捜索と捕獲とこれからと・2



「…は?」

「だからさぁ…この前俺とヤったことか、こないだ俺が怒ったことか、この部屋に不法侵入したことか、それとも俺の告白に対する拒否の返事なのかってこと!」

半ば怒鳴りつけるような声で、カズがそう口にする
その言葉に、この短期間に俺がどれだけカズに酷いことをしてきたのかと思い知らされて、思わず口をつぐんでしまう
無理矢理カズを犯したし、怒らせてしまったし、こうして部屋に無断で忍び込んでいるし
どれも、カズに謝らなければならないことだ

「…で、どれ?」

黙り込んだ俺に焦れたのか、カズが促すようにせっつく
だが、その声はほんの僅かだが震えているし、腕の隙間からこちらを伺う瞳もどこか揺れている
おそらく、カズは緊張している
理由は…おそらく最後に上げた選択肢

「最後以外、全部だ」

「最後は?俺それが一番聞きたいんだけど」

その証拠に、カズは緩慢な動作で起き上がると、真っ直ぐに俺を見つめてくる
その目は本当に真剣で、それでいて不安で揺れている
部屋の中を、痛いくらいの沈黙が支配する
俺は俺が出来うるかぎり真剣に考えて

「…正直、わからん」

そう、答えた
その瞬間、はぁ?とカズが何言ってんだと言いたげに声を上げた

「アンタ、ふざけてるのか?」

「いや、いたって真面目だ」

「じゃあ何だよわからんって!断るならはっきり断れよ!!」

俺の言葉に、カズは少し赤くなっている目で鋭く俺を睨みつける
その目に気圧されながらも、俺は上手く言葉が紡げないでいる

「同情なんざごめんだ!別にアンタが断っても俺は副指令としての役割はきちんと果たすから気使うな!!」

「気は使っていない、もちろん同情もしていない」

「じゃあどうして!?」

興奮しすぎているのか、カズの目にじわりと涙が滲む
その涙に、色々と複雑な感情が湧き上がる

カズの言うことも、最もだ
カズからしたら、白黒はっきりつけてもらいたいだろう
だが、本当に俺がどうしたいのかがわからない
カズのことは嫌いではない、むしろ好きだと思う
誰よりも大切な相棒で、俺にとってなくてはならない人間だ
実際ぶつけるように吐き出されたカズの想いに、気持ち悪いだのありえないだのといった否定的な感情は浮かばなかった
むしろ、カズが俺に好意を持っていてくれたことは純粋に嬉しいと思った
だが、この好意がカズと同じ種のものかと問われれば、わからないとしか答えようがない
あの日まで、俺はカズをそういう目で見たことは一切なかったし、カズが俺にその類の感情を向けていることなど想像すらしていなかった

カズのことは好きだ、カズの想いも嬉しかった
だが、それがカズのものと同じかは、わからない

それを正確に伝える言葉を、俺は知らない

「…わからないからだ」

悩みに悩んだ末、俺が思ったことをそのまま伝える
上手く伝わるとは思わなかったが、俺の頭ではそれしか思い浮かばなかった

「わからない?」

「俺は、お前が好きだ。大切なパートナーだと思っているし、なくてはならない存在だと思っている」

「…うん」

「お前が俺に好意を寄せていてくれることは、純粋に嬉しかった」

「だから気使わなくていいって」

「本心だ。だが、お前と同じ気持ちかと問われれば、自信はない…わからない」

すまん、と軽く頭を下げるが、カズは何も言わずじぃっと俺を見つめている
我ながら、随分と無茶苦茶な返事だとは思う
だが、どれだけ考えてもこの答えしか浮かばない
聞き様によっては…いや、確実に不誠実すぎる答えだ
これでは伝わるものも伝わらない
カズは納得しないだろうか?いや納得とかそういう問題ではなくてだな…
カズの顔を見ながら、グルグルと考え込んでいると

