Oh My Girl!7



「貴女がストレンジラブ博士か?初めまして、カズヒラ・ミラーだ」

「よろしく、ミラー」

ピースウオーカーが、彼女が湖に沈んだ後
俺は博士を、このマザーベースへと招待した
コールドマンも死に、元々彼女を完成させた後は死ぬつもりだった博士には、特に行き場は無いらしい
それならいっそ、ここにきたらどうだと誘ってみた
彼女がここへくれば、ヒューイの開発しているZEKEの完成も早まるだろうし
それに、ヒューイ自身が喜びそうだ
渋られるかと思ったが、彼女はそれもいいなとあっさり承諾した
カズも博士が来ることに賛成してくれたので、そして共にヘリに乗りマザーベースへと帰ってきた

「とりあえず、女性兵士達が使ってる宿舎に案内させる。私室とかはまた後で話し合って決めようと思うんだが」

「気を使わなくていい。今の私はいわば捕虜のようなものだ、私室等は結果を出してからでかまわない」

博士とカズが、いろいろと話をしているのを、俺は後ろでぼんやりと眺める
マザーベース内のことは、俺よりもカズのほうが数段詳しい
それにこういうのは、同じ女であるカズに任せておいたほうがいいだろう

「それじゃ、後で俺の執務室に来てくれ」

「わかった。お気遣い感謝する、副指令殿」

「ミラーで構わない、何ならカズって呼んでくれてもいいぞ」

「ふ…よろしく、ミラー」

「副指令、ちょっと…」

「あぁわかった。それじゃ博士、また後で」

一通りの挨拶を終えると、カズは先ほどまでの総動員の後処理に忙しいのか、マングースを従えて急ぎ足で歩いていった

博士も美人だが、カズのほうが美人だな
カズの背中を見ながら、そんなことをぼんやりと考えていると

「ボスは男装の麗人が好みなのか?あれほど美しい女に、無骨な男の格好をさせておくなんて」

博士はさらっと、カズの背中…もっと言えば尻を眺めながらさらりとそう言った

「いや、本人が…」

あまりにさらっと言われたそれに、ついつられてそう言いかけ
背中にブワッと汗が浮かんだ

カズは、自分が女であることをばらしたくないと言い、男として側にいたいと望んでいる
あの柔らかい胸を隠し、男の言葉遣いをし、男として振舞っている
だから俺もカズを男として扱ってきたし、女であることがばれないように最大限配慮してきた
このマザーベース内でカズが女だと知っている人間は俺とジェーン、そしてカズの側近であるマングースとホーネットぐらいだ
MSFを立ち上げた当初からの仲間ですら、カズが女であることを知るものはいない
カズが女であることは、MSF内では最重要機密事項なのだ

「は…博士、ななな何を言っている!?か、カズは男だ!あぁ男だとも!!」

慌てて言い直し、誤魔化そうと試みたが

「ボス、そんなに慌てては、ミラーが女であるといっているようなものだぞ?」

AIの専門家であり、心理学にも精通しているらしい博士には、逆効果だったらしい
ふぅ、とわざとらしいため息と共に、やれやれと首を振って見せられた

「…どうしてわかった?」

俺はもう誤魔化すことは諦めて、脱力と共に博士に問いかける
カズが女だということは、この2年誰も気付かなかったのに
なぜ、たった一目で博士はわかったのだろうか

「見ればわかる、あの仕草は女だ」

「仕草?」

「あぁ、どれだけ誤魔化しても、無意識レベルの細かい仕草までは誤魔化せないからな。これくらい誰でもわかる」

いや、カズが女だと気付いたのは博士が初めてだぞ
そう思ったが、得意げに口の端を上げる博士に口をつぐんでしまう
言ったら、盛大にからかわれそうな予感がする

「後、あれほど美しい人間が男であるはずがない」

黙り込んだ俺に構わず、博士はほぅ…と先ほどとは違うため息をつき、どこかうっとりとした声でそう言った
いや、確かにカズは綺麗だが…
そのため息は、何だか違うものが含まれている気がしないでもない

「彼女は、ボスの女ではないのか?」

「…違う」

不思議そうに小首をかしげる博士に、俺は多少の落胆も込めてそう返す
確かに2年という歳月を共にしたが、俺達の関係は、最初から一切変わっていない
カズがそれなりに俺に懐き信頼を得て、距離はだいぶ縮まったとは思うが
相変わらずカズはジェーンが大好きだし、ジェーンほどには懐かれても好かれてもいないと痛感している
それはもう、切ないほどに

俺としては、カズが公私のパートナーになってくれて、ずっと共に生きていけたらと思っている
初めて出会ったときに見た強い瞳に強く惹かれて、カズを側に置きたいと望んだ
初めて見せた美しい微笑みに、その想いがより強まった
知れば知るほど、俺はカズヒラという人間にどんどんと惹かれ、魅せられていく

だが、これ以上の距離の縮め方がわからない
カズは、男として側にいたいと望み、男として生きている
そんな彼女に、女として側にいて欲しいといっていいものかどうか悩む
いや、俺はカズが男だって、きっと惚れて公私のパートナーになって欲しいと望んだだろう
俺はカズヒラ・ミラーという人間を心の底から愛している
だからこそ、カズヒラという人間にパートナーとして側にいて欲しい
ただ、その想いを、どうやって伝えたらいいのかわからない
下手に伝えれば、男でありたいカズに自分が女として求められていると感じて嫌悪され
2年かけて築いていきた信頼を、一瞬で壊してしまいそうで怖い
それに…最初に結婚はしないと釘を刺されてしまっている

