拘束具と夜這い計画



…手錠よし、捕虜緊縛用の縄よし、Mk.22持った、睡眠ガスグレネード持った、後アレもオッケー
よし、完璧だ

草木も眠る丑三つ時、バックの中身を念入りに確認して俺は部屋を出た
見張りの巡回ルートは把握している
この時間、目的地までの間に兵士達はいない
それでも、念のために神経を研ぎ澄ましゆっくりと慣れた廊下を小走りに進んでいく
身につけているのは、いつもの野戦服ではなく我が研究開発班自慢のスニーキングスーツ
走っても足音が一切しないという優れもの
締め付けがちょっと苦しいが、これからのミッションにこのスーツは必要不可欠だ

俺にとって、決して失敗は許されない特別なミッション
とても重要で、俺の全てをかけているといってもいい

「よし…待ってろよ、スネーク…!」

これから俺は特別ミッション…このマザーベースの司令官で俺の恋人の、スネークの部屋に夜這いを掛けに行くのだ

スネークと恋人という関係になって随分になる
スネークは天然だしオッサンだし空気呼んでくれないし結構鬼畜な面もあるが、おおむね俺にとって理想的な恋人だ
ただ1つのことを除いて

「進路クリア、ムーヴ」

廊下の角から辺りを見回し、兵士がいないことを確認してからゆっくりとスネークの部屋の前へと移動する
鍵穴に持ってきた鍵を差込んで、出来るだけ音がしないようにゆっくりと開ける
カチリ、と小さな音がして、起こしてしまったかもしれないと感覚を研ぎ澄ませて中の気配を探る
何せ、相手は伝説の傭兵だ
何が原因で起きてしまうとかわからない
だが、部屋の中で何かが動く気配はない
そのことに安心して、俺はゆっくりと扉に手をかけて開いた

スネークとの関係に、おおむね不満はない
だが、1つだけ納得がいかないことがある

なぜ、俺がいつも女役なのか

俺達は同じ男のはずなのに、セックスのときはいつも俺が女役なのだ
いや、スネークとのセックスは気持ちいいし、ムカつくが俺のほうが小柄で力も弱い
最初は女役そのものが不満だったが、今ではしょうがないかと割り切っている

だが、俺だって男だ
スネークとほぼ同じからだの構造をしていて、同じモノがついている
別に毎回とは言わないが、たまには俺が男役をやったっていいじゃないか!
それをスネークは

『そうだな、お前だって上やりたいよな』

とか理解のあるふりをしておいて、いっつも気がついたら俺がスネークの下で喘いでいる
物凄く、納得がいかない
俺だって、たまには突っ込む側に回りたい事だってある
けど、怒っても拗ねてもねだっても宥めても理論武装しても
スネークは、男役を譲ってくれる気はさらさらないらしい
力ずくでいこうにも、俺のほうが力が弱いのであっさりとひっくり返されてしまう
普段内勤でいっぱいいっぱいの俺と、戦車やAI兵器の前でミサイルしょって走り回っているスネークの筋力の差は、物凄くデカイ

だからこうして、夜這いに来ているのだ
いくらスネークでも、拘束されてしまえば俺を跳ね除けることは出来ないだろう
そうすれば、俺の思いのままだ
本当はこんな強引な手は使いたくないが…スネークが素直に男役譲ってくれないのが悪い!

そう思いながら、そろりそろりとベットの上のスネークに近づく
十分当てられる距離まで近づいてから、Mk.22を構える
スネークを拘束するには、眠らせてしまうのが一番だ
射撃の腕には自信がある、この距離なら外さない
しっかりと狙いを定めて、引き金に指をかけ引いた…

「…カズ、何してる」

瞬間、ばらりと銃がただの金属の塊へと変化した
そして、俺の正面には眠そうにあくびをするスネーク

ヤバイ、失敗した!
瞬時にそう判断して、手の中の金属を捨てて距離をとりながら睡眠ガスグレネードを手に取りスネークに投げようとした…

「おいおい、やけに物騒なもの持ってるな」

瞬間、スネークの手が目にも留まらぬ早業で飛んできて、投げようとしたソレを奪い部屋の隅へと放り投げる
ぽふんっとマヌケな音を立てて、俺達とはまったく関係のない場所でソレは炸裂した

