写真写りは大事です



「………」

「………」

俺の執務室に、珍しくカズがふらりとやってきて早30分
何が原因かわからないが、カズの機嫌がすこぶる悪い
部屋に入ってきたときから機嫌が悪かったから、別に俺が何をしたというわけでもない
人の執務室に押しかけてきておいて、一言も発さずに…それでいて不機嫌なんですオーラだけは垂れ流しながら、ソファーに座っている

…機嫌が悪いなら、他所で勝手に怒ってろ
そう喉元まででかかった言葉を飲み込んで、カズのチェックが終わっている書類を軽く眺めてからサインをする
カズがこうなっているときは、何かしら俺に話を聞いて欲しいときだ
本人は、自分で言うのもなんだが珍しく書類整理をしている俺の邪魔をしていないつもりらしいが…その不機嫌オーラが気になりすぎる
本当に邪魔しないつもりなら、後で改めて欲しいのだが…カズはどうやら、一刻も早く俺に話を聞いてもらいたいらしい

「…どうした、カズ」

きりのいいところまでサインを進め、ひとまずペンを置いてカズに声をかけてやる

「スネーク!これ見てくれよ!!」

ようやく反応した俺に、カズは待ってましたと勢いよく振り向き
大股で机まで歩いてくると、ポケットの中から何か紙状のものを机の上に叩き付けた

「…写真?」

カズが叩きつけた紙切れを拾い上げ、それをじっくりと眺める
マザーベースの司令塔をバックに、カズが軽くポーズを取っているだけの何の変哲もない写真

「…これが、どうかしたのか?」

眺めれば眺めるほど、この写真の何がカズをこんなに不機嫌にさせているのか
何が原因でカズがぷりぷりと怒っているのか、さっぱりわからない
カズがポーズを取っているから別に盗撮というわけでもないだろうし、何かしら変なものが写っているわけでも、カズの顔がおかしくなっているわけでもない
何の変哲もない、ただの写真だ

「よく見ろよ!ホラココ!!ココとか!!」

だが、カズはこの写真がとてつもなく気に入らないらしく、すっかり興奮しきった様子で写真のある一点
自分の顔を指差した

「あぁ…これは…」

何だかよくわからないが、カズの顔に問題があるらしい
俺から見れば、バッチリとよそ行きの顔でキメたカズの写真にしかみえない
けれど、それを言えばカズの怒りに日を注ぐだけだというのは、この2年でそれなりに学習している
曖昧に、気付きましたという返事だけをしておいてカズの様子を窺う

「な、酷いだろ!?」

カズはうまいこと俺の本音には気づかなかったようで、気付いてもらえて嬉しいのかどこか満足げな表情を浮かべ、
こうなったら、多分そろそろ自分から話すはずだ

「あぁ、そうだな。お前の言うとおりだ…で、コレは何で撮ったんだ?」

「MSFも大分大きくなってきただろ?だからリクルート用のポスター作ることになってさ…アンタも写真撮っただろ?」

「そういえば、そんなことを言っていたな」

「それなのに、こんな写真なんて酷くない!?」

「あぁそうだな、酷いな」

だが、俺の予想に反してカズは中々この写真の何が気に入らないのか言い出さない
カズと何気ない会話をしながら、どうにかカズから情報を引き出そうと試みる
…俺はこういうのは苦手なんだ、さっさとこの写真の何が気に入らないのか白状してくれ

「だよな!こんな写りの悪い写真使うなんて、あいつら何考えてるんだ!?」

「…だが、ポスター用ならそれほど悪くないんじゃないか?」

「アンタもそんなこと言うのか!?」

「いや、すまん…だが、ポスターにするんだろ?どれくらいの出来かはわからんが、多少の粗は印刷で誤魔化せるんじゃないのか?」

「悪いだろ!?特に顔色!こんな不健康そうな顔色俺してない!」

…何だ、そんなことか
うっかり口から出そうになった言葉を飲み込んで、うんうんと頷いておく
確かによく見れば、いつもよりも頬の色が白いような気がする
多分光の加減なのだろうが、言われなければわからない
そもそもカズは、元々色が白いしな

