Oh My Girl!6



カズが、俺の元に残るといってくれて、早一月
カズは男としてだが、持ち前の明るさで部隊にも馴染んでいる

それは、いい
ここまであっさり馴染むとは思っていなかったが
ずっと馴染めないよりはずっといい

うん、いいんだ…
いいんだが…

なぁカズ

お前、ちょっとジェーンに懐きすぎじゃないか?



「なぁボス、ジェーン知らないか?」

戦闘から帰ってきた俺を見たカズはとことこと俺に駆け寄り
開口一番、そう言った

なぁカズ…別に心配して欲しいわけじゃないが
命がけの戦闘から帰ってきた俺への第一声が、ジェーンはどこかとは
それは、ないんじゃないか?

「あらミラー、何か用事?」

「あ、ジェーン!」

しかも、ジェーンの姿を見つけると、俺を放り出してすっ飛んでいった

いや…別に、いいんだけどな

俺は、カズを横目でチラリと眺めながらテーブルに座り泥水…いやコーヒーをちびちびと啜る

ジェーンと何か話しているカズの周りには、いつの間にか他の隊員達も集まってきて
いつの間にか、全員で楽しそうに喋っている

うん、カズはちゃんと部隊に馴染んでいるな

俺もその輪に混ざりたいなぁと思いながら、コーヒーをひたすらに流し込む

カズは、確かに隊に馴染んでいる
もともとカズの明るい性格があったとはいえ、ここまで早く馴染んだのはジェーンの影響も大きい
それは、認めよう
だが、それは別にジェーンが他の奴に

『ミラーと仲良くしなさい』

といって、鉄拳を食らわせたわけじゃなく
かといって、馴染むように尽力したわけでもなく

「ジェーン、何か手伝うことあるか?」

そう
カズが、あまりにジェーンの後ろのくっついて歩いていたせいだ

それはもう、飼い主について歩く子犬のよう
いいや、親鳥について歩く雛のようだ

常にジェーンの後ろをくっついて歩き
口を開けば

『ジェーン、俺にできることあるか?』

『ジェーン、何か手伝うか?』

と、ジェーンばかり

そして、ジェーンは医療スタッフとしてだけではなく、事務スタッフとしても非常に優秀だ
俺も含め、戦い以外はてんで無能な野郎ばかりのスタッフの中
自主的に手伝おうとついてくるカズがジェーンも可愛いらしく、常に連れ歩き出来そうなことはカズに手伝ってもらている
しかも、ジェーンいわくカズは相当優秀らしい
飲み込みも早く、たいていの事はできてしまうらしい

最近では

『ほら、ボスもみんなもミラーを見習いなさい!』

と、耳の痛いお説教ばかり聞いている気がする

そのせいで
いつの間にか、隊内のミラーのポジションが

ジェーンの舎弟

で、落ち着いてしまった

このキャンプの表向きのボスは俺ということになっているが
裏のボスが誰かといわれれば、全員が間違いなくジェーンと答えるだろう
このキャンプの全員が、ジェーンには逆らえないのだ
もちろん、俺も含めて

普通、新人というものは先輩達から半ば苛めに近い手荒い歓迎を受けるものだが
裏のボスであるジェーンが常に側に置き、いろいろとやらせ、非常に可愛がっている存在であるカズをどうこうしようという度胸のある隊員は
残念ながら、この部隊の中にはいない

カズが伝統でもある手荒い歓迎を受けたらどうしよう
もし受けたなら、そいつらを軽くCQCで地獄を…ゲフン、軽く締めてやろうかと心配していたので、そのことはとてもありがたい

それは、本当にありがたい
でもな…でもなぁカズ…

「お前…ジェーンに懐きすぎじゃないか…?」

半ばため息に近い独り言は、楽しそうに話すカズたちの耳には届かなかったようだ

カズは、非常にジェーンに懐いている
それはもう、常にその後ろをついて歩き、ジェーンの役に立とうとする姿は微笑ましくすらある

けど、ちっとも俺には懐いてくれないのだ
さっきも、戦闘から帰ってきた俺に対しての第一声が、ジェーンである
労わりもへったくれもない

そもそも、カズを戦士と見込み、このキャンプへ連れてきたのは俺だというのに
…いや、つれてくる前にちょっと揉んでしまったけど
ものすごく柔らかくて、気持ちよかったけど
…正直、アレはたまらなかった…

