MSFの華麗なる日常・1



ある日の、平和なMSF

楽しそうに兵士達と会話を楽しむミラー副指令を眺めながら
ゆっくりと昼食を楽しんでいた俺…マナティの元に、何が小さな塊が投げつけられた
薄い水色をした紙を丸めたそれを、一瞬で手の中に収め
誰にも見られないように、ゆっくりと開く

中には、特殊な暗号文で

【本日一九三○時 MSF緊急会議召集 第三会議室集合セヨ】

と書かれていた

緊急会議
その言葉に、一気に気持ちが緊張する
定例会議までは、まだ間がある
この時期に緊急会議とは…何が、重大な問題が起こったに違いない
俺は、この食堂のどこかにいる同士に、軽く伸びをするように…了解のサインを送り
待ち受ける会議を思いながら、マテ茶を流し込んだ





「…よし、みんな集まったようだな」

指定された時刻
指定された第三会議室には、男女合わせて120人ほどの兵士達が集まっていた
それを見渡して、壇上のジュラフ隊長が声を張り上げる

「これより、MSF…Millar Second-in-command Fan club【ミラー副指令ファンクラブ】緊急会議を始める!」

ミラー副指令ファンクラブ
それは、我らが副指令、カズヒラ・ミラーを敬愛し、その姿をみんなで愛で、みんなで愛するための組織だ
会員数は約120人、ジュラフ隊長を筆頭にし、オポッサム&アイリス両副隊長を含む5人の幹部が中心となって運営する、マザーベース内で最大の勢力だ
普段は、ミラー副指令をみんなで観察したり、不遜な感情を持つ輩が近づいたりしないように自主的に警護したりしながら
月に一度ほどみんなで集まり、今月のミラー副指令について語り合ったり、自主的に作った会報なんかを楽しむ比較的平和な組織だ

けれど、ごくまれにこうして緊急会議が開かれることがある
それはすなわち、我らが愛するミラー副指令に何かしらの危機が迫っていることを意味している
そのため、いつもは和やかな雰囲気の会議も、今日ばかりは緊張に包まれている

「さて、みんなわかっていると思うが…我らが敬愛するミラー副指令に関して、重大な問題が発生した…アイリス、説明を頼む」

「イエス、リーダー」

ジュラフ隊長に代わって、アイリス副隊長が壇上に立つ

「知っている人もいるかもしれないけど…最近ミラー副指令の盗撮写真が出回ってるという噂があったの…その話の、裏が取れたわ。噂は、事実です」

オポッサム副隊長の言葉に、会場が一気にざわめきに包まれる

「静かに!…会員番号102番マナティ!」

「は、はっ!」

急にジュラフ隊長に名前を呼ばれ、会場中の視線が俺に集まると同時に緊張で一気に体が固くなる

「会員規約、第三条一項を言ってみろ!」

「はっ!会員規約第三条、ミラー副指令の映像および音声に関する項目第一項!会員が所持する映像、ならびに音声はミラー副指令の許可を得て撮影、録音したものに限る!」

「よろしい!会員規約にもあるように、ミラー副指令の映像および音声は、本人が撮影を許可したもののみ所持を許される…盗撮行為など、もってのほかである」

隊長の力強い言葉に、俺を含む会員全員が頷く
写真や音声は、本人が許可した場合のみ撮る
それは、ファンとして基本中の基本だ
盗撮は、愛するミラー副指令を辱める行為に他ならない

「しかも、その盗撮写真が金品により取引されているという話です」

アイリス副隊長の言葉に、俺を含む全員が愕然とする
敬愛する我らがミラー副指令を盗撮して辱めたでは飽き足らず
その写真を、金儲けに使うなんて!

「誰だその不届き者は!!俺が一発分殴ってやる!!」

「そうだ!そんな輩、海の藻屑にしてくれる!!」

「いや!AI兵器の前に放り出してやろう!!」

実戦部隊所属の血の気の多い会員達が、一斉に立ち上がる

「まぁ待て…盗撮の内容にもよるだろう?盗撮自体は許される行為ではないが、程度にもよるだろう」

「そうよ…盗撮の内容、および金額によっては厳しい制裁を加えなければならないけど、ちょっとしたものなら厳重注意くらいでいいのでは?」

が、それを研究班、および医療班の冷静な会員が押しとどめる

「まぁ皆さん、とりあえず内容を確認しましょう」

ニコニコと笑いながら、食料班の会員も加わって、実戦部隊の会員達は渋々といった風に席に着く

「内容については、オポッサムから報告があるそうだ」

「はい、リーダー」

アイリス副隊長に代わって、今度はオポッサム副隊長が壇上に上る

「我がファンクラブ諜報部隊を総動員し、噂の真相、および程度を調べた結果…由々しき事態であることが判明しました」

オポッサム副隊長が目配せすると、待機していた諜報班の会員達が電気を消し、プロジェクターを使い前方の画面にある映像を映す
その映像に、会場が一気にざわめいた

画面に映し出されるのは、シャワーを浴びていたり、気持ち良さそうに眠っていたり、着替えの瞬間等
到底、ミラー副指令が許可したものとは思えない…我らが愛するミラー副指令を汚すような最低の映像が映し出されていた

「このように、盗撮としてはかなり悪質…かつ、取引金額も相当高く、悪質であると判断せざるおえません」

「念のため、マングース名誉会長にそれとなく確認してもらったが…ミラー副指令はそのような写真を撮られた覚えはないそうだ」

オポッサム副隊長と、ジュラフ隊長の言葉に
一気に、会場がヒートアップする

「何だコレは!?我らが副指令殿を辱めるとはいい度胸だ!!!」

「おのれ!射撃訓練の的にしてやる!!」

「これは、制裁を与えるしかありませんね」

「それも、そうとうキツいのを…ね?」

「これは到底許される行為じゃないですね」

会員達は怒りのあまり思い思いのことを口にする
実戦部隊など、今にも犯人を殺しに行きそうな表情だ

「静かに!!」

ざわざわとざわめく会場に、ジュラフ隊長の厳しい声が響き
その瞬間、会場が水を打ったように静かになる

「この件について、俺と両副隊長、および幹部達で制裁を与えようと思う…異議のあるものは手を上げろ」

隊長の言葉が、静かな部屋に響く
答えなんて、決まっている

「「「異議なし!!!」」」

「「「我らが敬愛するミラー副指令を辱めた不届き者に制裁を!!!」」」

会場の全員が、声を張り上げた

我らが愛するミラー副指令を辱めたのだ
死より重い、制裁を!

「よし…なら、この不届き者にはこれより制裁を与えることとする!」

隊長の言葉に、全員が雄叫び声を上げた


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