My Little Lover3



「…あれ?」

久々にバイトない放課後の帰り道
帰ったら、久しぶりにゲーセンでも行くか…と考えながら歩いていたら
前方に、よく見知った人影を発見した

「ようカズヒラ、どうした?今日はスネークと一緒じゃないのか?」

とぼとぼと、元気なく歩くその人影は
スネークが将来を誓い合った恋人だと豪語するカズヒラだった
スモッグを着て鞄を下げているところを見ると、ちょうど保育園から帰る途中なのだろう

しかし、いつもその側に貼り付いてるスネークの姿が見えない

カズヒラと一緒に帰るのを放課後デートと呼び、何よりも楽しみにしているのに
休み時間中、俺に今日はどこに行ったらいいかとしつこく聞きやがるほどに
確か、今日は少し遠回りして猫を見に行くとか言ってた気がしたんだが

「ロイおにーちゃん…」

俺の声に気づいたカズヒラは、しょんぼりとした表情で振り返って俺を見上げ

ぶわっと、その目から涙を零しはじめた





「…落ち着いたか?」

そう問いかければ、カズヒラはジュースの缶を握り締めたままこくりと頷いた
そんなカズヒラを見ながら、俺も缶コーヒーを口に含んだ

突然泣き始めたカズヒラに慌て、とりあえず近くの公園に引っ張り込んで
自販機のオレンジジュースを与えて、どうにか落ち着かせた

万が一にでも、スネークにカズを泣かせたと誤解された日には
えらい目にあうのは、火を見るよりも明らかだ

「どうした?何かあったのか?」

その柔らかな金髪を撫でてやれば、カズは再び泣き出しそうに顔を歪めた

「ロイ、おにーちゃ…」

「あ〜泣くな泣くな、カズヒラは男の子だろ?」

ぽんぽんとそのまま頭をあやすように叩いてやると、カズヒラはこくりと頷いてごしごしと目元を袖で擦った

「ねぇ、ロイおにいちゃん…おとこどーしで、けっこんするのはおかしいの?」

「誰かに何か言われたのか?」

「おともだち…スネークとけっこんするっていったら、おとこどーしはおかしいって」

そう言って、俯いてしまったカズヒラに、ついにくるべき日がきたかと思った

同性婚は、この国では別に禁止されてはいない
だが、マイノリティなものはどうしても差別の対象になる

同性愛なんか、格好の差別の対象だ

今まではスネークが守ってきたし、カズヒラがまだ子どもだからと周りも微笑ましい目で見てきた

だが、いつまでもこうはいかない

いつまでも、スネークの腕一本で守りきれるほどこの世界は狭くない
カズヒラはこれからどんどん大きくなる
カズヒラの世界も、それに伴って広く大きくなる

同性愛が、差別の対象であることを知ってしまう日も、きっとそう遠くはない

スネークは、ある種の覚悟を決めてカズヒラを愛している
何があってもカズヒラを守ると
どんな困難があっても、カズヒラだけを愛し抜くと

けど、カズヒラはまだ子どもだ

スネークと同等の覚悟も愛情も、まだ持てない
カズヒラがスネークと結婚したいというのも、まだ無垢で幼い子どもの愛情表現の一種に過ぎない

「カズヒラ、ちょっとこれ飲んでみるか?」

俺は少しだけ考えて
カズヒラに、手の中にあるコーヒー缶を見せた
一瞬きょとんとした表情になったカズヒラは、すぐに嫌そうに顔を歪めた

「やだ、コーヒーにがいもん」

「そうか?俺はこれ美味いんだがなぁ」

「にがいよ、あまいのがいい」

「なぁカズヒラ、コーヒー飲めないのはおかしいことか?」

そう問いかければ、カズヒラはよくわかってないような表情でフルフルと首を振った

「な?おかしいことじゃないだろ?コーヒーが飲めても、飲めなくても、好きなものが違うだけだ。何もおかしくない」

「…?うん」

「男同士で結婚するのも、同じだ。好きなものが違うだけで、愛し合う2人が結婚するという根本的なとこは変わらんさ」

我ながら、微妙な例えだと思うが
けれど、結局はそういうものだと思う

好きになった相手が男か女か
そんな、些細な違い
誰かを愛して、共に生きたいという気持ちは同じなのに
そんなことで差別する奴のほうが、わからずやの頭でっかちだ

少なくとも俺は、そう思っている

「…おれがスネークとけっこんするの、おかしくない?」

「少なくとも、俺には何がおかしいのかさっぱりわからんね」

まぁ、年齢差的なものでは今現在変わってるとは思うが
カズヒラが大きくなって、それでもスネークと結婚するというのなら
