スネにゃんとカズにゃんの話番外編〜ある暖かな日の話



ぽかぽかと気持ちいい日差しの中を、1匹の猫が尻尾を揺らしながら歩いていました
自慢の耳をぴるぴると揺らしながら歩く金色の毛並みを持つまだ若いその猫は、名前をカズにゃんといいます
桜が咲く頃まではここのボスでしたが、茶色の大きな体の流れの猫…スネにゃんに負けてしまって以来、縄張りを取り返すべく勝負を挑み続けています
実際のところはもう勝負というより遊びに近くて、カズにゃんもスネにゃんも、互いに勝負をするのを楽しんでいます
スネにゃんがカズにゃんのところに遊びに行くことも、しょちゅうです

「スネーク、いるか?」

そしてカズにゃんは、今日も勝負をしようとスネにゃんの縄張りにやってきたのです
ですが、いつもはここで日向ぼっこをしているスネにゃんはいません
カズにゃんはきょろきょろと辺りを見回しながらスネにゃんを呼びましたが、スネにゃんがやってくる気配はありません

「なんだ、いないのか」

少しだけ拍子抜けしたカズにゃんは、尻尾を揺らしながらどうしようか考えます

スネにゃんがここにいないときは、大抵ご飯を捕りに行っているか、縄張りのパトロールに行っています
それなら、そのうち帰ってくるだろうと思ったカズにゃんは、スネにゃんが帰ってくるのを待つことにしました

「よいしょ、と」

カズにゃんはその場で小さく伸びをして、ペタリと座り込みました

「それにしても、いい天気だな…」

ぷるぷると軽く顔を振りながら、カズにゃんは小さく呟きます
ここのところずっと寒かったのですが、今日はぽかぽかと日差しが降り注ぎ、とってもいいお天気です
そしてここは、かつてはカズにゃんお気に入りの昼寝場所でした
ここの日差しは、特別に気持ちいいのです
久しぶりの暖かな日差しとお気に入りだった場所に、カズにゃんは何だか眠くなってきました

「…ふぁ〜…」

大きなあくびをひとつして、カズにゃんは眠気を誤魔化そうと軽く毛づくろいをします
スネにゃんがいつ帰ってくるかわからないのに、堂々と縄張りで寝るわけにはいきません
けれど、日差しのあまりの気持ちよさに

「…すー…」

いつの間にか、カズにゃんは眠ってしまいました

さて、カズにゃんが眠ってしまってから少したった頃
この縄張りの主であるスネにゃんは、今日のご飯である鳩を咥えて縄張りへと戻ってきました
今日は、久しぶりのいいお天気
どうせご飯を食べるなら、気持ちのいい場所で食べようと思ったのですが

「…カズ?」

スネにゃんが縄張りの中で一番気持ちのよい場所に来てみると、そこにはカズにゃんがいました
おそらく遊びに来たのだろうと思ったのですが、様子が少し変です
スネにゃんが帰ってきたのに、カズにゃんはピクリとも動きません
不思議に思ったスネにゃんは、鳩を咥えたままカズにゃんに近づきました

「…なんだ、寝ているのか」

スネにゃんが顔を覗き込むと、カズにゃんはぴすぴすと気持ち良さそうに眠っていました
おそらく自分を待っているうちに眠ってしまったのだと、スネにゃんは思いました

「まぁ、仕方ないか」

スネにゃんはカズにゃんが寝ているのを少し残念に思いましたが、今日は久々のいいお天気
そして、ここはかつてはカズにゃんお気に入り…今はスネにゃんのお気に入りの昼寝場所です
眠ってしまっても仕方ないと、スネにゃんは思いました
起こしてもいいですが、これほどよく眠っていては起こすのが何だか可哀想な気もします
スネにゃんは鳩を置き、カズにゃんの隣に腰を下ろします
よく眠っているカズにゃんは、スネにゃんが隣に来たことにも気付いていません
そのままスネにゃんは、カズにゃんのふわふわの首筋をペロペロと舐めます
普段あまり毛づくろいはさせてもらえませんが、カズにゃんはここが好きらしく、舐めるといつもゴロゴロと喉が鳴ります
今日も、カズにゃんの喉から気持ち良さそうな音が聞こえてきました

意外にに警戒心の強いカズにゃんのそんなところを知っているのは、多分自分だけだろう
こうして隣に来ても気付かないもの、カズにゃんが自分を信頼してくれているからだ
そう思って、スネにゃんはちょっぴり嬉しい気持ちになりました
そして、どうせならいつも舐めさせてもらえない場所を毛づくろいしてみようと、ちょっぴりイタズラめいたことを思いました
とりあえず、いつもは絶対に舐めさせてくれない顔を毛づくろいすることにしました

