だから、ごめんね?・1



「アンタがそんな奴だとは思わなかったよ!」

「お前こそ、意地張るのもいい加減にしたらどうだ!?」

ダンッと机を叩くような音と、互いにヒートアップした声が部屋中に満ちる
互いに額を突き合わせ、今にも殺し合いに発展しそうなほどにらみ合う
俺とスネークは、今俺の私室で喧嘩の真っ最中だ
喧嘩の内容は、完全にプライベートなこと
どちらが悪いかと問われれば、大体6:4くらいで俺に非がある
俺のほうが悪いが、向こうにも非がないわけじゃないからスネークもあまり強くいえない
こういった内容の喧嘩が穏便に済むことは少なく、互いに罵りあいになるまで発展することが多々ある

…これは、チャンスかな?
明らかに怒っているスネークの顔を眺めながら、喧嘩の内容とは全く別のことが頭を過ぎる
僅かな期待に小さく胸が高鳴り、少しだけ作戦を練る為頭を働かせる

「いい加減にしろ!全く、少しは可愛げのある態度を取ってみたらどうだ!?」

「お生憎様、俺の辞書に素直なんて文字はないんでね!!素直な奴がいいなら他所いけば!!?」

「俺がいつそんなことを言った!!?」

「素直な子がいいんだろ!じゃあ他所いけよほら!俺だってもっと優しくて懐の大きい奴んとこいくからさ!!」

別に今そんな話しはしていないし、そういった内容の喧嘩でもなかったけど、頭に血が上ったフリをして、ばれないように巧妙に論点を摩り替える
すると完全に頭に血が上っているスネークは、まるで今から人でも殺しに行かんばかりの鋭さで俺を睨みつけてきた
よぉっし!きたきた!!
期待通りの反応に内心小躍りしたい気持ちになりながら、緩みそうになる頬を必死で押さえ込んでスネークを睨みつける
はっ、と小さく笑って見せれば、スネークはぎゅうっとその目を鋭くして俺をさらに睨む
どれくらい睨みあっていたか、やがてスネークは大きく息を吐き出して胸のポケットから葉巻を取り出した
多分、落ち着こうと思っているんだろうが…そうはさせない

「俺の部屋で葉巻吸うなよ!匂い残るだろ!?」

ここが俺のへやなのをいい事に、その葉巻を口元からひったくって、それを思い切り足で踏み潰す
もったいないけど、葉巻にはスネークを煽るための尊い犠牲になってもらおう
あ、でもこれ確か貴重なやつだって言ってたような…ごめん、後でちゃんと新しいやつ買うから
心の中でスネークに謝りながらも、スネークには鼻を鳴らして心底馬鹿にしたような表情を作ってみせる
スネークの眼光がさらに鋭くなり、あからさまにイライラとしたようにように舌打ちをした
ん〜…そろそろかな?

「もう出てけよ!俺も別の奴んとこ行くからさ!!」

仕上げにスネークに背を向けて早足で扉へと歩いていって見せれば

「カズ…」

驚くほど低い声が鼓膜を揺らした瞬間、腕を引かれ肩が外れそうな勢いで抱き寄せられる
文句を言おうと開いた唇に、まるで食いつくように噛み付かれた
いよっしゃぁ!スイッチ入った!!
強引そのものなキスに心の中でガッツポーズをとり、けれど悟られないように形だけは跳ねのけようと抵抗一応抵抗を続ける
その抵抗を力で抑え込もうとするスネークに、ゾクリと背筋に震えが走った

