マングースの幸せな日常



俺は名前を、遠い昔に捨てた
事情は割愛するけど、俺は名前も祖国も捨てた男だ
そしてたどり着いたこの場所では、マングースと呼ばれている
兵士達の中ではどちらかといえば小柄でさほど力のない俺は、人よりも少しだけ高い事務処理能力を買われ、副指令の右腕権雑用係としてここで過ごしている
今の生活に、何一つ不満はない
小柄な体格やここにはあまりいないどちらかといえばアジア系の顔立ちをからかわれたり、上司である副指令に色々無茶振りされて困ることは多々あれど、それでも俺はここでの生活は天国だと思ってる
からかわれるのはここでは一種のじゃれあいのようなものだし、副指令とは結構仲良くやれている
上司をこういうのはおかしいかもしれないが、ここで一番の友人だと勝手に思っている

「なぁマングース、俺の格好おかしくない?どっか変なとこない?」

その副指令は今、自慢の全身鏡の前に立ちそわそわと落ち着きなく鏡と自分の体、そして俺を忙しく見回している

「大丈夫です副指令!今日もバッチリ決まってます」

副指令の格好をざっと見渡し、何処もおかしいことがないのを確認して、軽く親指を立てて見せる
ほんと?と訴える副指令のどこか不安げな瞳を見返して、もう一度大丈夫ですよ、と言えば、ようやく副指令の顔が安堵に満ちた

副指令は今、恋をしている
相手はこのMSFの司令官…そう、我らがボスだ
最初その話を副指令本人から聞いたときは物凄く驚いたが、女性より男性の多いこのマザーベースでは、同性愛は別に珍しくともなんともない
女性にモテて相手に困らない副指令がそうだということには驚いたが、相手がボスなら納得せざるおえない
ノーマルな思考の俺から見ても、ボスは凄くかっこいいし優しいし、まさに理想の男ってやつだ
ボスのようなかっこいい男になりたいと夢見たことも、数え切れない
そんな相手に、副指令が恋をしても何もおかしいことはない

「副指令、ボスが到着したそうです」

「よし、じゃあ行くぞ…なぁほんとに大丈夫?あぁもう久しぶりすぎてドキドキする…」

「大丈夫ですって、ほら俺も後ろにいますから」

「いいか、絶対後ろにいろよ。逃げたら来月の給料カットだからな?」

「逃げませんって、ちゃんと後ろにいますから」

そして、副指令が恋する我らがボスが、2週間という長期任務を終えて帰ってきたのだ
そわそわしてしまうのは、しょうがない
副指令はヘリポートへ向かう道中も、しきりに髪形を気にしたり恥ずかしいから近くにいろなどとそわそわしている
その姿は、恋をしている人間特有のもので、とても微笑ましい

「よう!お帰りボス!」

「あぁ、ただいま」

ヘリポートに付いた途端さっきまでのそわそわとしていた素振りなど欠片も見せず、いつもの副指令としてボスに向かって腕を広げている
さすが副指令だなぁと思いながら、副指令の数m後ろで2人の姿を眺める
ヘリのローターの音が大きくて、何を話しているかはよく聞こえない
でも、後姿からも副指令がとても嬉しそうなのが伝わってきて、俺も嬉しい気持ちになる

俺をここに置いてくれたのは、副指令だ
銃の扱いもCQCも人並みかそれ以下、実戦部隊としては何一つ飛びぬけたところがないどころかむしろ落ちこぼれと言ってもよかった俺を

『お前計算早いな…なぁ、俺の補佐やる気ない?最近さすがに1人だときっつくてさぁ…ほら、ボス役に立たないし!』

たまたま近くで書類を書いていた俺を見ていた副指令が、いきなり自分の補佐へとスカウトしたのだ
そのことを副指令から聞いたボスは最初訝しげな顔をしていたけど、それでも互いがいいならいいだろうと言ってくれた

その時俺は自分の能力のなさに嘆き、ここにいていいのかと思い悩んでいた

『適材適所だって。お前戦闘苦手かもしれないけど、計算とか整理とか得意だろ?いやぁ、お前補佐になってから随分助かってんだぞ?だからマングース、マテ茶淹れてきて』

そんな俺を、副指令はそういって笑い飛ばしてくれた
そう、副指令がこのMSFでの居場所を作ってくれた

副指令は、俺の上司で友人で
一生頭が上がらない、恩人だ

「なぁマングース、俺変なこと言ってなかった?舞い上がっておかしなことしてなかった?」

ほんの少し昔の事へと思いを馳せていると、ボスとの会話を終えたらしい副指令が早足で俺のところへやってきた

「大丈夫ですよ、ちゃんと普通に話せてました!」

正直、ローターの音と昔に思いを馳せていたせいで、2人がどんな会話をしてたかなんて聞こえなかった
でも、俺のこの小さな嘘で副指令が笑うなら

「そっか…」

副指令が安心するなら、それくらいは許して欲しいと誰にでもなく思う

副指令の側で、補佐として精一杯頑張ること
副指令の右腕の名に恥じない、自分が出来る最高の仕事をすること

そして、副指令が幸せになるためのお手伝いをすること

それが俺が副指令に出来る精一杯の恩返しで
俺にとっての、最高の幸せ

「こう、久々に顔合わせるとさぁ…やっぱさ、ボスかっこいいよなぁって思うよな…」

「ですよね…俺もボスみたいになりたいと何度思ったことか」

「諦めろマングース、お前には絶対無理だ」

「…自分でもわかってますって」

その幸せを夢見て、俺は楽しそうな表情で先ほどの会話の内容とかっこよさを語る副指令の話に、笑いながら耳を傾けていた

「………」

「…ボス…あの2人に…マングースに、悪気は……」

「あぁ、わかっている…わかっているさ…」

このとき俺は迂闊なことに、俺達の後ろで副指令の差し入れたマウンテンデューの缶を凄い笑顔で握り潰しているボスにも
その側で、どこか虚ろな瞳で胃を押さえているホーネットにも、気付かなかった


















チャットでマングース×カズが盛り上がり、以前から温めていた女子高生なノリでキャッキャする2人が書きたくなったので勢いのまま書いた
我が家の2人は、基本的にはこんな関係
仲良しな女子高生のように、キャッキャしてます
そんな2人に嫉妬全開なスネークと、ある意味三角関係なこの状態に胃を痛めているホーネット

やべ、楽しい(コラ)

ちなみにコレは前提として、スネーク→←カズです
両想いだけど、互いにまだ告白してないみたいな




ちなみにマングースの詳細設定
年齢はカズとタメかちょい下
身長もカズよりちょっぴり低い程度だけど、筋肉量の差で小さく見えるタイプ
顔はどちらかと言えばアジア系、色々混じってる
困り眉(重要)にやや垂れ目の、イケメンではないけれど優しい顔つきの好青年
さらっさらの黒髪ストレート、瞳の色も暗褐色
カズの突然の無茶振りにも笑顔で答えるけど、ちょっぴり天然入ってる
ボスは憧れの人、副指令は上司で恩人で友人、ホーネットとも仲良し

うん、完全にオリキャラだけど許して欲しい
ネタが出れば続きます

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