セクハラとお仕置きと・1



「…疲れた」

珍しく、ミッションも訓練もない日
俺は、書類地獄に見舞われてうんざりしていた

最近ミッションに出ずっぱりだったせいか、気が付いたら机の上に書類の山が出来ていた
さすがにカズからいい加減サインをしてくれと怒られ、強制的にミッションから外されて今日は書類整理の日になったのだが
自業自得だとわかっているが、終わりの見えない書類地獄にいい加減うんざりしてくる

気分転換に昼飯でも、と食堂へ足を向けると

「…カズ?」

ちょうど、昼飯を食い終わったところなのだろう
マングースを引き連れたカズが、ふと視界に入った
声をかけようかどうしようか迷っていると、不意にカズが俺の方へと視線を向け
かちりと、互いの視線がかち合った

「お、スネーク!今から昼飯か?」

その瞬間カズがぱぁっと満面の笑みを浮かべたかと思うと、いきなりこっちにダッシュして

「とうっ」

「ぐっ」

勢いよく俺に抱きつき…もといタックルをかましてきた挙句
さりげなく、股間を握ってきた

「はぁ…おいカズやめろ」

その勢いに崩れかけた体勢をどうにか保ち、カズの体をべりっと引き剥がすと同時にその手をパシリと払うと、カズがあからさまに唇を尖らせた

「いいじゃんケチ、触ったって減るもんじゃないしさぁ」

「減る、お前に触られると確実に減る」

「あはは、スネークったら照れ屋だなぁ」

相変わらず反省の色など欠片も無いその様に、自然とため息が漏れる
こいつは俺の何が気に入ったのか、最近セクハラまがいのことをやたらとされる

「何イライラしてんだよ、溜まってんの?抜いてやろうか?」

「いらん」

「照れるなって!お口とおてて、どっちがいい?」

「いらん、本当にいらん」

こうしていい笑顔と共に吐き出されるシモネタはまだ序の口
2人きりになれば必ず過剰なボディタッチの嵐
酷いときには脱がされそうになる
主に下半身を

最初に女の数を自慢してきたから女好きかと思えば、本人曰く女のほうが好きだけど男もいけるらしい
で、俺みたいな男はけっこうタイプらしい
その基準は何なんだと言いたくなるが、言ったところでまた力が抜けるようなことを言われるのは目に見えている
最初は軽くキレていたが、さすがに数ヶ月もこんなことを続けられれば自然と慣れる
意外に寂しがりやで甘えたで、構って欲しがりのカズのことだ
触る場所とか色々おかしいが、こいつなりのコミュニケーションのようなものだと思えば十分耐えられる

「そう?俺凄いよ?」

「だからいらんと言っているだろ、いい加減仕事に戻れ」

「へーいへい。それじゃスネーク、サボらずに仕事しろよ」

こうして一応相手してやれば満足するのか、しばらくは大人しい
今も一通り相手にされて満足したのか、あっさりと俺から離れると服司令室がある方向へと歩き出した
その背後で、マングースが俺に向かって必死に頭を下げている
その様に、自然とため息が漏れた

俺が書類整理で疲れているのはわかってるんだから、余計に疲れさせないで欲しい
どっと増えた精神的疲労を抱えて、俺は食堂へと足を運んだ

「…葉巻が、ない」

気分転換に食堂で夕食を食い、さらに気分転換にシャワーを浴びてたらカズからまたセクハラされ、どうにか書類地獄を終わらせ、ホッと息をついたのもつかの間
朝から吸っていた葉巻が終わり、さてもう一本…と葉巻を入れていた箱に手をかけ蓋を開けると
中身が、なかった
あれ?と思って、そして思い出す
あぁそうだ、今吸っているので最後だった…火をつけたのが朝のことだったから、失念していた

