蛇に会いに来た山猫・2



「随分仲がよさそうだったな」

アダムスカが帰った後、少しだけ棘を含んだ声でカズがそう言った
その物言いに、少しだけ苦笑が浮かぶ

『今日はここに泊まればいいじゃないか、アンタボスの友人なんだろ?大歓迎さ!』
『いや、だがしかし…』

『もうすぐ日も落ちる。万が一ボスの友人の船が遭難しでもしたら、寝覚めが悪くなっちまうだろ?』

俺達の棲家は洋上プラント、当然陸地への主な移動手段はヘリや船だ
陸続きの場所のように、車を呼んで帰るというわけにも行かない
だが自分で船を用意してある、それを呼んで帰る
そういうアダムスカを引き止めたのは、他でもないカズ自身だ
おそらく俺に気を使ったんだろうが…まぁ、アダムスカに構いすぎてカズがほったらかしだったことは間違いない
久々に会って積もる話があったのもあるが、何より放っておくわけにはいかなかった
開かれているとはいえ、このマザーベースは外に比べれば随分と閉鎖的な場所だ
そんな場所に珍しく客人がやってきた上、それが俺の古い友人ならば当然のように兵士達が興味を示してやってくる
さらにそいつが銃の達人ともなれば、兵士達のテンションが最高潮に上がってしまったのだ
やれ腕前を披露しろだの、俺と勝負しろという輩が次から次へと沸いてくるし、アダムスカもアダムスカでそういう扱いをされるのは嫌いではない
見せ付けるようにお得意のガンアクションを披露し、申し込まれる勝負は次から次へと受ける
俺が側にいなければ、収拾が付かない状態だった

「まぁ、古い友人だしな」

「そうだな、アンタにはお友達がいっぱいいるもんな〜。この間もエヴァって人から荷物届いてたし〜」

だが、今日はやけにカズが絡んでくる
ちらり、と俺を見やったかと思えば、ふいっと視線をそらす
完全に、拗ねている

「カズ、何怒ってるんだ?」

「怒ってない、ただアンタにはお友達がいっぱいいるんだな〜って。それだけだ」

おそらく、アダムスカに射撃で完膚なきまでに叩きのめされたのも関係しているんだろう
カズの負けず嫌いは、正直呆れるを通り越して感心するレベルだ
アダムスカにこれっぽっちも勝てなかったのが、相当気に食わないらしい
アダムスカも、カズには手加減1つなく全力で叩き潰していた
だが実戦ならともかく、純粋に射撃でアイツに勝てるかと言われれば、俺も正直自身がない
だが、カズにそんなことは関係ない
自分が負けた、そのことが悔しくてたまらないタイプの人間だ
それは普段は美徳だが、こういったときには厄介だ

「俺は浮気はしないぞ?」

少しからからかうように、エヴァからの荷物が届いたときのカズのセリフを揶揄するようにそういえば、カズは一瞬ポカンと口を開け

「…馬鹿だろ、アンタ」

先ほどまでの機嫌の悪そうな表情を引っ込め、どこかいたたまれないような、恥ずかしそうな表情に変わる
その様に、自然と口の端が弧を描く

「どうした、俺が浮気しないか心配じゃなかったのか?」

「別に心配してない」

「そうか?その割には随分アダムスカやエヴァを気にしてるようだが?」

「そんなことはない」

「心配するな、俺のパートナーはお前だけだ」

「…別に、そんなこと聞いてない」

むぅ、と小さくむくれて…でも頬がほんのりと染まっているカズの頭を軽く撫でながら、頭の奥でアダムスカの意図を探る

個人的な感情でここに来た、というのはおそらく本当のことだろう
ゼロが俺にアダムスカを寄越し、帰って来いという理由がない
ゼロは俺を泳がせ、MSFを利用して俺の行動を探ろうとしている
そのために、あの男はカズを取り入れている
それに、本当にゼロからの指示なら、カズにも何かしら話が通っているはずだ
俺が戻れば、MSF…カズのビジネスにも大きく影響する
それなのにカズからリアクションがないのはおかしいし、この反応を見る限りではカズが何かしらの指示を受けているようには見えない

「心配するな…アイツは、ただの古い友人だ」

おそらくは、俺がカズに利用されているように見えたのだろう
アダムスカも組織の一員である以上、カズのことと役割は知っているだろう
実際、表面上はカズは俺を利用して組織を大きくしているし、そんなカズをゼロが利用している
アダムスカは、どうしてか俺を随分と慕ってくれていた
俺がカズに利用されていることが、アダムスカは気に入らないのだろう
だが、俺が気づかず利用されていると思っているあたりが、まだまだ詰めが甘い

だが、アダムスカが俺をいまだに慕っていてくれているのはわかった
そして、アダムスカがどちらかと言えば俺よりの人間であることも

『ジョン、また来ていいか?』

去り際に、アダムスカは確かにそう言った
まだ俺を説得するつもりか、それとも単純に友人として遊びに来たいといったのか、それともまた別の意図があるのかはわからない
だが、それは俺にとってもメリットがある
アダムスカが俺よりの人間なら、こちら側に引き込むことも可能だろう
そして、アダムスカは創設者の1人…いわば、重役だ
いろんな情報を引き出すことも、可能だろう

「…また呼べよ、アイツ」

さて、問題はカズをどう懐柔するか…と考えていると、まるで俺の思考を読んだようにカズがポツリとそう口にした
あまりのタイミングに驚いてカズを見れば、カズはどこか照れたような表情のままでチラチラと俺を見ていた

「いや、だが…」

「いいよ、アンタは俺のパートナーだ。パートナーの友人をもてなくすくらい、いつでもやるさ。それに、浮気はしないんだろう?」

チラリ、と俺を見ながら、カズはどこかイタズラっぽく目を細める
どうやら、それが言いたかったらしい

「あぁ、何度でも言おう。俺のパートナーはお前だけだ」

「その言葉信じるぜ、相棒」

互いに笑いながら、拳を突き出してこつりと軽くぶつける
どこか楽しげに笑うカズを可愛らしいと思いながら、俺はアダムスカに連絡をつける算段を考えていた
















ナイト様リクエストでした!

色々すみません、土下座します!!
リク内容が
スネークに会いに来たオセロットがカズにやきもちやく(ネイ×オセ)、オセロットが帰った後にカズがやきもちをやく(ネイ×カズ)
だったにもかかわらず、ネイオセ要素が皆無ですみません
それ以前にオセロットが偽物ですみません

実は続きにカズのターンがありましたが、完全に蛇足なのでカットしました

ギャグにするか迷いましたが、真面目にしてみました
…ギャグの方がよかったかしらorz

ナイト様、リクエストありがとうございました!

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