もしも俺が死んだなら



「なぁカズ、もし俺が死んだらどうする?」

いきなりスネークがそう言いだしたのは、裸でベットを共にし、一通りの行為を終えてじゃれているときだった
まるで、明日の朝飯の話でもするようにさらりとしゃれにならないことを言うスネークに、俺はため息をついた

「おいおいスネーク…こんな時にそんなしゃれにならないこというなよ…」

がっくりと肩を落とす俺を、スネークは不思議そうに見つめている

俺達は、戦場を生きる場所とし、戦いを生業としている
つまり、いつ死んでもおかしくないのだ
こうして俺の髪を愛しげに撫でているスネークも、呆れたような目でスネークを見ている俺も
24時間後に、またこうして夜を共にしていられる保証なんかない

というか、例え俺達が生死に関わりない世界で生きていたとしても
ピロートークに俺が死んだらどうするって、そんな重い話題を出すなよ

「せっかくのいいムードぶち壊しじゃないか…」

せっかくいいムードだったのに、その話題で台無しだ
主に、俺の気持ちが
いくら男同士でも、ムードは大事にしようじゃないか
一応ホラ、恋人同士なんだしさ

「そうか?そりゃすまん」

だが、性欲と食欲と睡眠欲…いわゆる本能で生きているこの男はイマイチわかっていないらしい
一応謝ってはいるものの
で、どうなんだ?と答えを促してくる

もう、コイツにムードとか期待するのやめよう

半ば諦めムードで、スネークをジトリと睨めば
まるで、何かを期待する子どものような顔をしていて、余計ため息が漏れた

「そうだなぁ…」

もう色々と諦めて、スネークの問に答えてやるために思考を巡らせる

「…食っちまう、かな?」

「食う?俺をか?」

「アンタ以外に誰がいる?」

きっと予想だにしていなかった言葉に、スネークは目を丸くして俺を見る
そんなスネークが何だかおかしくて、俺は笑みを抑えきれない

「意外だな」

「だって、もったいないじゃないか」

誰よりも愛してるスネークを、自然に還すなんてもったいない

もしも、俺より先にスネークが死んだら

残された体をばらばらにして
肉を引き裂き、骨を粉々に砕いて
脳みそや片方しか残ってない目玉は舌でゆっくりと溶かして
血も一滴残らず啜りとって
髪の毛の一本すら残さずに

全て、俺の体内に納めてしまおう

大地になんか還さない
風になんかしてやらない
その体も、魂も
輪廻の輪に、戻してやるもんか

たとえ死んだとしても…いや、俺を置いて死ぬからこそ
俺から離したりしない、自由にもさせない

アンタは
俺のものだ

「で、スネークは俺が死んだらどうするんだ?やっぱ食うのか?」

俺の質問に答えたカズは、ニヤニヤといたずらをする子どものような顔で笑いながら俺の顔を覗き込む
その顔は期待に満ちていて、少しだけ困ってしまう

「ふむ…そうだな…」

食うのも、悪くないと思う
無駄な肉のない体も、白くて決めの細かい肌も、俺とは違う蒼色の飴玉みたいな瞳も、沢山の情報が詰まっている脳みそも
きっと、美味いなんて言葉じゃあらわせないくらい極上の味なのだろう
そう思うと、自然と生唾が湧き上がってくるが

「………食いは、しないな」

少しだけ考えて、そう答えてやると、今度はカズの目が驚いたように丸くなった

「食わないのか?」

「何だ、食って欲しいのか?」

「いや…食って欲しいか欲しくないかといわれれば、食って欲しくないが…意外だな、アンタは絶対食うって言うかと思った」

「食うのもいいが、食ったらなくなるだろ」

そういうと、カズはきょとんとした表情で、不思議そうに俺を見つめる
その様子がおかしくて、俺は声を上げて笑ってしまった

食ってしまえば、なくなってしまうじゃないか
こんなにも愛しくて可愛い、カズヒラ・ミラーという人間の形が
それは、ものすごくもったいないだろう?

「じゃあ、どうするんだ?」

「決まってる…そのまま残す」

「そのまま?」

「あぁ、そのままの形で、綺麗に残してやる」

もしも、カズが俺より先に死んだなら

その体を綺麗に洗って、全身の血を綺麗に抜いて
一流の技術者を雇って、まるで眠っていると錯覚するほど綺麗な剥製にしてやろう
そしたら、純白のベットに寝かせて
抜いた血を固めて作った宝石で彩って
キスをして、髪をなでて、抱きしめて
毎日、飽きるほどに愛してると囁いてやろう

そうして、永遠に俺の側にいろ

この世界から、お前という存在を消してやらない
永遠にこの場所にとどめて、縛り付けて
この命が終わるまで、俺と愛を紡いでいればいい

俺をここへヒトリ残して逝こうなんて、甘いことは考えるな
お前は、俺が死ぬまで俺と一緒にいろ

お前は
俺のものだ

「だから、死ぬときはできるだけ傷を付けずに死ぬんだぞ…特に顔」

「…まぁ、善処する…ならアンタも、死ぬときは遺体が回収可能な状況で死んでくれよ、できるだけ完全な状態で」

「あぁ、善処しよう」

俺達は、そういってお互いに顔を見合わせ
どちらともなく、声を上げて笑いあった



もしも俺が死んだなら



「俺を食うなら、お前が捌けよ?」

「もちろんさ、きちんと俺の手で捌いて調理するさ」

「ほう、それは楽しみだ」

「アンタも、どうせ残すなら綺麗に残してくれよ?」

「もちろんだ、世界一の技術者を雇って世界一綺麗な剥製にしてやろう」

「はは、そりゃ楽しみだ」

2人でシーツに包まって
指先を甘く絡めあって
いつか訪れるかもしれない未来の話をする

そう考えれば、これも立派なピロートークなのかもしれないなぁと
ぼんやりと、そんなことを考えた




















セーブデータ吹っ飛んで落ち込んだ気分を、暗い小説書いて晴らしてしまおうキャンペーン(意味不)
落ち込んだときに暗い話や狂気の話を書くと気分が復活するんです

遠い昔に別ジャンルで書いた話のリメイク
ヤンデレ大好きなんで、こういうお互いにどこか狂ってる話を書くのが好きです

カズにはオーソドックスに食ってもらいましたが、スネークはちょっと変化球で剥製製作

まぁ狂気スネークはカズ死んだら間違いなく食うだろ
というか、生きててもいつか食うだろうとか思ってます
そんな話の構想も練ってますが(オイ)
ですが、あえて今回は残す方向で
人間の剥製って、作るのほぼ不可能らしいですが
スネークは大枚はたいて、めちゃくちゃ労力かけてでも残しそうな気がする
愛しいカズのためだから!

うん、何を力説している自分
ちゃんと仕上げます…1000hit…

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