「確か、ここに予備が…」

まいったな…と思いながら机の引き出しを開け
絶句した
あるはずの葉巻の予備の箱も、ない
いつもは最低数箱はストックしてあるはずなのにどうして、と考え、そして思い出した
そういえば前回の補給で、煙草を頼むのを忘れていたのだ
今回は忘れずに頼んだが、それが来る前にストックが切れてしまったらしい
任務となれば、数日葉巻を吸えないこともしょっちゅうだが
こうして内勤なのに、葉巻が吸えない…しかも寝る前の一服がないとなれば、余計に吸いたくてたまらなくなる

「あー、くそっ」

苛立ちからガシガシと頭を掻いて、深呼吸をしてどうにか苛立ちを落ち着ける
もう、今夜は寝る前の一服は諦めてさっさと寝てしまおう
このマザーベースで葉巻を吸っているのは俺だけじゃない
明日、葉巻を吸ってるやつに恵んでもらおう
明後日には補給が来るはずだ、ほんの少しの辛抱だ
そう何とか自分を納得させ、ベットに横になった直後

「スネーク、寝れないなら俺とベットインしようぜ!」

空気を読まず、カズが突撃してきた
カズがこうして、寝る前にセクハラまがいの突撃をしてくることもよくある
いつもは、構って欲しいのだろうと適当に酒とつまみでも出し、満足するまで話し相手をしてやるが
昼間一日中なれない事務仕事をさせられた上に、葉巻まで切らして最高潮にイラついているときに、こうして空気も読まずに私室に突入されれば
いくら俺でも、キレる
それが、俺に書類地獄を言いつけた張本人とあらば、なおさらに

「…カズ?」

「…あ、ごめん…今機嫌最悪、か?」

起き上がってぎろりと睨みつけてやれば、さすがに俺の機嫌が悪いのが伝わったのかカズは気まずそうにへらりと笑った
その笑みにすらイラッときて
不意に、思いついた

俺がいつもあしらうだけだから、カズが調子に乗ってるんじゃないか?
俺が怒らないから、カズは俺の事を舐めきってるんじゃないか?

カズはその抜群の見た目とたっぷりの愛嬌を使い、何をやらかしても大抵は相手に許させてしまう
特に年上…俺に近い年の兵士などには効果が抜群で、カズのことを甘やかしまくっている
俺に会う前のことは知らないが、カズがずっとそうして過ごしてきたのなら
カズは、年上はいつも自分を甘やかしてくれると思っているだろう

なら、一度痛い目にあわせてやらねばならんだろう
カズはどんなに口で言っても、痛い目を見ないとわからないタイプだ
大人が何でも許してくれるわけじゃないって事を
大人を本気で怒らせるとどうなるか、その身に叩き込んでやる

「ごめんスネーク…じゃあおや…」

「いやカズ、ちょうどいいところにきてくれた。こっちこい」

半ば後ずさるように部屋を後にしようとするカズに、軽く手招きをする
それを見たカズはどこか怯えたような顔をしながらも、警戒しながらコチラに歩み寄ってきた

「な、何だよ…」

俺の側までやってきたカズは、腕を組んでサングラス越しに俺を睨みつけながら、憮然とした態度でそう言った
精一杯虚勢を張ってるつもりなんだろうが、睨みつけている瞳は揺れているし、指先で袖口を弄り回している
動揺しているのが、バレバレだ

「いや、眠れなくてな…」

その様に笑いを堪えながら、カズの手を取ってコチラに引き寄せ、背後のベットへと放り投げる
突然のことにカズは体勢を崩し、放り投げられるままにベットへと転がった

「ちょ、スネーク!?」

「だから、今夜はお前の誘いに乗ってやろうと思ってな」

「さ…誘いって…」

「お前が言ったんだろう?寝れないなら俺とベットインしようと」

怯えたようにベットの上でじりじりと後ずさりするカズを、ゆっくりと追い詰めていく
まるで獲物を追い詰めているような感覚
やがてカズの背がとんっとベットの柵にぶつかり、それを見計らって一気に距離を詰めた
白い頬に触れれば、カズの体がビクリと震えた