「…ぷっ…あはははは!」

カズが突然吹き出し、腹を抱えて笑い出した
驚いて目を丸くすると、一体何がツボに入ったのかカズの笑い声がより大きくなる

「…おいカズ、何がおかしい」

「だ、だってっ…あ、アンタ百面相して…お、おっかしっ…!」

少し不機嫌な声を作ってみても、カズの笑いは止まらない
それどころか、逆に膝をバンバン叩いて大笑いしている

「おいカズ、おれは真剣にだな」

「お、お腹痛…ひ、とまらなっ!」

「カ〜ズ〜…」

「ちょ、ごめ…もーちょっと、待っ…ぶっ、あははは!!!」

どうやら自分でも止められないほど、俺の顔がおかしかったらしい
げらげらと笑い続けるカズを、俺はただ見つめるしかない
その顔すらおかしいのか、一度収まりかけたかと思うと俺の顔を見てはまた大笑いしだす

「は〜、ようやく収まった…で、それがアンタの答えなんだな?」

一体どれくらい時間がたったのか
一通り笑い倒したカズは、目もとに浮かんだ涙を指先で拭いながら、どこかからかうような目で俺を見上げる

「あぁ、すまん」

「ほんと、俺真剣なのに、わかんないってどういうことだよ」

カズの表情はどこか不貞腐れたようなものだが、声はどこか楽しそうだ
まるで甘えているようなその様子に、どうやら怒ってはいないらしいということがわかって、少しだけ安堵する

「本当にすまん」

「もういいよ、俺アンタのそういうとこ好きだし…すんごいムカつくけど」

さらりと、まるで愚痴でも言うように紡がれた好意の意を示す言葉に、少々くすぐったいような気持ちになる
やはり、カズに好意を伝えられると嬉しい

「でもわかんないってことは、可能性はあるってことだよな」

その感情の根源を探ろうとしていると、カズがどこか楽しげにすら聞こえる声でそう言った
驚いてカズのほうへと視線を向ければ、真っ直ぐな蒼い瞳が俺を映していた

「嫌いじゃないんだろ?俺のこと」

「あぁ、好きだ」

「や、恥ずかしいからあんまり言わないで欲しいんだけど…まぁいいや、それで別に告白がイヤだったとか、俺の気持ちがありえないとか思わないんだろ?」

「あぁ」

「それなら、アンタが俺に惚れる可能性も十分あるってことだ」

その問に俺の答えは期待していないのだろう
カズはうんうんと頷きながら、にまりと何か悪巧みをしているときと同じ顔で笑った

「よし、この際だから宣言しとく。俺はアンタを絶対落とす」

「随分大胆な宣言だな」

「おう、俺はアンタにベタ惚れだからな。可能性あるってわかったら俄然やる気が出てきた」

どこか冗談めかした告白に、互いにほぼ同時に吹き出し笑いあう
その空気はどこか優しくて、居心地がいい

「覚悟しろよ?俺結構しつこいから」

そう言いながら挑発的な目で、だがどこか嬉しそうにカズは笑う

「あぁ、知っている」

その笑みがとても可愛らしく、愛おしいもののように俺の目に映り
あぁ、落とされるのにそう時間はかからないかもな、と頭の隅で思った





















榊様リクお仕置き続編その2でした!

正直、もうヤダこのオッサン発言が言わせたかっただけの話だったり…ゴニョゴニョ
カズは絶対振られると思っていたので、スネークが案外好意的で軽くパニックだったりハンパなく嬉しかったりで、俄然やる気が出てきています
おそらく、これからはまたアピールの日々が始まります
でも多分セクハラはやめてくれとスネークから言われそうな予感はします

まぁそう遠くない未来にスネークは落とされるでしょうね!
なんたって相手がカズだもの(待て)

一応このシリーズ?はこれで終わりです
続きがどうなったかは、皆様ご自由にご想像くださいませ
榊様、リクエストありがとうございました!

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