後悔先に立たずとはこういうことで・2



「で、今日だったよな?約束の日は」

3ヶ月前、カズが新しいビジネスをしたいと言い出したとき
『3ヵ月後に3割の利益を上げられなければ、何でもする』
という約束をした

今日が、ちょうどその約束の3ヶ月
3割はどうでもいいが、利益が出ているかどうかもきちんと確認しておかなければならない
カズの言うビジネスには、かなりの金をかけた
もし損失が出ているなら、早めにやめさせなければならない
カズは夢中になると、周りを見ずに突っ走る傾向がある
それが自信のあったことならば、なおさらに

「……あぁそうだ、俺が言ったんだ!利益3割出すって!今日までに!出来なかったら何でもするって!」

「いや、別に3割はいいが…で?結果は?」

「………何でもする」

先ほどまでの威勢はどこへやら
項垂れたカズは消えてしまいそうな声でそういうと、俺に書類を差し出してきた
それを受け取り、中身を確認する
カズの反応から、てっきり損失が出ていると思ったが、きちんと利益が出ている
カズが提示した金額には足りないが、それでも十分すぎるほどの利益だ

「カズ…これは…」

「あぁそうだよ!3割に足りてないよ!でもそれがどうした、今回は立ち上げでちょっと引っかかっただけで…!」

よほど頑張らなければ、こうはならないだろうと褒めてやろうと口を開いた瞬間…
カズは、いきなりマシンガンのように言葉を吐き出し始めた

「おいカズ落ち着け、ちゃんと利益は出てる…」

「みてろよスネーク!3ヵ月後だ、3ヵ月後には今回のも含めて6割の利益を上げてやる!できなかったら、何でもする!!」

「…カズ、人の話をだな」

「だが約束は約束だ、さぁ何するんだ?緊縛か?鞭打ちか?おもちゃでも使う?露出プレイ?薬飲むか?泡踊りでもするか?そ、それとも…浣腸プレイ?」

「…お前は一体俺をなんだと思ってるんだ?」

「変態エロ指令官」

ビクビクと体を震わせ、威嚇するようにこちらを睨みつけながらきっぱりと言い切るカズに、自然と苦笑が漏れる
変態というか…カズを苛めるのが好きなのは、否定しないが

「そうだな…」

俺としては、きちんと利益が上がっているならカズを罰するつもりも、ビジネスをやめさせるつもりもない
だが、俺の話を聞ける状況じゃないカズにそんなことを言っても無駄だろう
怯えながら目を座らせるという中々器用なことをするカズを眺めながら、少し考える
カズの何でもするという言葉に甘えて、カズの言う少し変わったプレイをしてみたい気もするが…ここまで全力で怯えられて威嚇されると、逆に優しく可愛がってやりたくなってくる
それにここらでカズの信頼を上げておくのも、悪くはない

「それじゃあまずは、服を脱いでベットに座れ」

にこりと笑ってベットを指差せば、カズはビクリと体を震わせ、全身から警戒と威嚇のオーラを放ちながら、大人しく服を脱ぎ始めた
普段は服なんぞさっさと剥ぎ取って行為に及ぶせいか、こうしてカズが自分から脱ぐのは珍しい
少しずつ白い体が露わになっていくさまは、何とも言いがたい色香がある
少しもったいない事をしていたかもなぁと思いながらその様を眺めていると

「…で、どうするんだ?」

下着一枚になったカズは、不服そうにベットに座って、俺を睨みつけた
まるで子猫が威嚇しているようなその目に、自然と笑みが浮かび
その笑みを見たカズが、あからさまに嫌そうに顔を歪める

「いや、たまにはお前の体をじっくり眺めるのも悪くないと思ってな」

「視姦プレイかよ?変態」

「なんとでも言え」

ぎろりと睨みつけてくるカズの低い声を軽く流し、カズの体をまじまじと眺める
きちんと鍛えられている体に、無駄な肉は一切付いていない
忙しい中でも、サボらずにきちんと訓練をしているのがよくわかる
あまり実戦に出ないせいか傷跡の少ない白い肌は、東洋人の血が入っているせいかキメが細かくしっとりとしている
まるで手に吸い付いてくるようなその触り心地を思い出し、じわりと腹の奥が熱くなるのが自分でもわかった