「あ、あれはっ」

「そうだな、手始めに抜いてもらおうか…口と手、どっちがいいか?だったか?」

昼間されたセクハラ発言を思い出しながら、ブリッジを持ってカズのグラサンを剥ぎ取って床へと投げる
何も隠すものがなくなった、蒼い瞳
困惑したように揺れる瞳が何故か甘く見えて、少しだけ息を呑んだ

「スネーク、あの…」

「口がいいな。凄いんだろう?それとも何か、あれは俺をからかっていただけか?ん?」

唇を親指でなぞれば、カズの目が不安げに俺を見上げてきた
その瞳に少しだけ罪悪感が湧き上がってきたが、これはカズにわからせてやるためなのだと思い直す
そうだ、こいつは少し痛い目を見なければわからない
悪かった、からかってた、もうしない
ちゃんとそういえば、許してやろう
そう思い、不安げに揺れる瞳をじっと見返す

だが、カズが予想外の行動に出た

ぐっと言葉に詰まったように体を震わせ、うろうろと視線をさ迷わせた後
目を伏せて、俺のベルトに手をかけた

「カズ?」

「わかった、よ…く、口だろ?」

カチャカチャと音を立ててベルトを外す手が、小さく震えているようにも見える
この様子に、今度はこちらが混乱してしまう
てっきりあれで謝ると思っていたのに、よほど謝りたくないのか、それとも俺の態度を本気だと勘違いしてしまったのか
本気で、俺のを口でするつもりらしい
一瞬止めようかと思ったが、今止めれば本気でなかったことがカズにも伝わるだろう
そうなれば、今以上に調子に乗るかもしれないし、またセクハラが激化するかもしれない
それだけは、俺も避けたいところだ

「っ…」

下着をずらし、俺のモノを取り出したカズは一瞬、息を呑み
思い切ったように、ぱくりと咥えた

「ぅ…カズ…」

「んっ…ん、ん…」

自分で凄いと言うだけあって、カズの舌使いは中々のものだ
刺激する場所も力加減も、絶妙で気持ちがいい
ねっとりと舌を絡ませながら吸われ、自然と腰が跳ねた
そんな俺の反応に、カズはどこか安心したような目を向けてきた
揺れる髪に手を差し入れて撫でてやれば、その目がどこか嬉しそうに細まる

無意識にやっているのか、それとも計算しているのか
その甘く濡れた瞳に、ズクリと腰が疼く
このままカズに任せていたい気がしたが、思考の隅で何かが待ったをかけてきた
この行為の目的は、カズに痛い目を見せることだ
それなら、少し乱暴にしてやらないと意味がないんじゃないか?
その考えは、まるで脳内を侵食するようにゆっくりと広がっていく

「カズ、もっと奥まで咥えろ」

カズが口を開いたのを見計らって、髪を撫でていた手で後頭部を掴み、予告もせずぐいっと腰に押し付ける

「んんーっ!」

油断しきっていたらしく、何の抵抗もなくずぶりと喉の奥まで入り込む
その瞬間カズの喉から引きつったような声が漏れ、ビクビクと体が震えた

「ほら、舌動かせ。気持ちよくないだろう?」

どうにか歯を立てまいと口を開くカズの頭をペチリと叩き、行為の続きを促す
カズは一瞬コチラを睨みつけてきたが、素直に舌を動かし始めた

「んくっ…んぅ、んっ」

喉の奥まで入り込んで、苦しいのだろう
必死に舌を動かしながら俺の様子を伺う目元に、ジワリと涙が滲んでいる
そのまま緩く腰を揺らせば、苦しげ濡れた瞳が細まった
その涙に、俺を見上げる濡れた瞳に、素直に舌を動かす様に
ぞわりと腹の奥が熱くなり、一気に射精感が沸きあがってくる

「っ…出すぞっ」

腰を揺らす速度を少し速め、苦しげに声を上げるカズにそう宣言する
カズも射精を促すように、舌を絡ませて喉の奥で締め付けてくる

「くぅっ」

その気持ちよさに任せるまま、カズの喉の奥へと欲を放った


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