猫さんとウサギさんのお話…ぱーとつー!・1



さて、猫さんがウサギさんと遊んでから数日後
猫さんは、おうちの中から外を眺めながら考え込んでいました

「いい天気だな…こんな日に昼寝したら、気持ちいいだろうなぁ」

外はポカポカ、とってもいいお天気
できるならあの丘で昼寝をしたいなぁと、猫さんは思いましたが
ついこの間、そこで寝ていたあるウサギさんに暇つぶしのつもりでイタズラを仕掛けたら、逆にイタズラされエッチな遊びをいたされてしまったのは今でもよく覚えています

「うぅ…またアイツがいたら嫌だしなぁ…」

猫さんはぴるぴると自慢の耳を揺らして悩みます
あの丘は、絶好の昼寝スポットなのです
あそこほど気持ちのいい場所を、猫さんは知りません
でも、またあのウサギさんと出会うかもしれないと思うと、ウサギさんの気が一気に重くなります

「…しょうがない、今日は別の場所に行くか」

しゅんと尻尾を軽く垂らして、猫さんはあの丘でのお昼目を諦めました
ウサギさんと出会うくらいなら、別の場所でお昼寝をしたほうがいいと思ったのです
こんな気持ちで丘に行っても、またウサギさんに出会わないか
出会うだけならともかく、またエッチな遊びをいたされてしまうったらどうしよう、と心配できっと寝付けません

こんなにいいお天気なのになぁ、と猫さんは少し残念に思い、散歩に出かけようと伸びをした瞬間

―トントン

おうちの扉が、控えめに鳴りました

「あれ、誰だろ?」

今日は誰とも遊ぶ約束はしていないよな?と猫さんは軽く首を捻ります
でも猫さんには、お友達がたくさんいます
こうしてお友達が突然遊びに来ることも、時々ありました
きっと暇を持て余した友達が遊びに来たのだと、猫さんは思いました

―トントン

「はいはい、今開けますよっと」

すぐ近くに住む仲良しのマングースか、それとも花畑の近くに住んでいるホーネットか
猫さんは突然やってきそうなお友達の顔を思い浮かべながら、扉の前にいるのが誰かもよく確かめず扉を開けました

「よう、カズ」

扉を開けた先にいたのは、仲良しのマングースでもホーネットでもありません

「え…?すねー…く?」

そこにいたのは、この間エッチなことをいたされてしまったあのウサギさんでした
ニコニコと機嫌良さそうに笑うウサギさんの顔を、猫さんはポカンと口をあけて見つめています
どうしてあのウサギさんがここにいるのか、猫さんはちっともわかりません

「え…何で…?」

「お前が言ったんじゃないか、向こうの森の泉の側にすんでいると」

至極楽しそうにそういうウサギさんに、猫さんはそういえばそんなことを言ったなと思い返します
ですが、この泉はこの辺では一番大きなもので、側にはたくさんの動物達が住んでいます
猫も、自分以外にたくさんいます
なので、猫さんは自分のおうちなんてわからないだろうと思っていたのです

「そ、だけど…」

「いや、途中でお前の家を聞いたら、友達だったらしくてな!快く教えてもらえたぞ」

誰だ、こいつに俺の家を教えた阿呆は!
猫さんはそう叫びたいのをぐっと堪え、ウサギさんを睨みつけます

実のところ、ウサギさんがとってもウサギっぽくない笑顔できょうは…いえ、猫さんのおうちはどこかと尋ねたので
お友達は震えながら猫さんのおうちを教えたのですが、そんなこと猫さんは知りもしません

「…で、何の用だ?」

「友達の家に遊びに来ちゃいけないのか?」

「いつ俺とアンタが友達になった?」

「つれないな、一緒に気持ちよく楽しく遊んだ仲じゃないか」

「アンタが楽しかっただけだ、俺は楽しくなかった」

「そうか?それにしては随分と気持ち良さそうだったが…」

「う、うるさい!とにかく、俺はアンタと友達になった気はない!帰ってくれ!!」

猫さんは真っ赤になりながら扉を閉めようとしましたが
その手を、ウサギさんの大きな手が止めます

「せっかくきたんだ、茶くらい出してくれたっていいじゃないか」

「断る!何で俺がアンタにお茶出さないといけないんだよ!?」

猫さんは扉を閉めようと一生懸命引っ張りますが、ウサギさんのほうが力が強いらしくびくともしません
そのうち、扉がミシリと嫌な音を立て始めました

「ほら扉壊れるだろ!?離せよ!」

「お前が離したらいいじゃないか」

猫さんは大声でそう叫びましたが、ウサギさんは扉を放してくれません
やがて猫さんは、ウサギさんを追い出すのを諦めました
このまま続けていても、扉が壊れてしまうだけだと思ったのです

「…お茶飲んだら、さっさと帰れよ」

不機嫌そうに尻尾を大きく揺らしながら、猫さんは力を抜いて扉を開けました

「悪いな、邪魔するぞ」

猫さんの諦めたような表情を見て、ウサギさんはどこか勝ち誇ったように笑います
その笑みに猫さんは若干イラッとしましたが、もう早くお茶を出して帰ってもらおうと思ったので我慢しました

「ほう、綺麗に片付いてるな」

「どっか適当に座ってろ、お茶持ってくるから。後勝手に物触るなよ」

興味津々、といった風にあたりをきょろきょろと見渡すウサギさんにそう釘を刺してから、猫さんは台所へと向かいます
その間も、猫さんは辺りを警戒することを怠りません
なにせ、相手はこの間エッチなことをいたされてしまったウサギさんです
それに、帰り際にウサギさんはまた遊ぼうなと言っていました