「ちゃんと鍛えてるみたいだな」

「あ、当たり前だろ?副指令なんだから!で、これからどうするんだ?ヤるならさっさとヤれ!」

できるならもう少し観察していたかったが、そろそろカズの恥ずかしさが限界らしい
羞恥に頬を染めながら睨みつけ、ひたすら噛み付いてくるカズは可愛いが、色気は欠片もない
さて、そろそろ楽しませてもらうか…と、隣に腰を下ろしキスでもしようと肩に手をかけた瞬間

「かっ、覚悟は出来てるんだからな!何でもしろよ、あぁ何でもすればいいさ!!」

ビクッと大げさなほど体を震わせたカズが、若干涙目になりながらわめきだした

「…おいカズ、俺はただキスでもしようと…」

「わわわわかってるんだからな!アンタが何をしたいかくらい!!さぁすればいいさ、【ピー】でも【バッキュン】でも…【ピーーー】でも何でもすればいいさ!!!」

そのまま俺の言葉など耳に入ってませんといわんばかりに、公共の場なら確実に規制が入りそうなことを叫びながら体をブルブルと震わせはじめた
どうやら、羞恥と恐怖で混乱しきっているらしい
一応恋人という間柄で何度もいたした仲なのに、こうも警戒され怯えられると頭が痛くなるというか、俺達恋人同士なんだよな?と素朴な疑問が湧き上がってくる
何度も肌を合わせたが、カズの言うようなプレイを強要した覚えはないが…いや多少苛めるのに似たような手口は使ったが…
そんなことを考えている間もカズは妄想を爆発させているらしく、体を震わせながら目にいっぱい涙を溜めて必死に睨みつけてくる
まだ何もしていないのに、こちらが一方的に苛めているような気すらしてきた

「…カズ、あのなぁ…」

「すればいいだろ!?もうさっさとしろよバカスネーク!!」

話をしようにもどうにもカズの剣幕は収まりそうにないし、この状態では話を聞いてくれるまで落ち着くのに時間がかかるのは目に見えている

「…ったく、お前は…」

今日はたっぷりと甘やかして優しくしてやろうと思ったが、仕方ない
それなりの手順を踏むのを諦めて、手っ取り早くカズの性器を下着越しに軽く握る

「うぁっ」

びくっと反射的に逃げそうになる体に片腕を回し、逃げられないように抱きかかえる
気持ちいいことに弱いカズのことだ、軽く快感を与えてやれば大人しくなるだろう

「ふぁ…ぁ…」

案の定、ソコを軽く揉んでやっただけで先ほどまでの剣幕は何処へやら
気持ち良さそうな声を上げて、俺にしがみ付いてきた

「どうした、もう終わりか?」

「っ…バカスネークっ」

少しだけからかってやると、カズ伏せていた顔を上げてキッと睨みつけてきた
だが俺を睨みつけてくる瞳も先ほどとは違う涙で甘く潤んでいるし、声にも力がない

「はは、そんなことをいうやつには…」

「あぁっ」

ぐっと揉む手に力を入れると、ソコはみるみるうちに硬さを増して勃ち上がっていく
そのまま刺激を続けていると、とろりと先走りを零しだしたのが下着越しにも伝わってきた

「スネーク…も、苦しい…」

その感触を楽しむように指を這わせていると、もじもじと腰を揺らしながら、カズがねだるように俺を見上げてきた
チラリと下に視線をやれば、ただでさえ面積の狭い下着が食い込んで確かに苦しそうだ
その光景に少し苛めてやりたい気もしたが、今日はカズの信頼回復に努めておいたほうが得策だろう

「わかった」

指先に下着の縁を引っ掛けて下に引くと、開放を待っていたかのようにぷるんと勢いよくソレが飛び出し
同時に、カズの顔がほっと少し安心したようなものへと変わる
けれど、ソレを握りこんだ瞬間、その表情が崩れ快感に歪む