スネークも周りも、俺がM気質だと思っているようだが、それは違う
ぶっちゃけ俺は、M気質なんかじゃない
頭にドがつくくらいには、Mだという自覚がある
どれくらいかというと、スネークとのCQCの訓練で思いっきり痛めつけられるのが気持ちよく感じられるくらいにはMっ気がある
我ながら救いようがないと思うが、性癖なんて人それぞれだし、別にこれで損をするわけじゃないし
だからセックスも激しい方が好きだし、精神的にも肉体的にも痛めつけられるようなプレイが好きだ
けど…何というか、スネークは…そう、優しすぎるのだ
いつも壊れ物のように俺に触れてくるし、少しでも痛がると過剰なほど優しくしてくれるし、負担が出来るだけ少ないように配慮してくれる
それが、嫌いなわけじゃない
優しくされるのも甘やかされるのも、気持ちよくて好きだ
好きなんだけど…やっぱりさぁ、痛いの大好きな俺としてはちょっと物足りなかったりするわけで
だから時々こうして喧嘩にかこつけてスネークを煽りまくって、欲求を晴らしているのだ

「くそ、離せよ!解け!!」

俺の形ばかりの抵抗など物ともせず、スネークは俺をうつ伏せに床に押し付け、強引にネッカチーフを剥ぎ取ると腕を後ろ手に縛り上げる
剥ぎ取られたとき首筋に擦り傷が付いたのか、じわじわと鈍い痛みが肌を這う
まるでこれからの乱暴な行為を連想させるような痛みに、どんどんと体の奥が熱くなる
このまま、縛られ自由を奪われたまま、スネークにレイプされる
あまりの興奮に思わず熱の篭った息が零れたが、完全にキレているスネークには上手いこと伝わらなかったらしく、頭の上から低い笑い声が聞こえてきた

「いい格好だ…なぁカズ」

ん?と、頭を床に押し付けられ、耳元で酷く愉しげな声で囁かれる
その声の良さにクラクラと眩暈がしたけれど、ぐっと堪えてスネークを精一杯睨みつける
前にあまりの良さについここで抵抗をやめてしまい、スネークに怯えたと勘違いされて我にかえられたことがあった
あの時は、本当に酷かった
スネークは俺に謝り倒すし、その後のセックスはそりゃあもう優しすぎるほど優しかった
完全にスイッチが入っていたのに優しくされて物足りず、酷い欲求不満に陥ったのは今でも鮮明に覚えている
スネークが引き返せなくなるまで、抵抗しまくって煽っておかなければ

「…離せ」

上ずりそうな声を出来るだけ低いものに抑え、鋭くなるように意識した瞳でスネークを睨みつける
視界の端に映るスネークの顔が、にまりと歪み
そのまま、うなじに噛みつかれた

「いっ…!」

手加減ナシに噛みつかれ、まるで肉が食いちぎられそうな痛みと快感が混じりあう
あ、これ絶対血でてるよな
じんじんと痛みと快感を伝えてくるその場所に舌を這わされ、溺れそうになりながらもどこか他人事のようにそんなことを思う

「やめ、ろっ…離せ…!」

抵抗しっぱなしの俺の反応にさらに乗り気になったのか、もぞもぞと体中を手が這い回る
その手の動きを妨害しない程度に暴れると、野戦服の仲へと手が潜り込む
ぐりっと手加減ナシに乳首を捻られて、強烈な快感が痛みと共に駆け上がる

「くっ…や、めっ」

漏れそうになる喘声をどうにか押さえ込み、必死で首を振って逃れようとしているフリをする
もっと…もっと酷いことして…
そうねだりたいのを押し込めて、スネークを必死に睨みつける
ここでよがったらスネーク絶対我に返るし、ここでやめられたらしんどいの俺だし
それに俺レイプされているんだし、コレくらい抵抗している方が気持ちよくなれる

俺の反応がお気に召したのか、それとも気に入らないのか、スネークは喉の奥で小さく笑うと、ぎりっとその場所に爪を立てる
射精してしまいそうなほどの痛みと快感に、息が詰まる

「気持ちいいか?カズ…」

あぁ、すんごい気持ちいい。だからもっと酷くしてくれ!

「誰、がっ!」

あまりの気持ちよさにうっかり漏れそうになった本音を飲み込んで、肩を動かして抵抗の意を示して見せると、スネークの目がすぅっと細まり
そのまま、手が下肢へと伸びていった


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