「またあんな風にされてたまるか!」

猫さんは、ウサギさんがまたエッチな遊びをしにきたのだと確信しています
そうでなければ、ウサギさんがここにやってきた理由がわからないからです

「あの時は油断して好きにされたけど…今日は好きになんかさせないからな!」

猫さんは気合を入れ、相手はウサギさんとはいえ一応お客さんなのでちょっといいコーヒーを用意し、丁寧に淹れました
猫さんは、意外に完璧主義なのです

「お待たせ、コーヒーでよかったか?」

猫さんがコーヒーを持って部屋に戻ると、ウサギさんは意外にも、大人しく座って待っていました
てっきりあちこち探られていると思った猫さんは、一瞬驚いてしまいました

「おぉ、いい匂いだ…どうしたカズ、そんなありえないものを見たような顔をして」

「あ、あぁいや、なんでもない」

猫さんはどうにか気を取り直して、ウサギさんの前にコーヒーを差し出します
ウサギさんはそれを受け取り、一口含むと

「美味い!こんなに美味いコーヒーを飲んだのは初めてだ!」

目を丸くして、キラキラとした瞳で猫さんに本当に嬉しそうな笑みを向けました

「そりゃどうも」

猫さんは、コーヒーを淹れるのには少し自信がありました
なので自分が淹れたコーヒーをそこまで言ってもらえて、猫さんはちょっとだけ嬉しい気持ちになりました
ですが、相手はあのウサギさんです
こうして油断させる気かもしれないと、すぐに気を引き締めて警戒します
体中の神経を研ぎ澄ませ、ウサギさんがどんな動きをしても反応できるように、一挙手一投足を見守っています

「なぁカズ、そんなに警戒してるってことは…誘ってるのか?」

そんな猫さんを見て、ウサギさんはコーヒーを口に含みながら、まるで何でもないことのように
そう、猫さんが思いもしなかったことを言いました

「誰が!」

猫さんは、ウサギさんにまたあんなことをされると思っていたから警戒していたのですが
まるで逆のことを言われ、シャーっと毛を逆立ててウサギさんを威嚇します

「お前な、そこまであからさまに警戒されたら、逆に食ってくれって言ってるようなもんだぞ?」

「知るか!ほらコーヒー飲んだだろ!?さっさと帰れ!!」

猫さんは毛を逆立てたまま、びしっと扉を指差しますが
ウサギさんは、動こうとはしません
逆に、じりじりと猫さんに近寄ってきます
猫さんはすぐに逃げ出したい衝動に駆られますが、背中を見せたらきっとこの間の二の舞になってしまうと思い
ウサギさんの顔を見ながら、じりじりと後ろに下がります
どれくらいそうしていたのか
とんっと、猫さんの背に何かが当たります
それは、猫さんがいつも寝ているベットでした

猫さんは、しまったと思いました
ウサギさんの動きに集中するあまり、自分が部屋のどこにいるのか確認していなかったのです
もう後ろへは逃げられなくなった猫さんを、ウサギさんはゆっくりと追い詰めていきます

「な、何だよ…」

「いや…今日は本当にちょっと顔を見に来ただけだったんだが…」

猫さんはそれでも、ウサギさんを睨みつけますが
ウサギさんは、逆に楽しそうに笑うだけです

「そんなに警戒されたら、何かしたくなるじゃないか」

するり、とウサギさんの大きな手が猫さんの頬に触れます
その瞬間猫さんはビクッと体を跳ねさせ、無意識に怯えを含んだ目でウサギさんを見上げてしまいます

「(やはり、たまらんな)」

ちなみに、ウサギさんは物凄いドSです
こんな目をされれば、余計にどうにかしてやりたくなってしまいます
おそらく必死に逃げる算段をしているであろう猫さんの顎を掴み、強引に唇を重ねます

「んー!?」

急にそんなことをされて、猫さんは目を白黒させて体を硬くします
その反応にウサギさんは、喉の奥で小さく哂い
キスを解いて猫さんの体を持ち上げて、ベットに横たえます

「ちょ、やめろ!離せってば!!」

そこでようやく我に返った猫さんでしたが、もう完全に上にウサギさんが乗りかかっているので、ちょっとやそっと暴れたくらいじゃ押しのけられません
それでもどうにかウサギさんの体の下から出ようと、手足をバタバタさせてもがきます
そんな猫さんの可愛らしい抵抗…猫さん自身は必死の抵抗なのですが…を眺めながら、ウサギさんはもう一度唇を合わせようと顔を近づけ…

「み、ミラーさん…無事ですか?」

た瞬間、扉が小さく音を立てて開き
ひょこりと、猫さんと仲良しのマングースが顔を出しました

「マングース!」

ぱぁっと嬉しそうに顔を輝かせる猫さんとは対照的に、ウサギさんは小さく舌打ちをしました
どうやら、ウサギさんはマングースに猫さんのおうちはどこかと尋ね
ウサギさんが怖くてつい教えてしまったマングースは、仲良しの猫さんが心配になって様子を見に来たようです

「マングース!助けてくれ!!」

そうとは知らない猫さんは、必死にマングースに助けを求めますが

「ヒッ…し、失礼しましたぁぁ!!」

マングースは怯えきった表情でそう叫ぶと、バタンと大きな音を立てて扉を閉めてしまいました
猫さんはマングースしか見ていませんでしたから気付きませんでしたが
さぁこれからという時に邪魔されたウサギさんの顔は、それはそれは邪悪なものでした
どちらかといえば気の弱いマングースが、その顔に立ち向かえるわけがありません
おそらく、マングースにとってはトラウマものの体験だったに違いありません

「マングース!?」

ですが、そんなことなど気付きもしない猫さんは、突然立ち去ったマングースに慌てたような声を上げ
呆然と、マングースが消えた扉を眺めていました




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