あの柔らかな胸の感触を思い出し、半ば伸びかけた鼻の下を慌てて戻す
もしそんな顔をジェーンに見られようものなら、数メートルの空中散歩をする羽目になることは目に見えている

それに、そんな顔を見られた日には、カズに決定的に嫌われてしまうかもしれない

そもそも、ちょっと揉んでしまったことをカズはきっと怒っていたはずだ
それはそうだ、見ず知らずの男に大切な胸を揉まれて怒らない女がどこにいる
ジェーンなら、確実に死刑宣告を下される

そんな俺を許してくれるカズは、実に懐の広い優しい人間だ
そんなところも、カズの魅力だ

つまりは、カズの俺に対する評価は、0を通り越してマイナスからのスタートだった

カズには、カズにだけは嫌われたくない
できれば、ジェーンと同じくらい…いや、それ以上に好かれたい

カズが、このキャンプに残ると決めてくれた日
あの日、俺の手を取ったカズは、初めて俺に笑いかけてくれたのだ
ふわりとした、本当に柔らかくて綺麗な微笑み
女の微笑とは、コレほどまでに美しいものだったのかと感動すら覚えた

その時、突き動かされる衝動のままにカズを抱きしめてしまった
けれど、カズは俺を殴ったりせずそのまま好きにさせてくれた
懐が深いというよりは、固まっていたというほうが正しい気もしたが

そんなカズを、愛しいと思った

嫌われては、いないと思う
嫌われているなら、そもそもキャンプに残ろうとはしないだろう

けれど…

「結婚はしないと、言われてしまったしなぁ…」

結婚はしないということは
俺と生涯を共にするほどは、好かれていないということで

俺としては、生涯カズに側にいてもらえれば嬉しいのだが…
もしかしたら、俺のことは別にどうでもいいが、ジェーンが好きだから残ったとか…

「………ありえそうで、怖いな…」

自分で考えておきながら、もしそうだったら涙で枕を
いや、ベットを濡らせる自信がある

「…ボス、さっきから何百面相してるんだ?」

「か、カズ!?」

俺にしては珍しく、深い思考の海に沈んでいると
コーヒーカップを持ったカズが、俺の顔を覗き込んできた

「いや、何でそんなに驚いてんだ…」

「あ、あぁ、何でもないんだ…」

お前のことを考えていた
などとは、死んでも言えない…

「ふーん…隣、いい?」

「も、もちろんさ!」

今までの思考を振り払うように
慌てて隣の椅子を引っつかみ、勢いよく引いてやる
そんな俺を、カズは呆れたような顔で見ていた

「いや、そんなに引かれると座れないんだが…」

「あ、あぁすまん!」

「…アンタ、本当に変な奴だな」

なんでもないように呟かれた言葉に、ほんの少しだけ落ち込んだ
変な奴って…それって、好かれてないってことだよな、カズ…
お前は、俺が嫌いなのか…?

「…いや、何でそんなに落ち込むんだ?」

「…なんでもない、気にするな」

「…ぷっ」

落ち込んでうなだれていると
小さく、笑う声が聞こえて
顔を上げると、カズがおかしそうに笑っていた

「アンタ…ほんと、変な奴っ」

アレ?カズが笑っている?
嫌われては、ないの…か?

「カ、カズが変な奴とかいうからだな…」

「あ、アンタほどの男がそんなこと気にするとか…ほんと…」

変な奴だな
そう言って笑うカズに、俺も釣られて笑みがこぼれる

まぁ
今は、これでいいのかもしれない
評価が落ちきっているというのなら、これからゆっくりあげればいい

こうして、隣でコーヒーを飲んでくれるくらいは
変な奴といって笑ってくれるくらいは
どうやら、好かれているようだし

『ボス、急がば回れ…焦ってばかりだと嫌われるわよ』

カズを抱きしめたあの日、何故かジェーンも笑いながらそう言っていた事だしな

…いや、せめて
1日でも早く
ジェーンよりは、好かれるようにはなりたいが
















スネーク、ジェーンにやきもちを焼くの巻

スネーク、カズを生涯側に置く気満々です
でも、自分よりジェーンさんに懐くカズにジェラシーです
どうしたらカズがジェーンより自分に懐くか必死に考えてます

でも、うちのボスは何もしないほうがいいのかもしれない
だって、墓穴を掘る姿しか思い浮かばない(笑)

カズがボスに懐かない理由?を小話にあげてみました
よかったらどうぞ

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