貴方が死んだ、夢を見た
「そういやさ、俺この間アンタが死ぬ夢見た」
繰り返されるキスの合間に、ふとこの間見た夢を思い出した
俺としては、ふと思い出したことを何の気なく呟いただけだったが
「…カズ、それは遠まわしな拒否なのか?」
俺の上に覆いかぶさってキスを繰り返していたスネークは、はぁ…とため息を吐いてジトリと俺を見据えた
まぁ、これからヤろうというときに出す話題じゃないよな〜と自分でも思うが、ふと思い出しちまったんだから仕方ない
「いや別に、思い出しただけ」
続けてくれ、とねだるように見上げても、気がそれたのかスネークはまた大きなため息を吐きだした
「ごめん、怒った?」
「怒っちゃいないが、この稼業でそんな不吉な夢を見るんじゃない」
「しょうがないだろ、見ちゃったんだから」
「…で、俺が死んだ夢がどうしたって?」
ヤる前にこんな話題を出して、てっきり怒られると思っていたが
どうやら、スネークは俺の話を聞いてくれるらしい
こういうとこ優しいよな〜と思いながら、あの日見た夢を思い出す
「あぁ、アンタが死んだ夢を見たんだ…任務で、同行してた兵士を庇って胸を撃たれて…ほぼ即死だった」
「随分細かい設定だな」
「んで俺、その時無線でアンタのサポートしてたんだ」
その時俺は、いつものように管制塔で無線サポートしていた
慌てたようなスネークの声、何かを突き飛ばす音と同時に鳴り響いた銃声
搾り出すようなスネークのうめき声、悲鳴に近い兵士の声と同時に、どさりと何かが倒れるような音
その全てを、今でも生々しく思い出せる
状況を知らせるように叫んだ俺の耳に届いた、兵士の震える声
『ボスが…ボスが、俺を庇って…!!』
その声が、今でも耳の奥にこびりついている
俺はすぐさま上空に待機しているヘリにスネーク達の回収するよう指示を出し、混乱しかけている現場に活を入れ、医療班をヘリポートに待機させるようマングースに言いつけた
「いやぁ、我ながら完璧な指示だった。さすがは俺!」
「そうか、で?」
その時のことを思い出し、自画自賛している俺を半ば呆れたように見たスネークは、俺の話の続きを促す
「あぁ、ヘリに乗ってた奴らも医療班も頑張ってくれたんだが、アンタを助けられなかった…まぁ、ほぼ即死だったからしょうがないけど」
その時のマザーベースの様子は、まさにこの世の終わりといっても過言ではなかった
たくさんの兵士達が、スネークの遺体に縋って泣いていた
まだスネークの死を信じられず、呆然としている者もたくさんいた
「アンタ慕われてたからさ、みんな泣いてたぞ?あの博士も泣いてた」
「あの博士が?にわかには信じられんな」
「ホントだって、まぁ夢だから証明しようが無いけどな」
疑わしそうな顔をするスネークに、少しだけ笑って見せる
嘘は言っていない
本当に、みんな泣いていた
博士だけじゃなくヒューイも、チコも、アマンダも、セシールも、パスも
マザーベース中が、スネークの突然の死に呆然とし、哀しみ、泣いた
「でさ、ちゃんと葬式もしたんだぞ?大変だったんだからな、アンタの後追いしようとする兵士とか出てきて」
そいつらを宥め、マザーベースで最も大きな部屋で葬式をした
こんな稼業だ、兵士が死ぬこともある
だから、マザーベースではちゃんと葬式ができるようにしてあるし、遺書があればそれに従った方法で葬式を挙げる
スネークの遺書は見つからなかったから、ここで上げられる最高の葬式を挙げた
「俺すっごく頑張ったんだぞ、兵士達みんな使い物にならなくてさ」
「俺にそういわれても…というか、まるで本当にあったことのように話すんだな」
「…正直、リアルすぎて夢だって気付かなかったんだよ」
ついそう愚痴ってしまいたくなるほど、その夢はリアルだった
目が覚めて、食堂でバクバク飯を食うスネークを見るまで、夢だと気が付かなかったほどに
「綺麗だったぞ、アンタの死に顔。結構安らかでさ。骨も白くて綺麗だった」
「…あまり嬉しくはないな」
渋い顔をするスネークに、俺は苦笑を返すしか出来ない
みんなの泣き顔も、マザーベースで挙げた葬式も、全部全部はっきりと覚えている
体を焼いた後の骨の白さも、その美しさも
まるで、昨日のことのように思い出せる
「でもさ、俺泣けなかったんだよね」
俺があっけらかんとそう言うと、今までほとんど黙って俺の話を聞いていたスネークが、少しだけ眉を寄せた
そう、俺は泣けなかった
それほどリアルで、スネークが本当に死んだと思っていたのに
涙の1つも、零せなかった
いや、泣けなかったというよりも、何の感情も抱かなかったというほうが正しい
ヘリから降りてきた、生気のないスネークの顔を見ても
兵士達が集めた花に囲まれたスネークの顔を見ても
焼かれて真っ白な骨だけになったスネークを見ても
俺は、何の感情も抱けなかった
何も、感じなかった
「死に顔見てもさ、あぁ死んでんだな〜としか思わなかったし、骨は綺麗だったけど、それだけしか思わなかったし…辛いとか悲しいとか、全然思わなかった」
だから、俺は夢の中でずっと冷静に指示を出せていた
事務的に、副指令として指示を出し、葬式の準備を進めた
そんな俺をマングースたちが気遣ってくれたが…俺はそれにも何も感じなかった
こんなに愛した男が、最も大切な相手が死んだというのに
「何でだろうな?アンタに捨てられる夢見たときはすっごい辛くて泣いたのに」
「俺に聞くな…」
はぁ〜と大きなため息を吐くスネークに、怒らせたかな?と少し心配になる
「…怒ってる?」
「…いや、別に怒ってはいない」
一応そうは言ってくれるが、スネークの表情はとてつもなく微妙そうだ
まぁ恋人から、あなたが死んだ夢を見ましたが悲しくありませんでした、なんてことを言われれば微妙な気持ちにもなるか
「でさ、夢でアンタが死んだ日…明日なんだよね」
さらに、ふと気が付いたことを口にすれば
スネークの表情は、さらに微妙そうなものへと変化した
「お前な…縁起でもない夢見るんじゃない、俺は明日も任務あるんだぞ…」
「見ちゃったんだから、しょうがないだろ」
半ば開き直ってそういえば、スネークはまたため息を吐いた
一体この短時間でどれだけスネークの幸せが逃げたのだろうと考え、何となく悪いことをした気になる
「ごめん、呆れた?」
「呆れちゃいないが…どうせなら明日任務から帰るまで黙っていて欲しかったな」
少し困ったように笑うと、スネークは俺に口付けた
じょじょに深くなっていくそれに、スネークがさっきの続きをする気らしいと理解する
てっきりもう気がそがれて萎えたかと思っていたが、スネークは俺の話が終わるのを待っていただけらしい
こんな話を聞いてなお、俺を抱く気満々のスネークの性欲に半ば呆れながらも
まぁ、どうせ最初からヤる気だったんだからいいかと、俺は咥内に入り込む舌に自分のソレを絡めた
貴方が死んだ、夢を見た
緩やかにやってくる快楽の波に身を任せながら
明日目の前の男が死ななければいいなと、頭の隅でぼんやりと考えた
思いついた突発文
なので書いている本人も意味がよくわかってません(コラ)
カズがなぜ泣けなかったのかは、皆様のご想像にお任せします
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