「しかも、俺の許可なくこの写真のポスター、張り出しやがった…!」

「…あぁ、そうか」

ワナワナと拳を震わせて怒りを露わにするカズに、俺はとりあえず慰めの言葉を口にする
くだらない、という本音は心の奥底に隠して

「ポスター作っちゃったのはしょうがないけどさ、張り出す前に俺に一言あってもいいじゃないか!俺モデルで副指令だよ!?」

「そうだな、後で作った奴には軽く灸をすえてやらないとな」

これでどうにかカズの機嫌が治まってくれないかと、ひたすらにカズの言葉に頷く
カズの怒りは、大抵は吐き出すだけ吐き出してしまえばすっかり収まってしまう

「…そうだ!アンタ俺の写真たくさん持ってたよな?ソレ見せてくれないか?」

だが、カズはよっぽどこの写真の顔色が気に入らないのかぷりぷりと暫く文句をたれ
ふと思い出したように、表情を明るくして俺のほうを見た
その期待たっぷりの視線に、俺の背にブワリと自然に汗が浮かぶ

「い、いや…素人の写真だしな?ポスター用にはならないんじゃないか?」

「そうか?アンタデートのたびに写真撮るし、探したらポスター向きの写真もあるんじゃないか?さすがに水着はアレだけど、野戦服の写真も結構あるだろ?」

夕日をバックにした写真なんて、かっこいいじゃん!
とやたら乗り気なカズに、心臓がバクバクと音を立て始めた

確かに、カズの写真はある
探せば、ポスター向きの写真も出てくるだろう
だが、問題はカズが把握している以上の枚数を俺が所持していることだ
カズは写真を撮られることが嫌いじゃない
むしろ、綺麗に撮ってくれよ?といってポーズをとってくれるくらいには好きらしい
だが、それでは物足りず…CQCで落とした後に、ちょっとだけカズの体を弄って…少し変わったポーズをとらせたり
全身を撮るふりをして、ある一部にピントを合わせた…いわゆるお宝写真もある
しかも、多分本人に許可を取って撮影したものよりも、そっちのほうが多い
いや、確実に多い
そんな写真がカズに見つかったら…

想像するだけで、恐ろしい

「なら、後で俺がポスターになりそうなのを選別してお前のところに持って行こう」

「いいよ、俺のポスターだし、俺がチェックする。こう言っちゃ何だが、アンタのセンス、あんまり信用できないし」

「いや、顔だけ撮ったやつとか、撮り損ねているやつもあるからな…そういったのだけでもはねて、後で持って行ってやる」

「顔だけとかでも別にいいぞ?顔アップとかかっこいいし」

やたら乗り気で、今にでも俺の部屋に行こうと言い出しそうなカズに冷や汗をかきながら、冷静な表情を作ってどうにか押し留める
どうにかして、このまま写真のチェックをしに俺の部屋へ…という流れだけは阻止せねばならん
一応本当にヤバイものは分けてあるが、それ以外は簡単な整理しかしていない
見られれば、終わってしまう…いろいろなものが!

「とにかく、俺が後で持って行こう。お前もまだ仕事あるだろ?」

「今日の分は大体終わってる。アンタの仕事が終わったらすぐにでも…」

「なら飯を食った後に持って行こう。2人でゆっくり、一番見栄えのいい写真を選ばないか?」

カズに写真を撮らせるときは、化粧でもさせておかなければ…
どこか怪訝そうなカズに、にこやかに、けれどきっぱりと後で持って行くという主張を繰り返しながら、俺は必死にどういえばカズが納得してくれるのかを考えていた
















ようやくやってきたカズフィギヤーのほっぺたが赤かった理由を全力で考えた結果、何だかよくわからないものができた
モデルがスネークに顔をガン見されているカズの写真だった説と迷った結果、とにかくわからないものができた
我が家のスネークの部屋には、カズ写真集が何冊も出来るくらい写真があるに違いない、プレイヤーの悪意により(コラ)

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