それは、少しもおかしいことじゃないと俺は思う

俺を見上げるカズヒラの不安げな顔が、ぱぁっと花が咲くように明るくなって
スネークみたいな感情じゃないが、やっぱり可愛らしいなと思った

「カズヒラ…俺は、お前の味方だ。何があっても、俺だけはお前を差別したりせんさ」

わしゃわしゃと柔らかい髪を撫でてやれば、カズヒラはきょとんとした表情で俺を見上げてくる

この言葉の意味は、今は知らなくていい
けど、頭の隅っこにでも残しといて
いつか、大きくなって悩んだときに思い出してくれればいい

カズヒラが大きくなって
スネークを選んでも、別の誰かを選んでも
俺は、お前の味方だカズヒラ

スネークほど守ってはやれそうにないが
俺が出来るかぎりのことで、お前を守ってやるさ

「カズ!!!」

そのまま頭を撫でてやっていると、公園の入り口から切羽詰った幼馴染の声が飛び込んできた

「カズ〜!!急にいなくなるから心配したんだぞ〜!!?」

遅かったな、と声をかける暇もなく
その自慢の足で全力でカズヒラに駆け寄って、俺の手の下からカズヒラを奪い取った

相変わらず、素早いこって

「スネーク、ほっぺいたい」

すりすりと頬ずりされ、カズヒラはさっきまで泣きそうだったとは思えないほど嬉しそうな顔で笑う
まったく…ラブラブだなこいつら

「ところで…何でカズとキャンベルが一緒にいるんだ?」

ひとしきり、おそらく十数分ぶりの感動の再会を楽しんだスネークは
ジトリと、カズヒラをその腕の中に収めたまま疑わしげに俺を見た

…このネジ3本飛んでる幼馴染は、いい加減俺に嫉妬するのやめてくれないだろうか

ただそこで一緒になっただけだ、と言おうとしてふと思いつく

「男と男の秘密だ…なぁカズヒラ?」

いっつもコイツには苦労させられているんだ
たまには、少し慌てさせても問題ないだろう

カズヒラと視線を合わせて、ニヤニヤとする頬を押さえきれないままカズヒラに問いかければ
一瞬きょとんとした後、ぱぁっと顔を輝かせ

「うん!おとことおとこの、ひみつ!」

元気よく頷いて、楽しそうにそう言って俺に同意した

「カズ!?い、一体何があったんだ!!?」

「だーめー、ないしょ!おとことおとこのひみつっ」

カズヒラは、男と男の秘密というのがよっぽどお気に召したのか、オロオロと慌てるスネークを尻目にとても満足そうな表情を浮かべている

そんな2人に堪えきれず、俺は腹を抱えて盛大に笑ってやった

いつまでも、このままではいられない
スネークも俺も、それはよくわかっている
カズヒラが大きくなれば、カズヒラの世界が広がれば
たくさんの選択肢の中から、カズヒラ自身が未来を選ぶだろう

もしかしたら、スネークや俺の望まない未来を選択をするかもしれない

けど、忘れないで欲しい
確かにこの日、俺達が笑いあっていたということを
今日の俺の言葉を
頭の隅っこに残ってるレベルでいいから

そして、いつか選択に苦しんだとき
ほんの少しでもいいから思い出して
どこに向かったらいいのかわからなくなった、その足元が照らせればいい

止まらない笑いに涙を浮かべながら、そんなガラにもないことを願った



















本日2本目のショタっこカズヒラ
すみません、ショタブームとロイロイブームが終わるまで、そっと生暖かい目で見守ってやってください

ギャグと言いつつ、ちょっぴり真面目なお話

もう管理人の頭の中では、カズが20歳くらいになるまで妄想が進んでて(すでにショタじゃねぇ!)
ど〜してもこの話が書きたくなったんです

カズは、大きくなってもこの日のロイの言葉をちゃんと覚えてて
それが、ある意味スネークとカズの未来を決めたといっても過言ではない
とっても大切な言葉として存在します

そんな今回の設定

ショタっこカズというより、ロイロイメインの話な気がしないでもない

ショタっこカズが愛され設定なのは、リアルカズヒラの幼少期を考えたら涙が止まらない反動です
せめて我が家の中でだけでも幸せな愛され幼少期を過ごして欲しいという感情と
管理人がショタカズに色々したい感情で成り立ってます(変態)

すみません、次こそはショタっこカズとスネークのイチャラブ書きますから許してください…

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