いっそ、カズが本当に男だったらこれほど悩まなかったのだろうか

「そうか…なら、彼女は今フリーということか」

悶々と思い悩んでいると、博士がポツリとそう呟いた
その言葉に、彼女のほうへと視線をやると
博士は、いっそすがすがしいほどのいい笑顔を浮かべていた

「は…博士…?」

そのいい笑顔に、別の意味で汗が噴出してくる
セシールが言っていた女の人は、おそらく博士のことだろう
優しくしてくれて、毎日お風呂にも入れて体も洗ってくれていたと
そして、彼女のコードネームはストレンジラブ
ボスにやたら括っていたことといい、カズの性別を一発で見抜いたことといい、先ほどのうっとりした口調といい
俺の予想があっていれば
博士は、同性愛者だろう

カズは確かに女にしては背も高いしガタイもいい
言葉遣いや行動も、男そのものだ
だが、サングラスで顔を隠してしまっているのが惜しいほど、カズは美人だ
隠してはいるがその豊満な胸は形もよくて美しいし、鍛えているおかげで体も程よく引き待っていて綺麗だ
オマケに肌はシミ1つなく透き通るように白くて、東洋人の血が入っているせいかキメが細かくすべすべしている
…と、ジェーンが以前からかい混じりに言っていた
それにカズは優しいし、料理も上手いし、頭もいいし、話も上手いし、可愛いし…

物凄く嫌な予感が、びしびしと体中に伝わってくる

「男装の麗人か…そそるな」

予感ですんでくれないだろうか、と思った瞬間
博士が、予感を確信に変える言葉を呟いた

博士は、カズをそういう意味でとても気に入ったらしい

大変だ…このままでは、カズが博士に食われてしまう!
いや、力とかそういうものならカズのほうが上だが、何だかこの女はあっさりとカズを食ってしまいそうな予感がする
この女は、とてつもなく危険だ!

「博士!?か、カズは自分を男だといっていてな!!後女ならまだここにはそれなりに…!そうだ、医療班に俺の古い知り合いの美人がいてな!!」

どうにかカズから興味をそらそうと、とっさに思いついた見た目だけは抜群なジェーンのことを口にしてみるが

「ほう、なら好都合だ。彼女は自分が男だと言っているのだろう?なら、女の私に興味を持ってくれるかもな」

だが、俺の言葉は盛大に墓穴を掘ったらしい
博士はなにやら顎に手を置き、ニヤニヤと笑いながら何かを考えている
あの笑みは、おそらく悪いことを考えているときの顔だ…!
博士との付き合いはまだ数時間だが、それだけははっきりとわかる

「ストレンジラブ博士、お部屋の用意が整ったと、副指令が」

大量に噴出す冷や汗にまみれながら、どうやって博士の気をカズからそらすか必死で考えていると
いつの間にか側に来ていたホーネットが、博士に声をかけた

「あぁ、わざわざすまないな。後でミラーに礼を言いに行きたいんだが…」

「じゃあ、副指令がお暇になったときに呼びますね」

おいホーネット、空気読め!
その女、カズの貞操を狙っているぞ!?
そう叫びたいのをどうにか堪えて、必死に考える

守らなければ…博士から、カズの貞操を!!
放っておいたら、今日にでもカズが食われてしまう、性的な意味で!
同性愛を否定する気はないが、カズをそっちの世界へとやってたまるか!!
万が一…億が一!カズがそっちの世界へいってしまったら、俺は多分本気で死ねる
惚れた女がそうなってしまうなんて、まさに悪夢だ
そして博士なら、その億が一を実行してしまいそうで怖い、本気で怖い

「ホーネット、俺もカズに用があるんだ。その時は俺も呼んでくれないか?」

とりあえず、何が何でも博士とカズを2人きりにしないようにしなければ!!

「え、ボスはいつでも…」

「俺も行く、何か不都合があるのか?」

「ボス、私は1人で行ける、邪魔をしないでもらいたいな」

「いいや、俺も行く。俺がいたら不都合でもあるのか?」

「ボスこそ、私が1人でミラーのところへ行くのに何か不都合でもあるのか?」

バチバチと博士と火花を散らしあいながら
2年目にして現れた最強のライバルをどう蹴散らそうかと、普段食い物と戦闘にしか働かない頭をフル回転させ始めた




















物凄く久しぶりなにょたカズ
いや、カズほとんど出ていませんが

本当はもう2〜3話過去編をやろうかと思いましたが、公式で素晴らしい出逢いが出てしまったため、もうMSF編からでいいやと投げました(コラ)

あれから2年たちましたが、2人は一向に進展しておりません
スネークが最初のプロポーズ以来アタックしていないのが主な原因です
今回出ていませんが、ジェーン姐さんはあまりのスネークのもたつきっぷりに
もう既成事実でも作れよ!と半ばイライラしています(笑)

博士が本気出したらカズあっという間に食われてしまうので、ボスには頑張って欲しいところです(おい作者)

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