「…にゅ…」

額をぺろりと舐めると、カズにゃんの口から小さな声が漏れました
その声が何だか可愛い気がして、スネにゃんはもう一度額を舐めます
すると、同じようにカズにゃんが小さく鳴きます
嫌そうな声ではなく、気持ち良さそうな声です
それが何だか面白くて、その声がもっと聞きたくて、スネにゃんは何度も額をぺろぺろと舐めました

「…ん、」

そして、カズにゃんの額が何だかしっとりとしてきた頃
あまりにしつこく毛づくろいをしたせいか、それとも十分寝て満足したのか
カズにゃんは、小さく身じろぎをしてゆっくりと目を開けました
その瞬間、ピントが合わない位置にいるスネにゃんと、バッチリ目が合いました

「お、カズ起きた…」

スネにゃんがそう言いきる前に、カズにゃんの体中の毛がブワリと逆立ち

「うわぁぁぁ!!!」

叫び声を上げ、バチーンとスネにゃんの顔を力いっぱい叩いて飛びのきました
とっさの事で爪は出ていませんでしたが、スネにゃんは突然の攻撃に目を白黒させました

「あ…な、なんだ…スネークか…」

カズにゃんは完全に開ききった目であたりをきょろきょろ見回し
小さく呻き声を上げるスネークをようやく確認し、ホッと息を吐きました

「カズ…痛いんだが…」

「あ、あぁ、すまん…ちょっと、ビックリして…」

ふーふーと荒い息をしながら、カズにゃんはどうにかそうスネにゃんに言い
膨らませていた毛を、ゆっくりと元に戻していきました

「俺、寝てた?」

「あぁ、ぐっすりだったぞ」

「すまん、ここアンタの縄張りなのに」

「気にするな、問題ない」

ふぅ、と大きく息を吐き出したカズにゃんはまだバクバク言う心臓をどうにかしようと、毛づくろいを始めました

「悪かった、俺も毛づくろいしてやろう」

「いらない、舐めるな」

スネにゃんも、カズにゃんに毛づくろいしてあげようと近づきましたが
ぺちりと、力の入っていない手で叩かれて、大人しく一歩下がりました

「…あれ?」

一通り毛づくろいをして落ち着いたカズにゃんは、ようやく額が少し冷たいことに気が付きました

「スネーク、何か額がスースーするんだが」

「気のせいだろ」

「いや、なぁんかスースーするんだけど…なんか付いてない?」

「別に何も付いていない、気のせいだ」

きっぱりと言い放つスネにゃんを、カズにゃんはちょっぴり不思議に思いましたが
スネにゃんが何もないというのなら何もないのだろうと、そう結論付けてととと、とスネにゃんに近づき

「さっきはごめん、痛いか?」

そして、さっき引っ叩いてしまった頬を覗き込みます
カズにゃんの耳と尻尾は、しょんぼりと垂れています
とっさのこととはいえ、いきなり攻撃してしまったのを、悪いと思っているのです

「あぁ、爪は出ていなかったからな」

スネにゃんはそういってカズにゃんに笑いますが、カズにゃんは申し訳なさそうにその場所をじぃっと眺め
ペロリと、舐めました
驚くスネにゃんに構わず、カズにゃんは毛づくろいするようペロペロと頬を舐めます
きっとお詫びのつもりなんだろうと、スネにゃんは思いました
カズにゃんの毛づくろいはちょっぴりくすぐったくて、でもとっても気持ちよくて
スネにゃんは、とってもいい気分になりました

「…カズ、このまま毛づくろいしてくれるか?」

スネにゃんは、ぺたりとその場に寝そべり、続きをねだるようにカズにゃんを見上げます
カズにゃんは、一瞬だけ驚いたように目を丸くし

「しょうがないな」

小さく笑って、スネにゃんに毛づくろいを始めました
日差しが気持ちよくて、カズにゃんの毛づくろいもとっても気持ちよくて
ぐるぐると、スネにゃんの喉が自然と鳴ります
小さくですが、カズにゃんの喉も鳴っています
スネにゃんもカズにゃんも、何だか幸せな気分です

これが終わったら、今度は自分がカズにゃんに毛づくろいをしてやろう
スネにゃんはそう思いながら、気持ちよさに身を任せて目を閉じました


















にゃんにゃんにゃんの日だから、にゃんこパロ番外編を書いてみた
ウサギさんと猫さんの話と迷いましたが、にゃんにゃんにゃんの日だからこっちにしました
最初考えていた話と大きく脱線しましたが、もーまんたい(コラ)
いえ、最初はカズにゃんに鳩をプレゼントするスネにゃんの話だったはずだったのですが…いつの間にか毛づくろい話になりました

こうして仲良く毛づくろいしている2匹よくないですか?







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