性癖は人それぞれです



「「お疲れ様でした、ボス!」」

1週間ぶりに降り立った我が家とも呼べる場所に、あぁ帰ってきたんだなぁと実感がわいてほっと密かに息を吐いた
敬礼で出迎えてくれた兵士達をざっと見渡して…見慣れた顔がいないことに気が付いた

「…マングース、カズは?」

カズが出迎えに出ないことは想像できていたが、一応側に居たマングースに尋ねてみると

「あ、副指令はいまお部屋に…書類が片付かないそうで…」

そう、申し訳なさそうに目尻を下げた
どうやら、今回は書類を言い訳に部屋に篭って俺を待っているらしい
副司令室ではなく、自分の部屋で待っているのがその証拠だ

「わかった、俺から報告に行こう」

「はい。ボス…その、出来るだけ早く副指令の所に行ってあげてくださいね」

カズの腹心であるマングースも、それはわかっているらしい
困ったように垂れた眉をさらに垂らして、苦笑して見せる
その笑みに苦笑を返し、軽く手を振ってからカズの私室を目指して歩き出す

「ボス、お疲れ様です!報告の前にシャワーなど浴びてはいかがですか?」

「ボス、今ちょうど風呂が沸いたところですよ!まずはさっぱりしてきたらどうですか?」

その間、すれ違う兵士のほとんどが、いたわりの言葉と共にさりげなく体を洗ってこいと諭してくる

「…ボス、その体で私の半径10m以内に近づかないでもらおうか。臭いが移る」

ストレンジラブ博士にいたっては、物凄くはっきり臭いと言ってあからさまに眉をしかめてきた
自分の体臭というものはわかりにくいが、ミッションで1週間風呂はおろか水浴びすらしておらず、さらにはその場所が高温多湿のジャングルのど真ん中だったことを考えれば、かなり臭っていてもしょうがない
正直、俺としても面倒な報告は後回しにして、先にシャワーでも浴びてさっぱりしたいところだが…それをすると怒る奇特な人間がこのマザーベースにいる

「…カズ、入っても大丈夫か?」

その奇特な人間の部屋…愛しい恋人でもあるカズの部屋をノックすると

「スネーク!今開ける!!」

ものっすごく嬉しそうなカズの声と共に、椅子が倒れるような音とバタバタという足音が扉越しにもはっきりと聞こえてくる
その音に、次に来るべき衝撃に備えてぐっとかかとに力を入れて腕を広げておく

「お帰りスネーク!!」

次の瞬間、バタン!と扉が吹っ飛びそうな勢いで開き、もはやタックルと言っていい勢いで満面の笑みのカズが突っ込んでくる
激突クラスの抱擁に息がつまり、倒れそうになる体を全力で支える
俺よりは小柄だとはいえ、それなりに身長体重のある男が全力で突っ込んでくれば、かなりの威力だ
が、カズはそんな俺のささやかな努力もダメージも無視して俺の胸元に顔を埋めると

「うぁぁぁ〜、これだよこれ!たまらんっ」

感極まった声でそう呟きながら、ふんふんと犬のように匂いを嗅ぎ始めた

「…カズ、中に入りたいんだが」

もはや恒例行事にも等しいカズの行動に、小さくため息を吐いてそう諭すと
カズは俺の首に腕を回して顎を置き…ぐっと勢いをつけて軽くジャンプすると腰に足を絡めてしがみ付いてきた
その間も、くんくんと匂いを嗅ぎ続けている
いつものことだが、離れるという選択肢は今カズの頭の中には存在していないらしい
何度も言うが、いくら俺より小柄で軽いとは言え、それなりにいい体格をした男がしがみ付いてくるのはしんどい
倒れないようどうにかバランスを取ってから、カズを抱えたまま俺は部屋の中へと入り鍵を閉めた

