嘘から出た…?



今日は、4月1日
俗に言う、エイプリルフール
今日の午前中は、嘘を言ってもいい日という一種のイベントだ

「知ってるか?副指令ついに結婚するんだって」

「え、マジ!?」

「…嘘に決まってるだろ?」

「だよなぁ!くっそやられた!!」

MSF内の兵士達も、このささやかなイベントを楽しんでいるようだ
騙された方は夕食のデザートを差し出すという賭け事まで流行っているようだが、そんな可愛らしい賭け事まで規制する必要ないから放っておいている
たまに微妙な気分になる嘘が聞こえた気がしたが、スルーしておいた

「さぁってと、後は…」

そして俺も、手近な兵士…エイプリルフールの嘘をつく相手を探していた
自分でもお祭り男…イベントごとが大好きな性格をしていると自覚している
そんな俺に、エイプリルフールは絶好のイベントだ
さて、どんな嘘をつこうか
嘘をついていってもいいと言っても、やはり笑い飛ばせる類のものでなければならないし、誰かに迷惑をかけるものでもいけない
だが、普通の嘘じゃつまらない
どうせ嘘をつくなら、相手の驚いた顔が見たい
そうやって考えまくった結果
昨日の夜、あるとっておきの嘘を思いついた

「これならインパクトもあるし、エイプリルフールの嘘にもってこいだ!」

我ながら、最高の嘘だと思い、1人でこっそりとほくそ笑んだ
俺が思いついた嘘
目に付いた男に

『好きだ!抱かせろ!!』

と言って抱きついて迫る
無類の女好きとしてこのMSF内に知れ渡っている俺が、いきなり抱かせろと迫るのだ
きっと、みんな驚いて目を丸くするだろう
さすがに女相手にすれば怒られるが、男相手なら悪ふざけの一環として許してもらえるはずだ
そして俺は今朝から、目に付いた兵士に嘘をつきまくっている
一番最初に嘘をついたマングースは

『それが今年の嘘ですか?』

とニッコリと笑って俺にハグし返してきた挙句

『あ、そうだ副指令。部屋のマテ茶切れてますよ』

『え、マジ?』

『嘘ですよ、先週仕入れたじゃないですか』

逆に嘘までつき返されてしまった
付き合いが長いと、俺の思考回路まで読まれるから困る

まぁ、幸先は悪かったがこの嘘はおおむね好評だ
俺の目論見どおり目を丸くする奴、笑顔のまま固まる奴、顔を真っ赤にしてどもる奴、嘘でしょ副指令!と大笑いする奴、俺には恋人がっ…とアワアワする奴
三者三様のリアクションが拝めて楽しかったし、嘘だとばらせば予想通り爆笑か苦笑で許してもらえた
さて、後は…と、腕時計を見ながら考える
エイプリルフールは、後30分も残ってない
多分、次に会う奴で最後だろう

「あ、そうだ…スネークのとこいってないや」

さて最後は誰にしよう、と考えてふと思い出した
そういえば、スネークにはまだ嘘をついていない…というか、スネークの姿を今日は見かけていない

「…寝てんのかな?」

スネークは昨日、長期のミッションから帰ってきたばかりだ
多分疲れているだろうし、まだ寝ていても不思議じゃない

「…疲れてるなら、放っておこうかな?」

疲れているところに、くだらない嘘を言いに押しかけるのは少し気が引けたが
だが、これは年に一度のイベントだ
コレを逃せば、堂々と嘘がつけるのは1年後だ
それに、いつもはスネークに驚かされてばかりだ…たまには、スネークを驚かしてやりたい
そう思いなおして、スネークの部屋に突撃することにした

「スネーク、いるか?」

スネークがいるであろう私室の扉を、控えめにノックして小さく声をかける
これで返事が返ってこなかったら、諦めて他所へ行くことにしよう

「カズか、開いてるぞ」

だが、都合よくスネークは起きていたようだ
小さくガッツポーズをしてから、出来るだけ真面目な顔を作って部屋の扉を開ける
どうやらスネークは起きたばかりらしく、シャツにパンツという軽装でベットに腰掛けている
その頭には、しっかりと寝癖が付いている
その様に噴出しそうになるのをどうにか堪え、おもむろにスネークの側へと歩み寄る

「どうしたカズ、何かあったのか?」

「いや…ちょっと個人的な用事で…」

「珍しいな、お前が俺の部屋に私用で来るなんて」

少しだけ言いよどんだ風を装った俺の言葉に、スネークはいつものように葉巻を吹かしながら、どこかおかしそうに笑う
よし、全くもって警戒されていない
こっそりとほくそ笑んで…ふと、悪ふざけを思いついた
ココはスネークの部屋で、服装はかなりの軽装
しかも、座っている場所はベット

これは、嘘の内容的に押し倒さなければ男じゃない

「実は…ちょっと話があってさ」

「…どうした?」

真面目な顔を維持したまま、しおらしい声でそう言うと、スネークは真面目な話だと察したのだろう
すぐ側の灰皿に葉巻を押し付け、改めて俺に向き直った
その真面目な顔にちょっとだけ罪悪感が湧き上がったけど、それが驚きに歪む顔が見たい欲求が上回った

「スネーク…!」

スネークに体当たりする勢いでぶつかれば、油断しきっていたらしい体はベットへと倒れこむ
その体を体重で押さえ込めば、スネークの表情が驚きに満ち

「何のつもりだ、カズ」

すぐさま、鋭い目が俺を睨みつけてくる
その表情に、今すぐ笑い出してネタばらしをしてやりたくなる
だが、まだ嘘もついていないのにばらすわけにはいかないと、緩みそうになる口元をどうにか引き締める

「スネーク…アンタが好きだ、抱かせてくれ」

自分に出来る限りの真面目な顔で、出せるだけの真面目な声でそう告げれば
再び、スネークの目が驚きで丸くなり、何かを思案しているような顔になる
多分、何と言って断るか考えているんだろう

「スネーク…今日は…」

その表情に、達成感が湧き上がり
さて、ネタばらしをするかと口を開いた瞬間
視界が、ぐるりと回った

「…へ?」

さっきまで俺が背にしていたはずの添乗を、今度はスネークが背にしている
オマケに、さっきまで驚きに満ちていた顔が、物凄く楽しげなものに変わっている
そのことに、自然と背中に嫌な汗が浮かぶ

「カズ…お前の気持ちは嬉しいが…」

その嫌な予感を煽るように、スネークが俺の耳元に唇を寄せ

「俺も、お前を抱きたい」

そう、背筋が震えるほどのいい声で、囁いた

「ちょ、待ってスネーク!」

「安心しろ、悪いようにはしない…俺に任せていればいい」

「やっ…だ、だからっ!俺の話っ!!」

慌てて暴れたが、もう遅かった
そもそもスネークに力では勝てない上に、マウントボジションまで取られていては、そんな抵抗なんか焼け石に水だ

「だからっ…んぅっ」

オマケにどうにか状況を説明しようと開いた唇まで塞がれ、口の中で巧みに動き回る舌に自分の舌を絡め取られ
もうどうにもならなくなった俺は、ただスネークにされるがままになってしまった…

「…エイプリルフール?」

スネークがようやく俺の話を聞いてくれたのは
エイプリルフールなんかとっくに過ぎ去って、散々美味しく頂かれた後だった


















はいだらぁぁぁ間に合ったぁぁぁ!!!!!
相変わらずの突貫工事ですみません

- 43 -


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -