僕しか知らない君



長引いた書類整理を終えて部屋に戻れば、なぜかスネークが俺のベットの上で眠っていた

「スネーク…」

いや、忙しい俺とは違って、今日は暇で副指令室に用事もないのに居座っていたスネークを

『俺は忙しいから部屋ででも待っててくれ』

と、数時間前に半ば強引に追い出したが
まさか本当に俺の部屋にきて、しかも寝ているなんて思わなかった

「なんて恰好で寝てるんだ…」

しかも、その寝姿はマヌケとしか言いようがない

広いベットを全体的に使ってダイナミックな恰好で寝ている
跳ね飛ばしたのか、シーツは体にはほとんどかかっていないし
寝返りでもうったのか、野戦服が捲れて腹が出ている
しかも、ぽかりとだらしなく空いた口からは涎が垂れている

これがあのビッグボス
世界を三度にわたる核戦争の危機から救い、世界を渡り歩いた伝説の傭兵
この軍事要塞MSFの司令官
もはやカリスマと言っていい男の寝姿か…

そう思うと、なぜかどっと疲れがのしかかる

「おいスネーク…起きろ」

何がカリスマだ、伝説の傭兵だ
天然入ってるし食い物には目がないし
ほっとくとすぐ段ボールに入ってるしジャングルに行けば何かしらキャプチャーして帰ってくるし
すげぇエロ親父だし結構Sっ気強いし独占欲強い割にデリカシー皆無だし
しつこいしねちっこいしその上遅漏だし人の話聞いてくれないし

だんだんとムカついてきて、平和そうに眠るスネークの鼻を摘んでやると、ふがっとマヌケな声があがり
何の夢を見てるんだか、その口元が幸せそうに孤を描いた

「ん…カズゥ…」

「…何の夢を見てるんだ何の」

でも、まぁ
伝説の傭兵のそんな情けない部分を知ってるのは
小さな物音一つで飛び起きるアンタが、俺の前ではこうも爆睡しているというのは

なかなか、悪くない

「好きだぞ、スネーク」

少しだけ気分がよくなって、耳元でそう囁いた瞬間
スネークの腕が俺の背中にまわり、すごい力で引き寄せられた

「す、スネーク?」

まさか、起きたのか?

そう思ってスネークを見上げれば、何やらうにゃうにゃと訳のわからない事を呟いている

「…スネーク?」

「カズ…すきだ…」

むにゃ、とうわごとのようにそう呟いて
俺をしっかりと腕の中に納めて

幸せそうに、笑った

「…狡い」

すやすやと寝息を立て始めたスネークの胸に顔を埋めてはぁ…とため息を吐く
頬が、熱い
あんな幸せそうな顔で笑われたら、どうしたらいいのかわからない

これじゃ、アンタをたたき起こす事も出来ないじゃないか

抜け出すのを諦めて、俺もスネークの背中に腕をまわす

「カズ…」

すると、寝ているはずなのにスネークが俺の名前を呼ぶ
その声は、何だかすごく嬉しそうだ

「いい夢見てんのかよチクショウ」

夢の中で俺は、何をしてるんだろうか?
スネークが喜ぶ事をしてるんだろうか

「早く目覚ませバカスネーク」

現実の俺だって、今アンタに抱き着いてるぞ
なんて嫉妬じみた考えが一瞬頭に浮かび、自然とため息が漏れる
夢に嫉妬とか、どこの夢見る乙女だ

こうなったらいっそ、俺もスネークの夢を見てやる
そう心に誓い、暖かな腕の中で目を閉じた













PC使えないから、小ネタに書いてたら長くなった
だからお引越してみた

あれです、タイトルとオチが合っていないのは、オチが考えていたものから大幅にズレたせいです

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