入るはずなのに
コレほど大きな音を立てても止めに来ないということは、2人とも出かけているのだろうか

「夕飯の買い物に行っている」

「…2人でか?」「あぁ、今日はご馳走にするといって、張り切って出かけて行った」

ぐぐっと、眉間に皺がよるのがわかる
いや、ただの買い物だとはわかっている
同居人と夕飯の買い物に行っているだけだとわかってはいるんだ
それでも、愛する人が他の男と2人きりで出かけることにいい気はしない

「…父さん、男の嫉妬は見苦しいぞ」

そのことに気づいたらしいソリダスが、まるで哀れむような目で俺を見ている

「スネェェェェェェク!!!」

「リキッドォォォォォ!!!」

さて、そうしている間にもどんどんと双子の喧嘩がヒートアップしている
もはや、喧嘩ではなく死闘レベルだ

派手に音を立て、殴り合いを続ける弟達を嫌そうに眺めたソリダスは
ソファーへと歩いていき、読みかけだった本を手に取った

「止めなくていいのか?」

「父さんが止めればいいだろう」

兄であるお前が止めたらどうだ?と言おうとしてやめた
この長男坊は、いたってマイペースなのだ

「帰ったぞ〜」

さて、長男が当てにならない今、いい加減父親として子ども達を止めなければと思っていると、玄関の扉が開く音と愛しい人の声が聞こえた

「お帰りなさいマスター!」

その瞬間、リキッドと殴り合いの死闘を繰り広げていたソリッドが一瞬でリビングから消えた
おぉ…凄いスピードだ

「おい兄弟!まだ決着はついていないぞ!!」

一瞬で消えた弟に呆然としていたリキッドだったが、はっと気がついたようにソリッドを追いかけようとし

「…なんだ親父、帰ってたのか」

ようやく、俺に気がついた

「あぁ、少し前にな」

ふーふーと荒い息を吐きながら長めの金髪をぐちゃぐちゃにし、服もボロボロにしたリキッドが近寄ってくる
ソリダスにしたように頭を撫でてやると、嫌そうな顔をするものの手を振り払おうとはしない
この次男坊は、どうにも素直でない

「あぁ、帰ってたんですかボス」

そのまま撫で続けていると、両手に買い物袋を提げた同居人のフランクがリビングに入ってきた
途端、リキッドがフランクに駆け寄る

「遅い!」

「はいはい、悪かったな」

「お帰りフランク、カズは?」

「そこでソリッドに少しお説教を」

「あぁ…」

リキッドがコレだけボロボロなのだ
おそらくソリッドも同じ状況なのだろう

「リキッド、またソリッドと喧嘩したんだろう」

「俺は悪くない、あいつが悪いんだ!」

ぶう、とふてくされるリキッドの頭を、フランクは困ったような笑みを浮かべながら撫でる

「でも、喧嘩したなら謝らないとな」

「いやだ、絶対に謝らない」

「ソリッドを殴ったんだろ?」

「あいつだって俺を殴った!だから謝らない」

「リキッド…」

「絶対に謝ってなんかやらん!」

きつく言ったところで、この頑固な次男坊は頑なになるだけだろう
フランクは、それをよく知っている

だが、リキッドは意地でも謝らないつもりらしい
さて、父親として何か言うべきか?と考えはじめると

「何だスネーク、帰ってたのか」

「おぉ、お帰りカズ!」

ようやく俺の恋人であるカズが入ってきた
何故か背中に、ソリッドを貼り付けて

「ほらソリッド、リキッドに謝るんだ」

「…………ごめん、リキッド」

カズの肩から顔を出したソリッドは、ものっすごく不本意です、という表情を隠しもせずに、でも声だけはしおらしく謝罪の言葉を口にした
うん、カズからは背中にいるソリッドの表情は見えないからな…

「ほら、ソリッドは謝ったぞリキッド」

「う〜………」

カズに謝罪を促されるものの、リキッドは嫌そうに唸るだけ
相当、謝りたくないのだろうな

いつまでたっても謝ろうとしないリキッドに、わざとらしくため息をついたフランクが、口を開いた

「…仕方ない、謝らないやつには買ってきたチョコはおあず」
「俺も悪かった、ソリッド」

言い終わらないうちに、リキッドはあれほど嫌がっていた謝罪の言葉をハッキリと口にした
何だかんだでフランクは、リキッドの扱いが非常にうまいのだ

リキッドが単純なだけかもしれんが

「よーし、仲直りしたな。えらいぞ2人とも!」

ソリッドを背中からおろし、わしわしと2人の頭を撫でるカズ
うむ、いい母親っぷりだ
何故か、ソリッドがリキッドを軽く睨んでいるのが気になるが

カズはそれに気づいていないのか、ニコニコと笑いながら2人の頭を撫で続ける
少しだけ、うらやましいと思ってしまった自分がいる

「よし、じゃあ夕飯の支度に取り掛かるか!」

これが、俺が作った家庭
俺の愛しい家族達

「マスター、夕飯の準備手伝います!」

「おぉ、それじゃあ手伝ってもらおうかな」

「フランク、チョコは!?」

「はいはい、今やるから」

「うるさい…」

愛しい妻は男
可愛い子ども達はある日いきなりやってきて
オマケにわけありの同居人までいて

幼い頃思い描いていたものとは少し…いや、かなりずれた家庭だが
それでも俺は、世界一幸せだと声を大にして叫びたい



Happy Life



ただ、末息子のソリッドがカズに少々…いやかなり懐きすぎなのが少し気になるところではあるが















俺得でしかない家族パロ
いろんなキャラ出して続けるつもりだけど、どうなるやら…

テケトーな設定
裸…ある日いきなり子持ちになったパパ、ギリギリ30代
カズ…恋人が実は子持ちだったママ(?)ピチピチ20代
狐…訳あって裸さんちに引き取られたもうすぐ20歳な好青年、リキッドの扱いがうまい
斜…裸さんちの長男。マイペースでプライドが高い12歳、パパ大好き
液…裸さんちの次男。頑固で単純な10歳、みんな大好きだが素直じゃない
固…裸さんちの末っ子。冷静だがちょっぴり天然な10歳、カズ大好きっこ

もっといっぱい考えてあるけどコレくらいで
増えたら設定集とか作ろうか
いや、コレ自体が俺得でしかないけど

それにしてもこのソリッド、カズ好きすぎる

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