Lover of sweet cake



「…カズ、お前何か付けているのか?」

事務作業に勤しむカズとは違い、訓練も任務もなく暇な俺はカズの仕事をする姿をぼんやりと眺めていた
手伝えればいいのだろうが、手伝うとカズに言ったところ

『いや、アンタはそこでマテ茶でも飲んでてくれ』

と、やんわりと断られた
だから、ひたすらにカズの後姿を眺めていたわけだが
ふわりと、カズから漂ってきた香り…いつもカズが漂わせている香りだ…が何となく気になって、作業中のカズに声をかけてみる
もう作業も終わりかけているのか、カズはくるりと振り返って、小さく笑った

「どうした急に」

「いい匂いがする」

「香水じゃないか?気に入ったなら、アンタもつけてみるか?」

「いや、いい」

軽く首を振って見せると、そうか?とカズは首を傾げてから再び書類に向き合った

カズは、血と硝煙と葉巻の匂いしかしない俺なんかとは違って
とても、いい匂いが
とても、甘い匂いがする

タバコの匂いでもない
香水の匂いでもない

たとえるなら、砂糖菓子の匂い
甘い甘い、お菓子の匂い

そのあまりにも甘い匂いに
カズが実はお菓子でできているという、笑える妄想が頭の中を過ぎる
くだらないとは思うが、暇なせいかどうしてもその妄想が頭を離れない

もしも、カズがお菓子なら
あのふっくらとした頬はマシュマロだ
綺麗な蒼い目玉は甘い飴玉
赤い唇と舌はイチゴ味のグミで、歯は白いコーティングを施されたチョコレート
喉には、音の出る飴がたっぷり詰まってる
髪の毛は、さしずめわたあめといったところか

―いいな、美味そうだ

四肢を覆う白い皮膚は極上の砂糖でつくられたコーティングで
その下は、きっと極上のケーキだ
骨は白いミルク味のキャンディで、内臓はベリーとヨーグルトのゼリーとプリン
血はブルーベリーのジュースだろう

―いいな、たまらない

指先はクッキーで、薄い爪は薄いキャンディーで
脳みそはバニラ味のアイスクリーム
心臓は、何でできているんだろうか
きっと想像もできないくらい甘くて美味いものでできているんだろう
極上の菓子で作られた、カズの心臓だからな

―いいな、今すぐ食ってしまいたい

でも、食ったりはしない
だって、食ったらなくなってしまうじゃないか
カズがいなくなるのはいやだ
だから、食いたいけど我慢する

―甘い甘い匂い
―甘くて美味しそうな匂い

あぁでも
指の1本ならいいだろうか?
指は片手に5本ある
1本くらい食ったって、困りはしないだろう

―甘い甘い匂い
―蝶を誘う花の蜜みたいな匂い

それに、あの飴玉も2つある
1つくらいなくなったって、困りはしない
カズみたいに綺麗でも美味そうでもないが
俺も、1つしか持っていないが不自由していない

―甘い甘い匂い
―俺を誘う抗いがたい匂い

そうだ、俺と同じ場所を抉ってお揃いにしてしまおうか
それとも、俺とは逆の飴玉にして2人で一対の飴玉にしてしまおうか
それに、歯だってたくさんある
1個か2個食ったって、なくなりはしないだろうか

―甘い甘い匂い
―他の奴も誘う罪作りな匂い

あぁ、そういえば耳も2つあるじゃないか
髪の毛だって、ほっといたらまた生えてくる
腕も足も、2本あるじゃないか
なんだ
食えるとこ、たくさんあるじゃないか
食ったって、カズはなくならないじゃないか

―食べてしまえ
―カズが俺の側にいるうちに

甘いベリーのジュースの海の中
クッキー飴玉わたあめチョコレートキャンディーにケーキ
味見できる部分はたくさんある

―食べてしまえ
―他の奴に盗られてしまう前に

「おいカズ」

目の前で書類に目を通す、甘いお菓子の名前を呼んでみる

「何だスネーク?これで最後だからもうちょっと待ってくれ」

カズは振り向かないまま、そう答えた

我慢できずに立ち上がって、後ろからカズを抱きしめれば
驚いたような声と、甘い匂いが強く漂ってきて
おれはそのまま、カズの


















どんな作品にハマッても、一度は書きたくなるカニバ願望
カズは甘い匂いしそうだよねという、どうしようもない妄想から生まれた話

カズが食われたのか否か
それは、皆様の想像にお任せします

お菓子のレパートリーが貧困なのは、管理人の頭が残念性能なせいです

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