くそっ!さすが伝説の傭兵!!
スネークの凄さを実感しながら、俺は降参の意を示して両手を挙げてみせる
もちろん、本当に降参するつもりは、ない
降参しようものなら、スネークに何をされるかわからない
主に、性的な意味で

「すまん、スネーク…降参だ」

「で、お前は何でココにいる?」

「いやぁ〜…ちょっと夜這いをかけに?」

スネークお気に入りの少しだけ唇を尖らせた顔で上目遣いで見上げ、こてんと可愛らしく首を傾げて見せる
瞬間、スネークの顔がデレっと崩れた
…よし、計画通り

「ほぉ…嬉しいじゃないか、お前が俺に夜這いをかけに来てくれるとは」

「俺だって、たまにはそういうことしたい気分になるんだよ。悪いか?」

「いいやぁ、悪くない」

甘えるようににこりと笑うと、スネークは嬉しそうに俺の腰を抱き寄せようとする
先ほどまでの伝説の傭兵モードはどこへやら
今のスネークは子どもでも殺せそうなほど隙だらけだ

この瞬間を、待っていた

俺は息を止めて、その場で大きく飛び上がった
実は、万が一に備えてベルトに細工をしておいたのだ
バックに隠れるように取り付けておいた、スモークグレネード
改造してピンが力を入れなくとも、すぐに抜けるようになっている
例えば、俺が思いっきり飛び上がって着地したら、あっさりと抜けてしまうくらいに

どんっと地面に足がつき、一瞬遅れて足元に衝撃を感じて煙があたり一面に広がる
ゲホゲホと、スネークが咳き込む声が聞こえる
その声を聞き、俺は身を翻して全速力で扉へと向かう
こんなこともあろうかと、ちょっとだけ扉は開けておいた
飛び出して自室に戻って鍵をかければ、明日あたりスネークには怒られるだろうが、今すぐにお仕置きされることはない

念には念を入れておいて、正解だった
そう思いながら、扉へと走っていると
いきなりどんっと、何かにぶつかった
そのぶつかった何かは、不意うちを受け後ろに倒れようとしていた俺をぎゅっと抱きしめた
この腕を、体を俺はよぉぉぉく知っている
慌てて離れようとしたが、腕はしっかりと俺を抱きしめて離そうとしない

やがて、煙がゆっくりと消えていき

「おいカズ、どこへ行く気だ?」

満面の笑みを浮かべたスネークが、視界いっぱいに広がった

「え〜、とぉ〜」

ダラダラと伝う冷や汗を感じながら、へらっと笑って見せると、スネークもにまりと笑みを深め
俺を抱きしめたまま俺の腰のバックを、器用にあさり始めた

「ほぉ…手錠に捕虜緊縛用の縄、か…」

その声に、その笑みに、ものっ凄く嫌な予感しかしない

「さて…カズ、ベット行こうか」

「え〜っと…なぁスネーク…」

「お前がわざわざ、緊縛プレイがしたいと夜這いをかけてくれたんだ。期待にこたえなければ男じゃない」

「こ、答えなくていい!って言うか違うんだスネーク、俺の話を聞いてくれ!!」

いや、ある意味違わないけど!
俺が縛られたいんじゃなくて…!
慌てて逃げ出そうとするも、スネークは俺をがっちりとその腕で拘束したままズルズルとベットへと引きずっていく
部屋に鎮座するベットが処刑台にしか見えなくて、目の前が真っ暗になる

「照れなくてもいい、たまには縛られて少々乱暴にされたい夜もあるだろう」

「ないないないない!!ないから、乱暴にしなくていいから!!」

「そうか、なら優しく縛ってやろう」

「いい、ほんといいから!!…ちょ、あっ」

「可愛いぞ、カズ…スニーキングスーツもよく似合う」

「やめっ…あ、あぁっ」

こうして、ミッションに失敗した俺の夜はふけていくのだった





















あまりに素敵なお題だったので、抑止できなかった
後悔とか反省とかあまりしていない
地味に続けていこうかと思う

お題・受攻逆転を狙うネコさんの御題
配布先・モノクロメルヘン

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