ねぇ気付いて、と目が語る



「………」

俺はコーヒーを口に含みながら、現在進行形で物凄い居心地の悪さを感じていた
原因は、この部屋の主の視線

「………」

そう…カズがさっきから、チラチラとこっちを見てくるのだ

『すまんスネーク、書類がまだ終わらなくて…もう少しで終わるから、コーヒーでも飲んで待ってくれ』

俺がこの部屋へ来たとき、少し残っていた仕事を片付けていたらしいカズはそう言って俺にコーヒーを淹れ、すぐ側のデスクで書類整理を始めたのだが
さっきから書類が進んでいるようには見えない上、やたらとこちらを見てくる
本人は気付かれないようこちらの様子をうかがっているつもりらしいが、俺から見ればバレバレだ
だが、うっかりどうした?とでも聞けば、何でもないという返事と共にカズの機嫌が悪くなるのは目に見えている
なので、何も気付いていませんよという風を装って、そしらぬ顔でコーヒーを口に含みながら
さて、カズの欲求は何かと頭の中で考える

カズは、言いたい事は割とはっきりというタイプだ
日本人らしく愛想を振りまきオブラートに包んだりはするが、基本的に自分の意見があるならこうして様子をうかがってくることもない
こうして俺の様子を、まるで構ってくれと言わんばかりにうかがってくるときは
大体は、何かを褒めて欲しいか、何かを気付いて欲しいかの2択だ

時折何かしでかして叱られるのを怖がっているときもあるが、そういう時はもっと目が泳いでいる
ごくたまに情事の誘いをかけようとタイミングをはかっているときもあるが、そういう時はもっと目元に艶があるし、それなら俺が気づけないはずがない

「…このコーヒー美味いな」

とりあえず、一番簡単な可能性から当たってみる
カズの淹れるコーヒーが美味いのは周知の事実だが、今日は特に美味いと含みを持たせてカズの様子をうかがってみる
もしかしたら、豆をいいものに変えているのかもしれない

「そうか?」

カズは褒められてまんざらでもなさそうだが、そこまで嬉しそうでもなさそうだ
どうやら、こちらの様子をうかがっていた原因ではなさそうだ
後は…褒める要素は特に思いつかない
俺が部屋に来てカズがしたことといえば、コーヒーを淹れたくらいだし
マングースからもホーネットからも、カズが何か変わったことをしたという報告は入っていない

となれば、何かに気付いて欲しいのだろう
軽く部屋を見渡すが、カズの部屋にあからさまに物が増えた形跡はない
俺に気づいて欲しいものがあるなら、もっとわかりやすいところに置くはずだ
それならば、残るはカズ自身の外見
しかも、カズが俺に気づくことを期待するほどのあからさまな変化があったはずだ

ちらりと横目で、カズに気付かれないようにその姿を観察する

…髪のセットを変えたか?
いや…年齢よりも幼く見られがちな顔立ちを少しでも年相応に見せたいせいか
それともこのMSFの兵士達の中ではやや低めな身長を気にしているのか、きっちりと固められた髪は、いつもどおりしっかりと盛られている
些細な変化くらいはあるかもしれないが、いくらなんでもそれに俺が気づけるとカズも思ってないだろう

ならば、野戦服を新調したついでにデザインでも変えたか?
いや…今カズが着ている野戦服は、以前も着ていたもので間違いない
ついこの間、あれを思い切り剥ぎ取った覚えがある

時計…もカズのお気に入りのやつで、新調した様子もない
ならば靴…も、綺麗に磨かれているが、よく見れば傷がある。新調したわけではないだろう
下着…はさすがにないだろう
剥ぎ取ればわかるだろうが、今剥ぎ取れば確実にカズは怒る
カズは何かに気づいて欲しいらしいが…俺からすれば、何が変わっているのかさっぱりわからない

となれば、残る可能性は1つ

「おいカズ」

「何だスネーク?」

コーヒーカップをテーブルに置き、カズのほうへと向き直りながら声をかけると
カズはどこか嬉しそうに、けど精一杯それを抑えて平静を装った様子で俺のほうへ視線を向けた
その隠しきれていない期待が可愛いなぁと思いながら、俺は少しだけ笑って見せる

カズ自身はわかりやすいと思っているらしいが、俺から見たら何が違うのかさっぱりわからないもの
そんなもの、1つしかない

「サングラス、変えたか?」

カズがやたらとこだわっている、サングラス

「お!気付いたかスネーク!」

俺の問に、カズはぱぁ〜っとまるで花が咲くように一気に表情を明るくし
嬉しそうに声を弾ませながら、デスクから立ち上がってとことこと俺の隣へやってきた

どうやら、今回もこれで当たりだったらしい

「あぁ、似合ってるぞそれ」

「本当か?これ一目で気に入っちゃってさ…かっこいいだろ?」

…いつものサングラスと何が違うのか、俺にはさっぱりわからない

「あぁ、かっこいいぞ」

喉元まででかかった言葉を飲み込んで、カズの言葉を繰り返す
そうすれば、カズはいつもの通り満足そうに笑う

「だが…」

機嫌良さそうに笑うカズに、にやりと笑ってやり
ブリッジを摘んで、カズご自慢のサングラスを取ってやる
隠すものが何もなくなり、驚いたように丸くなった、少し垂れ気味の蒼い瞳が露わになる

「俺は、お前のその綺麗な目が見えるほうがいい」

ここまで苦労して機嫌をとってやったんだ
少しくらい、俺にリターンがあってもいいだろう

恥ずかしそうに少しだけ穂染まった目尻にキスを落とし、コーヒーカップの横にサングラスを置いて目の前の体を抱きしめる

カズも小さく体を捩りはするものの、目立った拒否はしない
どうやら、頑張って機嫌をとったかいはあったらしい

「やはり、サングラスがないほうが可愛いな」

「…バカスネーク」

カズはきつく睨んでいるつもりらしいが、サングラス越しならいざ知らず、何も隠すものがない潤んだ瞳で睨まれても可愛らしいだけだ
俺の前以外でサングラスを取らせたらいけないなと思いながら
誘うように尖らされた唇へと、自分のソレを重ねた























PW公式設定画集読んで
素顔のカズ可愛いよカズゥゥゥゥ!!!!!(*´д`)ハァハァ
となった記念(どんなだ)

カズが乙女でややウザく見えるのは仕様です
スネークなら、きっとこんなカズも可愛いと思ってくれるよ
カズが力いっぱい乙女な話が書きたい

すみません、バレンタインもちゃんとやります(滝汗)

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