ある寒くなった日の話



「スネーク、これから暖かくなるまでセックス禁止な」

これから事におよぼうかという、長くて濃厚なキスの後
カズは俺の目を見てきっぱりとそう言った

「ど、どうしてだカズ!?」

しかも、その理由が

「スネークと一緒に寝るのがイヤだ」

という、わけのわからないものだった

カズは、最近俺と寝てくれなくなった
いや、事をいたさないというわけではない
誘えば、恥ずかしがりながらもよっぽどのことがない限り応じてくれる
そんなカズの恥ずかしがる様を堪能しながらするセックスはまた格別なのだが
問題は、終わった後だ
今までは、終わった後はくっついて甘えてくるカズを抱きしめたまま一緒に眠ることが多かった
けど、最近は終わった後、カズはさっさと服を着て自室に帰ってしまう
俺が引き止めても

『自分の部屋で寝たい』

と、一蹴されてしまう

終わった後カズに甘えられることが楽しみで、一緒に寝ることが好きな俺としてはいささか不満に思う
それほど広くないベットだが、カズがいないと少し広く寒く感じる
セックスの後は、なおさらだ

終わった後、カズの温もりを感じながら眠りにつく幸せ
隣に愛しい人の温もりがあるというのは、とても安心できるし心地いい
カズもそうだと思っていた
だから、以前はセックスの後は俺に甘えてきているんだと、そう思っていた
けど、最近は余韻を楽しむ暇もなく自室に帰ってしまうものだから、少し寂しく思っていたし、不満にも思っていた
その矢先、いきなり暖かくなるまでのセックス禁止発言
そんなの、耐えられるわけがない

俺とのセックスが嫌になってそんなことを言い出したのだろうか?
俺とセックスしたくなくなるほど、俺は嫌われてしまったのか?
そんな疑問が、頭の中を埋めつくしていく

「どうしてだカズ!?俺のことが嫌いになったのか!!?」

「い、いや…嫌いになんかなってない」

だが、カズは別に俺のことが嫌いになったわけじゃないらしい
今も、何でそんなことを言い出したのかさっぱりわかっていないような表情で俺を見ている
なら、なぜ暖かくなるまでセックス禁止とか拷問のようなことを言い出したんだ…

「じゃあどうして?」

俺のあまりにも真剣な表情に気圧されたのか
カズは、言いにくそうに口を開いた

「あのさ…やっぱ、その…セックスした後って、裸で寝ることが多いだろ?」

セックス、という単語を口にするとき、恥ずかしいのかほんの少しだけ視線をそらすカズを可愛いと思いつつも、今はカズの言葉に耳を傾ける

「あぁ、そうだな」

「でさ、最近寒くなってきただろ?でさ…抱きついてくるんだ、夜中に」

「誰が?」

「…アンタ以外に誰がいるっていうんだよ」

じとり、と睨みつけてくるカズに悪い、と謝りながらも
どうにも、腑に落ちない

カズの言葉から推測するには、俺と一緒に寝たくない理由は
裸で寝ると夜中に寒くなり、俺がカズに抱きつくことにあるらしい
だが、抱きついて寝るのはいつものことだ
目が覚めたら、カズを抱き枕にしていたというのも珍しくないし、暖かかった間もそれがよくあった

『スネーク…俺抱き枕じゃないんだけど?』

目が覚めたカズが困ったように、でもじゃれるよう顔でよくそう言っていた
そんなカズにキスをして、抱きしめなおして2度寝するのも楽しみの一つだった

「…それくらい、よくあっただろ?抱きつかれるのがイヤなのか?」

「だ、抱きつかれるのはイヤじゃない…」

「じゃあどうして」

「寒くなってから、何か力強いんだよ…寒いって言いながら抱きついてくる」

ため息を吐きながら、カズは俺の目を真っ直ぐに見つめてきた

確かに、ここ最近一気に冷え込んだ
思い返せば、カズが一緒に寝てくれなくなったのも寒くなり始めた頃からかもしれない
だが、それと一緒に寝ないのと何の関係が?

疑問符を浮かべながらカズを見ていると、もう一度カズはでかいため息を吐いた

「で…時々、首に入るんだ」

「首?」

「チョークスリーパーかけてくるんだよ、アンタ。寒いって言いながら」

まさか、と一瞬思ったが
カズの目は、マジだった

「3回に1回の割合でだ。しかも、無意識だから本気だし。もう何回も腕を外す前に落ちそうになったことがある」

「あ…あぁ…」

「暖かいときも首に腕がまわることはあったけど、ほんの少し息苦しい程度だったんだ。でも、寒くなってから力が強くなって、最近本気で命の危機を感じるんだよ」

「す…すまん…」

「俺はアンタを愛してるし、一緒に寝たいとも思ってる。でも、命かけてまで寝たいとは思わない」

こんなことで死んでたまるか!と実感の篭った声でぼやくカズに、何も言い返せない
俺も、そんなくだらないことでカズを殺したくはない

けど、寒くなってきたからこそ、一緒に寝たい
寒さで目が覚めたとき、隣にカズがいないというのは随分と虚しくて寂しい
けど、それでカズを苦しめたり、まして命の危機に晒すなんてのはイヤだ
けど、やはり一緒に寝たい

どうするべきかとうんうんと唸りながら、必死に頭を働かせていると

「服…」

呆れたようなため息とともに、カズが口を開いた

「服?」

「寝るときにちゃんと服着込んでくれるなら、一緒に寝てもいい。服着てれば寒くないだろうし」

どうやら、俺があまりにも悩んでるから妥協案を出してくれたらしい
少し照れくさいのだろう、視線をそらすカズの頬はほんのりと赤い
その反応に、そういえばセックスに誘っている最中だったのだと思い出す

「わかった、必ず服を着て寝よう…だからカズ…」

その体を抱きしめて、ちゅっと軽く唇にキスを落としてやれば
潤んだ瞳が俺を見つめ、ことりと体を俺に預けてくる

どうやら、先に進んでもいいらしい

「ちゃんと、服着て寝てくれよ?」

「約束しよう」

どこか期待に満ちた目で俺を見上げるカズに、ズクリと欲情を刺激され
その体を、後ろのベットに押し倒した

これからは、ちゃんと服を着こんで寝ようと思いながら

















以前チャットで話した、寒くなると無意識チョークスリーパーかけるスネークの話
急に冷え込んだので形にしてみた
ギャグですよ、ええ…

MSFがある場所は南米だから寒くならんだろうとかいうのは全力でスルー
あれです、パラレルだと思ってください
スネークは寝るときに服を着なさそうという妄想だけから生まれた話
夜中に寒くなると、暖を求めてカズに抱きつく
夏だろうかなんだろうが抱きつきますが、暖を取るという目的のためにやたら力が入る
で、カズが3日に1回死に掛ける(オイ)
ここまでカズが我慢したのは、スネークへの愛の賜物です
きっと、これ以降スネークは大げさなまでにモコモコに着こんで寝ます
で、今度はカズが暑くてたまらんくなる予感がします

気がついた、我が家のカズは基本的に不憫だ
今更ですね、ええ…

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