「あっ…ん、ぅ…」

「気持ちいいか?」

「ん…」

こくり、と素直に小さく頷いて、いつものように快感に体を震わせながら、俺に体を預けてくる
その表情に先ほどまでの怯えきった様子は、欠片も見当たらない
今思えば、アレはアレで子猫が威嚇しているようで可愛かったが

「あ、ぁ…」

こうして快感に震え、頬を染め甘えるように瞳を潤ませている表情もまた可愛らしい
甘い声にあわせてちらり、ちらりと誘うように薄く開いた唇から赤い舌が覗く
カズが、キスをして欲しいときの合図
誘われるままにキスをしようとして、ふと思いついた
カズは、何でも言うことを聞くといった
多少なら、苛めてやってもいいだろう

「カズ、キスしてくれ」

ぽってりとした唇を親指でなぞりながら、
きょとんと、カズの目が不思議そうに細まった

「何でもするんだろう?」

その表情に笑い出しそうになるのを堪え、おそらくカズも半分忘れているであろう約束を口に出せば

「う〜…意地悪いぞ」

カズは一瞬だけ目を丸くして、唇を尖らせながらも小さくキスを落としてくる
触れるだけの、戯れにも近いキス
恥ずかしいのか、目をぎゅうっと力いっぱい閉じている
その表情の可愛らしさに、つい笑いが漏れそうになるのを唇を引き締めて堪える
けれど唇を離してうっすらと目を開けたカズにはその俺の顔が怒っているように見えたのか、一瞬バツの悪そうに視線を外すとまた目を閉じてちゅ、ちゅと触れるだけのキスを繰り返す
そのままカズにされるがままになっていると、恐る恐るといった風にキスを繰り返していた唇が、段々と誘うように

「ん…ん…」

甘く声をあげ、縋りつくように首に腕を回すその仕草は、明らかに深いキスをねだるそれだ
それに気付かないフリをしてカズの背を緩く撫でると、閉じた唇から不満げな声が上がる

「ん、んぅ…」

開けて、といわんばかりに甘い舌先が俺の唇をなぞる
ねだられるままに唇を僅かに開いてやれば、もっと欲しいとカズの舌が俺の咥内へと潜り込む
誘うように咥内を擽る舌に自分のそれを絡めてやれば、カズの口からくぐもった声が漏れる

「んくっ…んぅ、ん…」

鼻から抜けるような甘い声が耳を擽り、くらりと眩暈にも似た感覚に襲われる
欲情に任せるままに背中を撫でていた手を尻へと伸ばし、俺を受け入れてくれる場所を指先で擽る

「んうぅっ」

びくんっとカズの体が跳ね、引っ込もうとする舌を絡めて甘く噛みながら指先を埋めていけば、カズの喉から小さく高い声が上がる

「んふぅっ…ん、んんぅっ」

そのまま中をゆっくりと掻き混ぜれば、苦しそうに眉を寄せながらも舌を差し出してキスをねだる
その様がどうしようもないほど可愛らしくて、今度こそ堪えきれずに笑いが漏れてしまう

「はっ…なに、笑ってんだよっ」

だがカズはそれがよほど不満だったのか、自分から口付けを解いて俺を睨みつけてきた
けれど、色に染まり潤んだ瞳では迫力なんてものは一切感じない
むしろもっと苛めて欲しいとねだるような表情に、笑みが自然と深まっていく

「すまん、お前が可愛いかったもんでな」

「可愛くなんかっ…あ、あっ!」

可愛い、という言葉にきっと視線を強め、噛み付いてこようとするカズのいい場所を指先で擦ってやる
鋭さを増していた目があっという間に快感に緩み、ぎゅうっと縋りつくように首に回る腕の力が強まる
この表情の変化が好きで、どうしてもカズを苛めてしまうことは自覚している
だからあんな度を越したプレイが出てくるんだろうな、と密かに苦笑する

「あ、あ…すね、くっ」

「可愛いな、カズ」

「可愛く、なんかぁ…ひんっ」

けれど、こんな可愛らしいカズを知っていて、その姿を拝むなという方が無理だ
中を押し広げるように指を動かしながら頬を舌先で舐めれば、カズの口からは可愛らしい悲鳴が上がる
その甘さに、ズクリと腰の奥が疼いた


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