カズは、少し変わった性癖を持っている
いわゆる匂いフェチ…もっと言えば、体臭フェチだ
出会ったばかりの頃から、匂いにかなりのこだわりを持っている奴だとは思っていた
石鹸やらシャンプーやら、とにかく身にまとう匂いには、俺から見れば過剰とも言えるこだわりを持っている
お前は女か、と最初は思ったが、交渉の場に出ることの多いカズが身だしなみの一環として香りに気を使うのは当然のことだろうと思っていた
だが、俺が長期のミッションから帰ってくるとやたらとカズがそわそわする
やたら側に寄りたがるし、風呂に入る前に報告に来て欲しいと言い出したり、挙句には一緒に風呂に入ると言い出したり
とにかく、長期ミッションから帰ってくると、カズが物凄いデレ期に突入する
ずっと不思議には思っていたが、聞けないまま2年ほど経過し

『…匂い』

『匂い?』

『好きなんだよ、アンタの匂いが』

その理由を知ったのは、恋人になってから…正確には、最初に長期ミッション帰りに遠慮ナシの突進された時だ
本人いわく、1週間くらいミッションに行った俺の体からは抗い難い匂いがするそうだ
ちなみに体臭だけじゃ物足りなく、ミッションから帰った直後のあの匂いがたまらないという変なこだわりまで持っている
俺の匂いの何がそこまでカズを虜にするのかさっぱりわからないが、一度あまりにも汚れていたので体を洗ってから報告に行ったことがあったのだが

『どうして風呂入ってから来るんだよ!?汚れててもいいからそのまま来いよ!俺がどれだけ楽しみにしてたと思ってるんだ!?』

とよくわからない逆ギレをされた挙句、10日ほど事務的な会話以外してもらえなかった
ちなみにそのうち6日間は長期のミッションに放り出されていた
それくらい、ミッション帰りの俺の匂いはカズにとってたまらないものらしい

俺は、カズを愛している
カズの全てを理解し、わかりあいたいと常々思ってはいるが
だがこの性癖だけは、どうにも理解しがたい

まぁ、このカズの妙な性癖はある程度俺にも得があるが

「カズ、座るぞ」

カズを抱えたまま寝室へと足を運び、一応そう言ってからベットへと腰を下ろせば、カズは腕の力を緩めて甘えるように体を擦り寄せながら、俺の首筋に顔を埋めてふんふんと鼻を鳴らしている

「…そんなにイイのか?」

「うん…たまんない…」

頬に手を添え、顔を上げさせれば
カズはとろんと瞳を潤ませ、まさに至福と形容するにふさわしい表情をしている
その表情にたまらずに唇を重ねれば、自分から舌を差し出してきた

そう、この状態になったカズは絶対に俺の誘いを断らない
どんなに忙しかろうが誘いに乗ってくるし、大抵のことでは怒らない
どうせすることをした後は風呂に入るんだし、俺としては自分の体臭はそんなに気にならないから前だろうが後だろうがどっちでも構わない
それなら、カズがより素直で大人しい時にするほうが得策だ
それに俺も、1週間ぶりに帰ってきた我が家とも呼べる場所で、愛しい恋人の熱烈な抱擁を受ければ、当然勃つものは勃つ
手っ取り早くヤれるのなら、それにこしたことはない

「…カズ」

たっぷりと舌を絡めあって唇を離せば、カズはもうたまらないといった表情で俺を見上げている
その表情に、ゾクリと背筋が震えるのを感じながら、俺はカズの服に手をかけた




















全力で土下座します、色々すみません(土下座)

や、匂いフェチなカズいいよね!みたいな話が書きたかっただけなんです
スネークの体くんかくんかするカズが書きたかっただけなんです
もっと色々詰め込みたかったけど、断念しました…マザーベースにいるときはしつこいくらい毎日シャワー浴びろって怒られて、理不尽さを感じるスネークとか(どうでもいい)

エロのターンは気が向いたら書きます

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