君の好きなところ



「…カズ、いい加減休憩…」

「ダメだ、大体30分前に休憩したばかりだろ?」

何度目になるかわからない頼みを、これまた何度目になるかわからないぴしゃりと却下したカズに、俺はわざとらしくため息を吐いて見せた

『アンタが暇な時に処理しちゃわないと、また溜め込むだろ?これ以上溜め込んで俺の胃に穴開ける気か?』

ニッコリとドスのきいた笑みを浮かべながら、書類の山…まぁ俺が溜め込んだんだが…と共にやってきたカズと書類整理を始めて、早数時間
正直、飽きてきた
書類の整理といっても、実質俺はサインをするだけという単調作業
俺が見なくとも、中身はほとんどカズがチェック済みで、内容もきちんと詰められている
そもそも、俺がサイン以外のことをしなければならない書類は、カズはすぐに書類を持ってやってくる
とある兵器の開発相談のとき然り

今日は特に俺が出なければならない任務もなく、カズも差し迫った案件を抱えていない
たまにはのんびりしてください、とカズの右腕でもあるマングースから言い渡された休日に、恋人と私室で二人きり
これほど色っぽいシチュエーションもないというのに、俺達がやっているのは溜まりに溜まった書類の整理
いろんな意味で涙が出そうになってくる
逃げ出そうにも、カズはまるで俺に睨みをきかせるように正面に座り、黙々と書類のチェックをしている
多分、差し迫ってはいないが目を通しておかなければならない書類だろう
せっかくの休日だ、仕事の事なんざ忘れてのんびりしたらいい
任務を取り上げられれば何をしていいかわからない、俺が言えた義理ではないが

それにしても、無理矢理書類整理をさせられるというのは苦痛の極みだ
拷問として書類地獄をやらせてみたら、案外あっさりと吐くかもしれないな
俺ならきっと、3日も続けられれば何だろうと吐く気がする

「スネーク?手、動かしてくれないか?」

軽く現実逃避をしていると、すでにやる気を完全に失っている俺をカズがぎろりと睨みつけてきた
その殺気すら篭った瞳に、反射的に適当な書類を手にとって中身も見ずにサインをする
慌てて仕事を再開した俺にカズは小さく鼻を鳴らして目を伏せて、自分の仕事に集中し始めた
しばらくしてカズが完璧に集中したのを気配で感じ取り、そっと手を止める
よほど書類に集中しているのか、俺が手を止めたのも気付かずにもくもくと手を動かしている
集中すると周りが見えなくなるのは、こいつのいいところでもあり、欠点でもある
そういえば、こうしてカズが仕事に集中しているところに居合わせるというのは、あまりない
せっかくの機会だと思い、カズにばれないようにこっそりと観察をする

(…意外と睫長いな)

普段見慣れている顔なのに、こうして観察すると結構新しい発見がある
男前なのを自慢している割には、カズは自分の容姿にかなりのコンプレックスを持っている
普段こうして観察しようものなら、一瞬で拳と皮肉が飛んでくる
だが俺からすれば、何がコンプレックスなのかさっぱりわからない
パーツパーツがきちんと整ってるだけじゃなく、それらが絶妙な位置に配置され、恋人という欲目を除いてもカズはかなりの男前だ
しかも賢いし口もうまいし、人の扱い方もうまい
少し運命が違えば、今頃は銀幕スターとして人気者になっているかもしれない
日本で生まれ育ったということがでかいのだろうが、これほどの容姿なら日本にいても結構な人気者になれそうな気がする
まぁ、一番可愛いのは俺の側にいるときのカズだが
女性兵士に、サングラスを外すと意外と可愛い目をしている、と言われるだけあって、少し垂れ気味の瞳は普段から甘めで可愛らしい
だが俺に甘えてくるときはさらに柔らかく綻んで、驚くほどに幼い印象を抱かせる
とろんと蕩けて甘さをたっぷりと含むと、庇護欲を大いにそそられると同時に酷く苛めたくなる

「ん〜…キツイなぁ…」

そんなことをぼんやりと考えていると、よほど集中しているのか、カズの唇が小さく動く
目は口ほどにものを言う、というのを体現しているカズの目は気に入っている
だが、カズの顔で一番気に入っているところはどこかと聞かれれば、唇と答えるだろう
ぽってりとした少し厚めの唇は、柔らかくて弾力がある
キスをしたときに、それがとても気持ちいい
この唇から漏れる声も気に入っている
訓練中の厳しい声、バツが悪いときの様子を窺ってくる声、おねだりをするときの少し甘えた声、2人きりのときの甘さをたっぷりと含んだ声
その声全てが、可愛くて愛おしい

「…スネーク?」

書類が一段楽したのか、ようやく俺に見られていることに気付いたカズが不機嫌そうにkチラを睨みながら俺の名を口にする
カズが口にする俺の名前も、案外気に入っている

「スネーク…?おいスネーク??」

不機嫌だったり、心配していたり、怒っていたり、褒めて欲しかったり、甘やかして欲しかったり
同じ単語なのに、色々な意味を持たせて、カズは俺の名を呼ぶ
それだけの感情を俺に持ち、俺に向けられている
そのことも気持ちいいし、嬉しいと思う

「スネーク大丈夫か?戻って来い!」

あまりの反応しない俺に心配になってきたのか、カズが俺の肩を掴んで軽く揺すってきた
俺を呼ぶ声も、先ほどまでの不機嫌そうなものから心配そうなものへと変わっている

「…すまん、少しぼぉっとしていた」

「大丈夫か?疲れてるなら少し休むか?コーヒー飲む?」

先ほどまでは休憩したいといってもさっさと書類を片付けろといっていたくせに、急に俺をちやほやし始めたカズが何となくおかしくて、つい噴出してしまう

「スネーク?」

急に笑い出した俺に、カズはぽかんと口を開けて、どこか困ったように眉を下げて俺を見つめる
あぁ、やっぱりどこがとかじゃなくて、コイツそのものが愛おしくて可愛らしい
それを実感しなおしただけでも、観察したかいはあったというものだ

「いや、お前が好きだと思ってな」

「…はぁ?」

「そのままの意味だ」

わけがわかんない…と呆れたように呟きながらも、頬をほんのりと染めて俺を睨みつけるカズに、もう一度笑いかけて見せ

「そうだな、今すぐお前にキスがしたいということだ」

ほんのりと染まる頬に手を添え、どこか恥ずかしそうにもじもじと揺れる視線をこちらに向けさせ
愛しい唇に、キスを落とした






















手が文章の書き方やらネイカズの書き方を盛大に忘れているので、リハビリビリ
うん、何だこれ!
何というか、甘いもの書きたいな〜と書き始めたら…スネークがカズ大好きなだけやんけ
しかも毎回オチが行方不明になります
誰か、綺麗な文章の終わらせ方を教えてください
あとタイトルのセンスをください



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