ありふれた夜の話



夕食を食べに来た兵士達でごった返していた食堂が、ほっと一息つく時間
この時間帯は、夜勤の兵士達以外は皆思い思いの事をして過ごす
速攻シャワーを浴びに行くもの、食い足りなくて食堂へ舞い戻るもの、仲のよい兵士達でちょっとしたゲームなんかをして楽しむもの、恋人と甘い時間を過ごすもの
各自、寝るまでの自由な時間を楽しんでいる
そんな時間、俺はスネークの部屋へ行くために長い廊下を歩いていた

『今夜、アンタの部屋行くから』

スネークにそう告げたのは、今日の昼前のこと
スネークはわかったと頷いていたし、食事も食堂で一緒に済ませたから、きっと部屋にいるはずだ
ドキドキと胸が高鳴る一方で、毎度おなじみの、嫌な予感がしてくる
いや、今日こそは大丈夫だろ…と軽く頭を振って、無理矢理その嫌な予感を押さえこむ
だが、どうにも嫌な予感がする
そんなことを考えていると、いつの間にかスネークの部屋の前にきていた

「スネーク、俺だ」

うるさい鼓動を深呼吸してどうにか沈め、出来る限り普段どおりの声を作って目の前の扉をノックする

…が、案の定というか、どうしてというべきか
中から、スネークの声が聞こえてこない

「スネーク?入るぞ」

嫌な予感が確信に変わりかけ、いやいや今日こそはと萎えかけ心を奮い立たせ、一応声をかけてからノブを捻って扉を開ける
無用心にも、扉に鍵はかかっていない
そのことに嫌な汗が背中に浮かびつつも、大きくそれを開けて部屋の中へと足を踏み入れる

そんな俺の目に、飛び込んできた光景
ベットの上でスネークが…腹を出して、マヌケな顔で眠っていた

その光景に、ヒクリと口の端がひくつくのを感じ

「…またかよ」

そんな言葉が、自然と口から漏れた

一応、俺とスネークは恋人という関係だ
さらにものすごく大雑把に言えば、同じ建物の中で一緒に暮らしている
互いの部屋の鍵は持っているし、突然部屋を訪ねることもしょっちゅうだ
そんな相手に、わざわざ今夜部屋に行く…なんて言う理由は1つ
恋人と2人きり、甘い夜を過ごしたい…なんて気分の時
ぶっちゃければ、ヤりたい時だ
俺だって男だ、どうしようもなくヤりたい気分の時だってある
いつもなら絶対拒否するプレイだって、今日は別にいいよって言えるくらいムラムラしてる時だってある

問題は、俺がそんな時にかぎってスネークがどうにも乗り気でないことだ
どうも波長が合わないのか、いつもはしつこいくらい迫るくせに、俺がそんな気分の時にかぎって手を出しもしてこない
こうして部屋に来たって、こんな風にもう寝てたり、酒飲んで出来上がってたり逆に潰されたり、さりげない誘いをかけても気付いてもらえなかったり、ベット行こうとか言うから期待したら普通に抱き枕にされたり
最悪なときは、いきなりダンボール戦車の良さについて一晩中語られたりしたこともある
いっそわざとなら怒れるが、無意識だからタチが悪い
そんなことが何度か続いて、一度きっぱりと

『ヤりたいから夜部屋に行く』

って言ったら、即部屋に拉致られて、部屋に行く予定だった時間まで散々好き勝手された
あの時は仕事は次の日に持ち越すハメになるわ、午後からずっとマングースが俺を探し回ってたと会う兵士皆に言われ理由を聞かれるわでろくなことがなかった
それ以来、約束を取り付けるときに明言は避けているが、こんなことばっかりだといい加減腹が立ってくる

「今日夜行くって言ったのに…」

大体、夜部屋に行くって言ってるのに何で寝てるんだこのオッサンは
というか、俺がわざわざ
今日はアンタの部屋に行く
って言ってる時点で察しろよ
風呂入って全身ぴかぴかに磨いて、オニューのちょっと刺激強めの下着はいて、アンタの好きな香水をちょっとだけつけて、わざわざ脱がしやすい服まで選別してやってきたのに
ヤる気満々で来た俺の気合とか期待とかムラムラとかどうしてくれる

「どうしてくれんだよ全く…」

そんな俺の気も知らず、天下泰平とばかりに爆睡しているスネークの鼻を摘むと、ふがっと小さな声がしてビクッと肩が跳ねた
そのマヌケさに少しだけ鬱憤が晴れた気がしたが、どうにもモヤモヤする

「せっかく今日すんごい下着はいてきたのになぁ〜。ビキニだぞ、横を紐で結ぶTバックのやつ。アンタに見せたくて買ったのになぁ〜」

起きないかと期待を込めて、びよーっと両頬を摘んで伸ばしながらそう言ってみるけど、いっそ清々しいくらい爆睡しているスネークが起きる気配は微塵もない
もう、今日は無理だこりゃ
こうなったスネークは、何やったって起きやしない
人生諦めも肝心だと、スネークからイヤってほど教わったしな

「ほら、どけオッサン」

けど、このまま帰るのは悔しいし虚しすぎる
ベットの真ん中で寝てるスネークを蹴り飛ばし、どうにか俺が寝れるだけのスペースを作り隣に潜り込む

「邪魔するぞ」

目を覚ます気配すら見せないスネークに一応そういってから、シーツを被ってスネークの背中にギュッと抱きつく
せめてこれくらいさせてもらえないと、色々と俺の気が治まらない
そのまま目を閉じれば、スネークの息遣いとか心臓の音とかが聞こえてくる
できればスネークに抱きしめられて、気持ちいいことをしながら感じたかったけど…まぁこれで我慢しよう
でも、次こそは気付けよな























何か寝れなくてぽちぽちと書いた突発短文、低クオリティはいつものこと
気合入れまくったのに、肩透かしを喰らうカズが書きたかった

下着は完全に趣味です、多分ヒョウ柄か蛇柄です(コラ)

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